capo -1 若人色の夢②
「終わったーーー!!!」
隣で健永が雄叫びをあげた。
課題と格闘してから何時間たったろう。
あれだけ青く輝いてた空は青みが暗くなって肌暖かい風が窓から流れている。
僕は彼より一足先に終わらせたので風に身を委ねながらまた夢に落ちていた。
「何してんだよ!早く先生んとこ提出しに行くぞ!!」
僕はずっと君待ちだったんだぞとツッコミたかったが、腹の中に無理矢理押し込んで呆れた表情を浮かべた。
プリントをかき集め立ち上がり荷物をリュックに放り込んで勢いよく教室の扉をスライドして急いで教室を後にした。
廊下には走るなと書かれていたが、今の僕らには何も見えなかった。
駆け降りた階段でふと我に戻ったように息を整え、2教室分歩いたら職員室の前についた。
扉をノックして開けると鼻腔をコーヒーに匂いがくすぐった。
「失礼しまーす。2年の欠点補充のいつメンでーす。楠木先生に用があってきました。しつれしゃまーす。」
健永のみんなに愛されるキャラは職員室でも健在だった。
僕らは学年ごとに分かれてる先生たちの机の上を覗きながら、自分たちの担任の先生の机がある所まで歩いた。
「お前らもっと早く終わらせることできないのか、、、おかげさまで残業だよ」
先生の嘆きに僕らはニコニコと笑うことしかできなかった。
受け取ったプリントの山を睨みつけると先生は電子タバコを口に咥えながらプリント一枚一枚に目を通した。
ネットなんかに晒されたら炎上確定の行為だが彼は有名大学の教育学部卒業でありながらこの辺鄙な場所でずっと教鞭を取っているため学校に詳しいし生徒からの人気もあるため彼が学校から転勤でもしたら新しい先生が見つけるまで自分らが困るため誰も何も言えないのである。
しかもどの教科も教えることができるためいろんな学年のいろんな教科を教えるという化け物、そしてうちの軽音楽部の顧問でもある。
化け物は、よくがんばったと言うと急いで帰り支度をしたからものすごく申し訳なく思っていたけど、健永は笑いながら俺らも帰ろうぜなんて言うもんだから余計心苦しくなった。
すぐに学校をだようと早歩きで職員室を後にすると
「おーーいお前ら次のライブどうするんだ?ろくに活動してこなかったけど最後の文化祭くらい華々しく散ったらどうだ。」
と背中に声が当たった。
先生は僕たちに期待してくれていたが、まだ迷っていた。
僕たちの兄はこの学校でバンドを結成して奇跡のライブをしたらしい。
この時の顧問も先生が担当していたためそれを僕たちなら再現することができると少し思っている。
兄と肩を並べるくらい同じ演奏ができると思えないのであまり気乗りしないのもライブを行えない理由の一つでもある。
夏休み明けまでに考えときまーす。と健永が僕を察してか陽気に返事してくれた。
兄のことを極力考えないようにしていたのを健永は知っていたので行こうぜと腕を掴んで走り出し、下駄箱へと駆け出した。
自転車にまたがり昇降口の坂を一気に駆け降りると夕方の匂いが鼻に飛び込んでむず痒かった。
capo-2 ちでんくん @chidenkun
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