理想と現実とそれを見る僕

クラットス

第1話

学校のチャイムが鳴り響く朝。

補修の時間に遅れないように一人の男子生徒が自分の教室に走り込み乗車するサラリーマンのように飛び込むと急いで自分の席に着いた、

「おいおい、水島またギリギリかよ……もう少し早く起きて急いで来ないといずれ遅刻するぞ」

彼の机にもたれかかりながら話しかけてきたのは山国新だ、

「そんなにもたれかかっていると転ぶぞ山国」

彼はそう返しながら肘をつきながら返していると。

ガラガラと音がすると教室の前の方の扉から補修教科の先生がきた。

「おーお前達座れ、補修を始めるぞ」

その声と共に教室の生徒達は椅子に座った。

「何だ今日も南村は休みか」

先生がそう言うと生徒達は一斉に空いてる席を向いた。

「今日も休んでんのあの娘」

「自分の事が可愛いからってねぇもう何日も休むなんてわがままなんじゃない」

「まぁ、私達はあの娘の事なに考えてるかわからないから居なくていいんだけどね」

と、女生徒達は各々その娘について言っていると、

「静かに静かに居ない奴のことは言いとして補修の授業始めるぞー」

と、先生が言うと、

「起立」

その日の日直が声をかけると皆立つ「礼」をして「着席」を合図に授業が始まり皆教科書を開いた。


「今日も居ないのか南村」

水島は授業が始まると誰も居ない空席をずっと見つめていると、

「おいおいどうした水島、南村の事が好きなのかまぁ美人だったからなぁ」

茶化すように前の席の山国が声を掛けてきた、

「ち、ちげーよ」

手を振る仕草をしながら否定をするも、

「本当か~」

怪しむように山国は水島の顔を覗いていた、

「うっうぅ」

狼狽えていると、

「おい、お前達ちゃんと聞いてるか!」

先生の声に驚いて「「はいっ!」」と二人で声を出した。

「狙いたい男子はいるが学校に来てないから諦めてる奴が多いから狙うなら今だぜ」

山国は最後に言い残し前を向いて真剣に授業に取り組み始めた、

「いや、今だぜと言われても俺知らないんだけど家」

水島は小さく呟くと、黒板に書かれていることをノートに記し始めた。


キーンコーンカーンコーン


終業のチャイムが鳴り響いていた、日は落ち始め学校から帰る生徒にこれから部活に行く生徒が中庭でひしめいていた、

「水島、俺は今から部活あるから、また明日な」

山国は水島にそう言い残すとタッタッタと似合うような勢いで走っていくのを見ると、

「お前も気を付けて部活に励めよ山国」

声で追いかけるように山国に声をかけると、

「おう!」

と、ここまで響く声が聞こえた。

「さて、帰るか」

学生鞄とリュックサックを持ち教室からでた。

水島は下駄箱まで来るとそこには絵が貼ってあった。

「朝、急いでてわからなかったけどこんな絵あったかな」

その絵に描かれていたのは桜並木の中に一人の少女が耳に掛かってる髪を上げながらこちらを振り向いてる絵が描かれていた、

『南村 綾花』

その絵の右下に書いた人物の名前が書かれていた。

「南村が描いた絵なのか……」

その絵をじっとみていたら右上の方に『佳作』と書かれた札が貼ってあった、

「これが佳作なのか……」

水島は何故かそんな言葉がすっと自然に出た。

「あっそこにいるのは水島じゃないか」

後ろからホームルームなので毎度顔を合わせてはよく聞く声が聞こえたので水島は踵を返した、

「何ですか田上先生」

目の前に手を上げながら学校の玄関をくぐってこちに向かって似合ってない笑顔でこちらに近づいてきた。

「何ですかじゃないだろう一応担任なんだから他人行儀になるなよ」

生徒との距離感がどこか微妙にずれてるこの先生だ、

「は、はぁ」

と、あやふやに返すと田上先生は、

