この作品の特に良い点は三つ。
・キャラクター
・物語の流れ
・話のまとめ方
キャラについては個性的とか共感を持てるとかではなく(それもあります)主人公の心の成長や、その成長を促すサブキャラなど、わざとらしさのない人間性が良かったです。
序盤の荒々しい主人公のまま成長していたら、よくある共感の持てない主人公に感じていたかもしれませんが、レーキ・ヴァーミリオンはそうではなく、何段階かの成長を見せてくれました。
物語の流れに関してですが、主人公の心の成長に繋がる流れが無駄なく描かれていました。強敵が出て倒すといった、ありがちファンタジーではなく、人間ドラマを中心とした物語を突き通しているところが良かったです。
話のまとめ方ですが、これは好みによるかもしれません。
章ごとに積み重ねてきたことをここで回収、清算といったように、風呂敷をたたんでいく最終章は、この物語で一番面白かったです。
一気読みしたことでキャラの印象が強く残っていたためか、目の奥が熱くなるエピソードがありました。物語の途中で出てきたちょっと嫌な性格のシアンと再会した時のやり取りがそれです。使い古さない必要なキャラでした。
最終章直前の幼キャラの登場に、『なろう幼女?!』と警戒しましたが、そんなことはまったくなく、最後は目の奥を熱くしてくれました。
ファンタジーはバトル物が好物のわたしが、人間ドラマメインのこの物語を素晴らしいと思えました。
良いキャラが多かったですが、セクールス先生、アガート先輩、シアン、カァラが特に良かったです。
長くなりましたが、ラストまでぜひ読んでみてください。
テーマはとても重く,序盤は主人公レーキの不幸な境遇に片目を逸らしたくなる展開.これが読み進めていくうちに変わっていきます.
本人が受けてしまった「呪い」に反するように,周囲の人々を愛し,巻き込み,逞しく育っていく姿は,痛快でもあり,時に羨ましくもあり,多様な種族の人々(?)が織りなす楽しい場面もたくさん描写されています.特に,「呪い」について理解してくれる周囲の人々……特に伴侶の方の心遣いは胸を打たれるものがあります.
最終章は「あれ? これで決着つけられるのか?」というくらいの静かな出だし……からの指数関数的にスピードアップする展開で幕を閉じます.これはハッピーエンドなのか? という謎を残して.この謎は,次のように言い換えてもいいと思います.皆さんの目で確かめてください.
「死の王は,死んでいるのか? 生きているのか?」
「鳥人」として生まれた主人公、レーキ。
彼はその黒い羽のため、周囲から忌み嫌われる凄惨な生い立ちを持ち、
そこから救われたのちも「呪い」を背負う運命をも強いられます。
しかしそれに打ち勝たんと「天法士」となるべく学び、大切な友と師を得て、
次第に力強く成長していきます。
……そして今レーキはまた試練の旅の途中にいます。
果たして彼の生の旅路の末はどこにあるのか。
たいへんしっかりと設計された唯一無二の世界観に、
基づいて作られたストーリーがまず大きな魅力を有していますし、
また、真面目で誠実な主人公レーキに好感を寄せながら、
彼の生きる世界の謎を解き明すように読み進めていくのが楽しい。
とにかく、浮ついたところのない、骨太かつ上質のファンタジーです。
喜びも苦しみも乗越えて、レーキはいったいどこへ導かれるのか。
……ものがたりの先はまだ長そうですが、レーキの目になって、
ともにその行く末を見届けてみたいです。
主人公レーキの物語が、幼少時から丹念に綴られています。
幼少期が悲惨なため最初は取っつきにくいですが、だんだん引き込まれていきます。
現在、物語の大半を占める天法院での修業時代は、学生生活が活き活きと描かれ、とうにその時代を通り過ぎた私の目にもきらきらと眩しく映りました。個性的な人物もふんだんに登場し、今後の伏線となっていくようで期待が膨らみます。
アカンサス・マーロン師、セクールス先生の二人の師匠が魅力的で、特にマーロン師から旧友コッパーへの手紙は、マーロン師のキャラクターが凝縮されたようで胸を打ちます。
学園ものとして面白いので、そこだけ見れば星三つですが、今後は呪いや魔人との対決を描いたものに変化していくのでしょう。
クライマックスにまだ至っていないことを考慮して、星二つとさせていただきました。