エピローグ 名もなき花に愛と祈りを 最終回
シーズン2 エピローグ 名もなき花に愛と祈りを 最終回
[1]ー《緑の国》 城 客用の応接室
〈壁に掛かった先王の肖像画の前にたたずんでいるレウォン。〉
ポリー「ここにいたのね、救世主は!」
レウォン「ポリー……。止めてくれよ、救世主だなんて」
ポリー「そうでも言わなければ、あなたは、また自分を責めかねないじゃない?〈レウォンが抱えているレックスの遺骨の箱と剣を見て〉白の国へレックスさんをやっと連れて帰れるのね」
レウォン「ああ。それが済んだら、ポリー……僕は青の国へ旅立つつもりだ」
ポリー「レウォン!」
レウォン「逃げるんじゃない。でも、僕が緑の国や白の国で、この重い十字架を背負ったまま生きていくのは、まだ無理なんだ……」
ポリー「これだけ多くの命を救っても?」
レウォン「救ったから、帳消しになるっていう問題じゃないよ。でも、自分勝手な話だが、前より少しだけ心の痛みは和らいでいる。これからは誰も恨むことなく、また青の国で生きていこうと思っている」
ポリー「〈肖像画を見て〉それで、先王であるお父様ともお別れをしていたの?」
レウォン「やっと、先王の子として、緑の国を守れたと報告が出来た。少しは喜んで下さっただろう」
ポリー「本当にもうここへは戻らないつもり?」
レウォン「〈じっと見るポリーに〉…ああ〈頷く〉」
ポリーとレウォン「〈同時に〉でも!」
ポリー「先にどうぞ……」
レウォン「いや……。あっ、これ。返すのが遅くなってしまったが」
〈魔王に引きちぎられて首飾りから外れたままの八個の石が入った袋を出すレウォン。〉
レウォン「家族の石を集め、首飾りを作り直してくれたポリーの御蔭で、僕は生きてここにいる。君こそ、僕の救世主だ。感謝している」
ポリー「だから?」
レウォン「あ、いや……その……」
〈ポリーは袋を受け取り、中から白い石を二個取り出し、その二つの白い石をそっとくっつけて、石の色が青く変わるのをレウォンに改めて見せる。〉
ポリー「見て。離れていても私達はこうして引かれあう。結局はいつも一緒にいる運命でしょ?〈レウォンを見つめて〉だから私も青の国に連れて行って!」
レウォン「ポリー……」
ポリー「救世主のわりには、何だか優柔不断ね。〈抱きついて〉でも、私は行くって決めたの!」
〈おずおずと、そして、徐々にしっかりとポリーを抱きしめるレウォン。〉
ポリー「あなたが白の国へ行っている間、どれだけ不安でたまらなかったか分かる?もう、どこへも一人で行かせないから!」
レウォン「有難う……」
〈抱き合う二人。見つめ合い、そっと、ポリーに口づけするレウォン。そこへ従者が来る。〉
従者「うっほ、ほん〈咳払いをする〉」
〈慌てて離れる二人。〉
従者「お急ぎください。もう、お城の扉が閉まります」
ポリー「急がなくっちゃ!」
〈二人は笑って手を取り合い部屋を出ていく。〉
[2]ー緑の国 城
〈城の門の扉が閉められ、鍵がかけられる様子。〉
[3]ー緑の国から白の国へ向かう道
〈エトランディ王一行の集団が進んでいく。馬車に乗っているのは王、ミレーネ姫、ミリアム王子。馬に乗ったジュリアス。
その次の馬車に、ナタリー、付き添うステラおばさん、アン、隣にヨハンが座っている。反対側の席にはクレア、ノエル、アイラ。まだ衰弱しているアイラはノエルにもたれ、ノエルが支えている。
その後ろには馬に乗っている外事大臣。その妻やアリ、妹ロラも
そして、お祭りのように
民達の歌「闇は光を怖がる、笑え、笑え、笑え。光を浴びて花が咲く、笑え、笑え、笑え!」
民 その1「俺達の国がこんな目にあったのに笑っていていいんだろうか?」
民 その2「聞いただろう?最後に一人で乗り込んで、悪党を退治した若者のこと。彼が言ったそうだ、愉快に明るく笑っていれば、闇は消えると。新しい国の門出には、わしら、民の笑顔が必要だってさ」
民 その3「なるほど。当分は新しい場所で不便だろうが、そう聞いたら、笑って頑張るしかないな。皆、一緒によ」
民 その2「そうだ、同じ苦労なら共に笑って乗り越えよう!笑っていれば、きっと道は
民達の歌「〈声を合わせて〉闇は光を怖がる、笑え、笑え、笑え。光を浴びて花が咲く、笑え、笑え、笑え!」