「丁度いい、お前の帰り道の途中に南村の家に行ってこのプリントお前を持っていってくれないか」

突然そんなことを言い出す田上先生はお願いと手を合わせていた、

「いや、俺、南村の家知りませんよ!」

と言うと、

「それは大丈夫だ」

返されそれに続けて、

「ここに南村の住所が書かれている」

と、目の前に出すと彼女の住所だけが書かれた細い紙がでてきた、

「いや、ダメでしょ他人の個人」

「まぁまぁ気ににするな、それに俺だと出てくれないんだよ、それにお前よく学校をギリギリに来てるその罰だ」

そう言うと、田上先生はそれを渡すと手を振って担当する部活に行った、

「罰ってあんたそんな理由で生徒の個人情報を……」

唖然するも頼まれたことは断れないたちで書かれた住所に向かうことにした。


「ここか……」

学校から一キロにある住宅街の中にある彼女の家に着いた。

『南村』

表札に書かれた名字を確認しインターホンを鳴らした。

「早く渡して帰ろ……」

と、ぶつぶつ言っているとガチャと音がした、

「あっ、もしもし、同じ学校の水島って言うんだけど南村彩花さんの家でしょうか?」

そう聞くと中からドタドタと音がしドアがガチャと音がし開いた、

「入って」

と、促された水島は

「あっいや」

と、断ろうとすると彼女の透き通る目に睨まれると、

「あっはい」

と、彼女の家に足を踏み入れた。


「こっちよ」

水島は彼女の言われるとおり後ろについていった、

『なに考えてるんだこの娘は、一応年頃の男子高校生を受け入れて』

なんて思っていると、

「ここ──」

と、言われ南村はその扉を開いた、

「これは……」

そこには、沢山の絵が描かれた部屋に招かれていた、

「凄いなこれ全部君が?」

水島はそう聞くと南村は「うん」と笑顔で

応えた。

南村の部屋をじっくりと見ていると思い出したように田上先生から貰ったプリント思い出した、

「そういえば南村に渡すものがあるんだ」

と、プリント渡した、

「あ、ありがと」

プリントを貰った彼女は少し暗くなったように返事をした、

「ん、どうした南村?」

「えっ、あぁ、うん」

あやふやな返事が来た。 水島はついでにあることも聞いてみた、

「南村どうして学校に来ないんだ?」

と、聞いてみると南村はその瞬間顔をうつむき「わからない」と返すとそのままうずくまってしまった、

「ど、どうした南村」

同じ高さに膝を着いた水島、

「ごめんなさい、ごめんなさい、私もう頑張れない」

と、ぶつぶつと呟いた、

「南村、南村!」

声をかけ続けたら、バサッと顔を上げて、

「あっ、ごめん、大丈夫だよ」

と、返した、

「だ、大丈夫ってお前」

水島は彼女の異様な姿を見たら大丈夫ではないと思ったが南村は笑顔でニコニコとしていた、

「大丈夫……」

何か含みのあるような言い方をしたが、水島は部屋にあった時計を見た、

「あっ、南村そろそろ俺帰らなきゃバスの時間が」

と、言うと南村は暗そうに頷いくと二人は部屋を出て家の玄関に来ると、

「元気になったら学校に来いよ」

と、言うと南村は「うん」と声だけで言うと「じゃあね」と手を振った、

「じゃあな」と水島は返しそのままバス停に向けて歩き始めた。


「今日も来てないな南村」

ガツガツと弁当を食いながら話しかける山国だった、

「南村の家なら昨日行ったぞ」

ガタン

山国は持っていた弁当を落とした、

「行ったってお前南村の家に行ったのか!!」

山国は肩を掴みながらボロボロと口に入ったものを飛ばしながら迫ってきた、

「汚いぞ止めろ!」

すると、肩から手を離すと、

「すまん、で、どうだったんだよ?」

食いぎみに聞いてきた、

「あ、あぁ、正直わからなかったな行ったら行ったで家に入れられたし」

「家に入った!?」

また、顔を近づけて来た、

水島は椅子を後ろにずらして避けるものの山国は今度は机に乗り出してきた、

「近い近い、話すから落ち着け」

山国はそれを聞くと落ち着いて机から離れた、

「で、何があったんだ?」

「中に入ったら部屋に入れられてよ沢山の絵が飾ってあったよ」

山国は何かに気づいたように、

「あぁ、南村、絵うまいからな下駄箱のところにあった絵凄かったよなぁ佳作で賞もとってすげぇよなぁ」

「あっ、あぁそうだな……」

水島は山国の言ったことに対して何かが引っ掛かった、

「それで他には何かあったのかよ?」

山国は好奇心に身を任せて聞いてくるも、

「それだけだよ」

と言うところで昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた、

「もうそんな時間か」

山国は急いで弁当を流し込んだ。


その日の放課後、水島は昨日と同じように南村の絵の前で足を止めていた、

『何度見てもいい絵だな』

水島は自分が審査員ならこれに最優秀賞を送るのにとさらに思っていた、

「あら貴方」

水島から来た方向の反対側から女性が声をかけてきた。

水島はその声に反応してそちらの方を見るとモデルのようなプロポーションでこの学校の指定服を来ていた女性がいた、

「町川生徒会長……」

そこに居たのは三年生で生徒会長だった。

「君は確かよく学校にギリギリに来る生徒のたしか海島くんだったかな」

「いえ水島です」

生徒会長はクスっと笑った、

「水島くんだね、ごめんね間違えて」

と、華やかに笑った、

「それで何のようですか生徒会長、まさか僕がいつもギリギリで学校に来ることの説教ですか?」

生徒会長は「いやいや違うよ」と小さく手をふって否定すると、

「今回はこの絵を描いた人についてさ昨日田上先生から南村ちゃんの家に言ったんでしょ」

唐突にそんなことを言い始めた生徒会長に水島は『プライベートをベラベラと喋るのかあの先生気をつけよ』と思っていると、

「田上先生に聞いたわけじゃないわよたまたま貴方と先生の話をここに聞いてたからよ」

手を胸の前に組ながらそう話した、

「あっそうなんですね……それで僕に何か?」

水島は内心を読まれると思い鉄仮面を被るように顔の表情を変えずに聞き返した、

「器用ね貴方、顔の表情筋が固まったわね、ちょっと貴方を試してみるわ」

と、言うと制服のボタンを外し始めようもした、

「ちょっと何してるんですか」

水島はそう突っ込むと生徒会長「ふふ」小悪魔のように笑った。

水島はこの人には勝てないと本能的に察した。

「それで、僕に何のようですか」

本題に入ろうと水島は切り出した、

「そうだな君はこの絵をどう思う水島君」

水島はそう言われて南村の絵をじっと見始ると口を開いた、

「俺はこの絵もう少し上でもいいと思いました」

すると生徒会長は目つきが変わった、

「それはどうして?」

と、聞かれた水島は背筋を伸ばして応え始めた、

「俺の友人は佳作で凄いよなと言ってましたが、それでも俺の中ではもうちょっと上でもいいと思っただけです」

生徒会長はその意見に頷きながら、

「けどこれで佳作」

水島はそう言われて少し暗くなった、

「だけど大事よそう言うことはね」

その言葉に水島は顔を上げた、

「私も色々とやって来たけど長続きするものはなかったは途中まではやって諦めての繰り返しそれでやっと続くものを見つけれたわ」

水島は何が言いたいのかわからず顔を歪めた、

「何が言いたいのって顔をしてるわね、そうね私も絵を描いたりしてたはでそれで褒められたりしたはけどねそれ以外でも褒められたのよ、それで私はなにやったって褒められたの」

