capo -1  若人色の夢①

「、、やま」

「、、はーやーまー」

「はーーーやーーまーーーー!!」



うたた寝の中大声を耳に鳴り響かされた僕は椅子から転げ落ち

盛大に左腕をから地面に叩きつけられた。


物凄い痛い。


それでも彼はにんまりとした笑顔で白い歯を覗かせながら

上から僕を眺めていた。


夏休みでも学校は開いており、前期後期の二期制である僕の学校では前期で欠点をとってしまった人に夏休みなどはなく、強制で教室で課題プリントを配られる。


その量は例年過酷であり欠点補充を受けた人たちは二度と欠点など取らないと言い放ち、残りの高校生活のテストは全教科8割を超えるらしい。


そのため欠点補充者は僕と彼、鈴木健永(憎たらしい笑顔のこいつ)以外におらず、教室には僕たち二人だけだった。


健永とは小中高と幼なじみであり、お互いの兄同士仲が良かったため昔から家族ぐるみで遠出したりと物心つく前から仲が良く、お互いの兄の影響でバンドを組んでいた。(人数が二人のため活動停止中)


あまり人と話せない僕の唯一の友達と言っても過言ではないだろう。



「早く課題終わらせて兄貴のとこ行こうぜ」



彼の兄は大学を卒業して好きだった音楽を仕事にしようとして音楽バーを

営んでいた。


それが結構音楽好きを中心に繁盛しており、遊びに通ってるうちに僕らはバイトとして雇われた。



「お前こそ早く課題終わらせろよ」



立ち上がりながらのぞいた彼の机には自分よりも山積みとなった課題が生き生きとしていた。



「こんなもの我輩にかかれば秒で終わる。それより葉山、昨日は良い練習場見つけたか??」



その言葉で昨日の出来事が脳裏にフラッシュバックされた。


ちょうど昨日の出来事を相談できる相手を探していたのだが、一番信用している兄はもういないし、こいつに話すべきかものすごく悩んだが、こいつより仲の良い友達はいないため渋々と昨日起こった出来事を細かく説明した。


特殊性癖を持っていること、急に作曲をして欲しいと頼まれたこと、そして名前を聞き忘れたこと。


少し昨日のことを恥ずかしがりながら健永に伝えた。


十秒くらい口を閉じながら「んーーー」という言葉を発すると、



「え、じゃあ今からその河川敷いくか。」



彼はすんなりと口を開いた。



「だって、名前も知らない奴に曲なんか書けねえだろ。

 もしかしたら今日もいるかもしれないし会って名前聞いて

 なんのために作らなきゃいけねえのか聞いた方いいだろ。

 もしかしたら、ただの変態かもしんねえしな」



彼から思いがけない答えが返ってきて唖然としたがその通りだ、、

僕は久しぶりに女性に話しかけられたことに頭がエンストを起こし

全く気づかなかった、、。


少し悩むそぶりをして間を開けて行くと返事をした。


自分の中では即決だった。


「そうとなりゃ、やることは一つだな。」


僕たちは急いで机に体を向き直し、机の上の課題に取り組んだ。


心の中が彼女の事でいっぱいで集中できないが少し空いていた窓から涼しい風が僕の頬を撫でた。
















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