******白の国
[4]ー《白の国》 石造りの城の前 広場
〈緑の国からの一行を出迎えるため、待っている人達。白の国の王子サイモン。ヨーム公夫妻。近衛副隊長ウォーレスは足を引きずり、椅子に座っているタティアナの隣りへやって来る。弱ってしまってはいるが何とか迎えに出てきているタティアナ。これまでの出来事を思い返すようにそっと目を閉じる。〉
【タティアナの回想:助けられる前の数日間 城の秘密通路の入口(出口)である井戸
〔滑車の綱が切れ、落ちていくタティアナ。少し気を失ったが、気が付けば、桶と結ばれていたスカーフの御蔭で、井戸の底の水に桶と共に浮いていた。秘密通路へは水面からすぐには手が届かないが、井戸の壁に
また、そこで時が過ぎるのをじっと待つタティアナ。まるで神が迎えに来るのを待つかのように。だんだん意識が薄れていく中、ぼおっと霞がかった瞼の先に、ついに現れたのが、秘密の通路を使って、魔王討伐のために城に潜入するレウォンだった。〕 】
〈目を開け、周りの幸せな様子に涙がこぼれるタティアナ。〉
タティアナ(心の声)「もう、あそこで朽ち果てていくものと思っていました……。レウォンさんの御蔭です……」
******緑の国
[5]ー緑の国から白の国へ向かう道 続き
〈民達が歌に合わせ、踊りながら楽しげに歩いて移動している列。歩いているポリーとレウォンの姿。ポリーは皆と一緒に踊っている。レウォンは、レックスの遺骨の箱を左手に持ち、レックスの剣を腰に差して、軽くリズムに合わせながら笑って歩いている。一人の民がレウォンを見つけ指差す。〉
民 その1「いやあ、皆、聞いてくれ。この若い衆がこの国を救った、お人だよ」
民 その2「これは有難い。ご一緒出来るとは!」
民 その3「あなた様の御蔭です」
〈ポリーが横から嬉しそうに、レウォンが腰に差している剣を指差す。〉
ポリー「この剣で、あの大悪党をやっつけたのですからね」
レウォン「ポリー!」
ポリー「いいから、いいから」
民 その1「〈レウォンをじっと見て〉近くで見ると、ほんに笑顔が闇を追っ払う光のような、お人じゃ!」
民 その2「まっこと、そうじゃ!」
民 その3「そら、皆で歌え~」
民達「闇は光を怖がる、笑え、笑え、笑え!光を浴びて花が咲く、笑え、笑え、笑え!」
〈皆が振っている小旗と同じものが馬車にも付いており、窓からその小旗を見るミレーネ姫。緑と白二色の新しい小旗には、両家の紋章に加え、羽ばたく小さな鳥の姿が影絵のように描き添えられている。〉
ミレーネ(心の声)「コットンキャンディー、あなたの勇気の御蔭よ。この国を救った功労者は、紛れもなくあなたとレウォン……。本当に有難う。それから、もう一つ、嬉しい知らせよ。タティアナが生きていたの。もうすぐやっと会えるわ」
〈微笑みながら涙がこぼれそうになるミレーネ姫。その時どこかでピピっと懐かしい声がしたような気がして、思わず馬車の窓から外を見る。姫の目に映るものはただ果てしなく広がる青空。〉
姫(心の声)「いつも、これからもずっと一緒にいてくれるのね。コットンキャンディー……」
〈馬車の後ろでは民達が踊り、小旗を振りながら歩いている。馬車の窓から、その様子と、別れゆく緑の国の自然豊かな風景を見つめるミレーネ姫。〉
ミレーネ(心の声)「私の愛する緑の国へ民達がまた帰って来れますように……」
〈歌い踊り笑っている民達の姿。〉
民達「〈声を合わせて〉闇は光を怖がる、笑え、笑え、笑え!光を浴びて花が咲く、笑え、笑え、笑え!」
〈子ども達も真似をして可愛くおどけて踊り、それを見て皆がまた笑う。白の国への長い行列はどこまでも続いていく。〉
【完】
※作者からの御礼 最終回までお読み下さり本当に有難うございました。近況ノートでも感謝をお伝えしておりますので、お寄り頂ければ幸いです。(2021.7.10)
Special thanks to my family & my friend in Chicago & Les Freres’smusic!
妃家の首飾り 〜真実は眠らない〜 (The pendants of Queen’s family) 森山美央 @MioMoriyama
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます