物語を作ろう! 三

渋谷かな

第1話 三

「誰だ!?」

 望は現れた男に問う。男は希と望と同様に忍び装束を身に着けていた。

「俺は魔人界。崇拝するジンカン様にお仕えする人魔将の一人だ。」

 現れたのは悪のジンカンの配下の者だった。

「魔人界!? 人魔将!?」

「ジンカンの手先め!」

 ジンカンは希と望の親の仇である。

「悪いがジンカン様の人類再生計画を邪魔するおまえたちには、ここで死んでもらう!」

 悪のボス、ジンカンは人類再生を計画していた。

「人類再生計画!? なんだ!? それは!?」

「ここで死ぬ者に教える必要もなかろう! いでよ! 我が魔の精霊の鎧! マジックよ!」

 界は自分の鎧を呼び出す。禍々しい黒い鎧である。そして次々と鎧が界の体に装着していく。

「なんて禍々しい妖気だ!?」

「私たちの他にも侍忍者になれる者がいたなんて!?」

 魔の侍忍者の登場に驚く希と望。

「いくぞ!」

「こい! 受けて立つ!」

 突進して界と希は刀を交える。

「できる!?」

「ほう、俺の刀を受け止めるとは。まるっきり弱いという訳ではないんだな。」

 初めて刀を交えた二人は感じるものがあった。

「だが、いつまで防ぎきれるかな。オラオラオラオラー!」

「クッ!?」

 次々と力強い太刀を浴びせる界。パワー負けしている希は押されている。

「オラー!」

 ピキーン! 

 希は危機を察知して夢の妖精フェアリーの鎧の力を使い高速で後退して界の攻撃をかわす。

「逃げたか。鎧の力を使うとは小賢しい奴だ。」

「こいつ強いぞ!? パワーは人魔とは桁違いだ!?」

 希は界の圧倒的な戦闘力に気圧される。

「いいだろう。おまえの方がスピードには優れていることは認めてやる。だが、次もかわせるかな? ハアアアアアアアアアアアー!」

 気合を入れて界は魔の精霊の鎧の魔法力を高めていく。

「なんだ!? 奴の気が高まっていく!?」

 希と望は界の膨大な魔力に脅威を感じる。

「くらえ! 侍忍者ども! 魔法斬り! マジック・ブレード!」

「ギャアアアアアアー!?」

 強大な魔の刃は希を一瞬で消し去った。

「たわいもない。侍忍者の実力とはこんなものか。ワッハッハー!」

 勝ち誇る界。

「次はおまえの番だ。」

 界は望を密。

「それはどうかな?」

 望は希が消え去ったのに平然としている。

「あなたの攻撃は私には効かないわよ。」

 希だ。消滅させられたはずの希が立っている。

「ば、バカな!? おまえは死んだはず!?」

 想定外の事態に戸惑う界。

「界、あなたは既に私の夢の中にいる。」

「何!? おまえの夢の中だと!?」

「そうよ。あなたの夢の世界を見せてもらうわ。」

 希は界が人魔将になるまでの夢を見る。


 界の夢の中。

「ウワアアアアア!? ウオオオオオオ!?」

 界が藻掻き苦しんでいる。

「嫌だ!? こんな世界は嫌だ!? 公務員やコネ持ちしか笑って生きてねえ!? こんな世界なんか滅びればいいんだ! そうだ! 魔法だ! 魔法が作れたら、こんな腐った世の中を全滅させてやる!」

 普通に生きていた界は今の世の中が一部のお金持ちと権力者が自分たちに都合の良い世界を作っただけにすぎないと知ってしまった。

(一緒に世界を作り直さないか?)

 そこに黒い人間が現れる。

「うわあ!? なんだ!? おまえは!?」

(私はジンカン。人間と魔物の間の存在。人の心を無くしてしまったんだよ。)

「何を意味の分からないことを言ってんだよ!?」

 界はジンカンの世界観についていけない。

(どうだろう? 魔法使いにならないか?)

「ま、魔法使い!? そんなものなれる訳がないだろうが!?」

(私ならおまえを魔を司る者にすることができる。一緒に頑張っている人間が報われる世界を作ろう。)

「頑張っている人間が報われる世界・・・・・・。」

 ジンカンの言葉は界の心の隙間に突き刺さる。

「いいだろう。俺は今の世界では生まれてきたのに後は死ぬだけだ。こんな世界なんか一回滅んだ方がいいんだ。全て消えてなくなった方がいいんだ。頑張った奴が笑って幸せに暮らせる世界を俺は作りたい!」

 界は決心する。世界を再生させると。

(おまえにこれを与えよう。)

 ジンカンは黒い鎧を出現させる。

(これは魔を司る魔の精霊マジックの鎧だ。おまえは人魔将となり、より良い世界を作るために、おまえを魔法使いにしてくれるだろう。)

「俺は魔法使いになって、純粋できれいな人々が笑って暮らせる世界を作ってみせる! そのためには一度世界は滅びなければいけないんだ! 俺の魔法で!」

 魔の精霊の鎧が界に装着していく。

「体から力が満ち溢れてくる!?」

(契約成立だな。界、より良い世界を作るために私に力を貸してくれるな?)

「はい。ジンカン様。何なりとお申し付けください。」

(フッフッフッ。)

 ほくそ笑むジンカンであった。


 再び現実。

「これが界の夢の中!? 何もかもうまくいかない人生を歩んでいたのね!?」

「そこをジンカンに取り込まれたのか!?」

 望は希は界に同情し、ジンカンに陰湿さを感じる。

「はあ!? ここは!? 俺はどこにいたんだ!?」

 界も意識を取り戻すが現状が理解できない。

「あなたの夢は見せてもらったわ。」

「俺の夢だと!?」

「人の心は弱い。心の隙間をジンカンにつけ込まれたのね。」

「違う!? ジンカン様は非力で弱者だった俺に力を与えてくれたのだ! ジンカン様は俺の命の恩人だ! 弱者の救世主なのだ!」

 界はジンカンを恐怖の支配者ではなく、弱い者の味方。ヒーローだと信じている。

「なんにせよ。今、幸せに暮らしている人を皆殺しにして、新しい人々に幸せを与えようって考え方が間違っているのよ。」

「違う! 今の権力者たちが自分たちだけ良ければ、俺の様な弱者が死のうがどうなろうが気にしない! 助けてくれたのはジンカン様だけだ! 今度こそ、俺の極大魔法でおまえたちを亡き者にしてやる!」

 界との話し合いは決裂した。立場が違うので分かりあうのは難しい。

「希には手出しはさせない。」

 望が界の前に立ち塞がる。

「なに!?」

(なんだ!? こいつのとてつもない存在感は!? まさか!? こいつも!?)

 界は望にただならぬ気配を感じた。

「悪夢を司る侍忍者! いでよ! 悪夢の精霊の鎧! ナイトメア!」

 望は黒い自分の鎧を呼び出し装着していく。

 つづく。

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