水島は目の前にいる女に対してこれは自慢かと思い、

「いいじゃないですか褒められるの」

と、返すと、

「自慢だと思った? 違うのよなにやっても褒められるつまりやったら褒められただけ、できたものを褒めてくれなかったのよ」

水島はどこか何が言いたいのかを少しわかったような気がした、

「やれば褒められる、作ったものを褒められるのはどちらがいいかと言えば作ったものがいいですね」

生徒会長はニコっと笑うと、

「そうよ、そして彼女は今成果として佳作を取って回りから褒められたけど作品を見て回りは褒めてないんじゃないかって私はこの作品を見て感じたは」

水島はそれを聞いていると、

「でも佳作だからって学校に来なくなるなんて事」

生徒会長は水島の口を人差し指で押さえた、

「全力を出して全てが抜けたのよ、休むところが学校には無かったのよ」

人差し指を水島の口から離した、

「じゃあ、どうすればいいんですか?」

水島は生徒会長と話していくうちに彼女をどうしたらいいのかと思い始めていた、

「それは私にはわからないはでも貴方ならわかるんじゃない彼女の部屋に入ったんでしょ?」

昼休みに山国と話していた事を何故か知っている目の前の魔女に戦くも水島は自分に何ができるのかわからないが何故かその場で足が動いた。

「ふふ、あれが青春なのかしらね」

町川生徒会長は南村綾花の絵を見ていた。


「はぁはぁ」

水島は走って南村の家まで来ていた。

彼女の家のインターホンを鳴らすとすぐにガチャと反応した、

「南村綾花さんの同級生の水島」

と、言ったところでドアの鍵が空いた、

「入って」

と、か細い声でそう言うところ水島は、

「いや、ここでいい!」

と言うと、南村は『えっ』とした顔に変化した、

「あ、あのさ俺、南村の絵いいと思うよ学校に飾られてるあの絵さ俺は好きだよ」

そう言うと南村の顔に前回来た時には見せなかった笑顔を見せた、

「そう、少し嬉しい」

彼女はそう言うと頬をほのかに赤く染めた、

「私ね、あの絵が佳作で帰ってきたときねがっかりしたんだ」

昨日とは違い少し落ち着いた雰囲気で話し始めた、

「全力で何日も悩んで描いたんだよね、描き切った時は一番を狙えると確信したんだけどね結局駄目だった」

南村の言うことに相づちを挟みながら水島は聞いていた、

「一番が取れなくて自分の情けなさで自分の部屋に籠ってたけど……水島君がそう言ってくれるならなんだが一番ってなんだろうと思っちゃた」

スッキリした顔で話し終えた。

「そう、そう言ってくれると」

水島は南村のその顔を見ると言って良かったと感じていると、

「なんだか、人と話したらまた、絵が描きたくなっちゃったな」

水島はそれを聞いて、

「よかったらさ次できたの見せてくれよ君の描いた絵のファンになったっていうか」

と、早口で言った。

南村はそれを聞いて笑顔で水島に「うん、よかったら今からでもゆっくり見て欲しいな」と言い水島だけ南村の部屋に入っていった。


「おいおいおい水島なんで南村が居るんだ?」

山国は朝登校して気づいた、

「しかも、お前もいつもより早い登校だしまさか二人で……」

そんなことを言ったら水島は山国を見て「ふっ」と笑った、

「お前なんだその笑い何があったんだよ教えろよ!」

と、言うと水島は突如手を振り始めると山国はその方向を見ると南村と交わしていたのを見て山国はいったい何がと思い頭を悩ませ始めた。


同日、学校のある部屋

「田上先生来ましたね彼女」

「そうですな、町川の言うとおりになったよ」

町川生徒会長と田上先生がいた。

「彼女は絵に対して行き詰まると同時に描く目的を見失っていましたはなので描く理由を作るために彼を選んだですが正解でしたね」

田上先生は笑顔になり自分の生徒がちゃんとクラスに戻ってきて嬉しいようだった、

「それにしてもどうして絵が詰まっていたんでしょうね」

田上がそう言うと、

「世の中褒めて延びる人より、その人の成果物とその人もちゃんと見る人が居て初めて延びるものよ」

町川がそう言うと、

「なるほど、自分だけでやるのにも限界がありますし、環境が整って初めて良いものができるって言うことですね」

田上はそう応えると町川はそれに頷き二人はその部屋の電気を消して出た。


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