あとがき (本項のみ2021年6月4日加筆)

 最後までお読みいただきまして、まことにありがとうございました。


 はじめに無粋な話になりますが、

「星4つ(そして総PV数500未満)でカクヨムコン6の中間選考突破とかウソでしょ?」

 と思われる方もいらっしゃることでしょう。

 これは『応募期間後半に連載開始して、最終日付近に完結』と『朝読小説賞(こちらの選考は選考担当者の判定での審査なので一般読者評価数は影響しない。作品と選考担当者の真っ向勝負)』で通ったようなものとお思いください。

 ……それでも最終選考で落選してるので同じことなんですけどね。


 さて、改めまして、読んでくださったことに感謝します。

 この作品は、2020年1月頃に一度書き上がったものを、カクヨムコン用に書き直したものです。

 イメージとしては2019年の4月から6月くらいを舞台とした作品と思ってください。

 ――書き上がった当時は、いわゆるコロナ禍が始まる前、ダイヤモンド・プリンセス号が横浜港につく前、最初の緊急事態宣言が出るより前ですね。

 まさか「ソーシャルディスタンスの確保」「大声を出すのは飛沫感染の原因になるので禁止」「カラオケ禁止」「マスク装着の徹底」「学校給食は同じ方を向いて黙って食べる」……そんな世界がくるとは思いもしませんでした。


 ――作中のような世界が再び訪れるまで、どれだけかかるだろう、と真剣に思っています。


 もっとも、今は本当に日本にこのような自由な価値観がまかり通る時代が再び来るのだろうか、という不安の中に居ます。


 例えば先日も、「LGBTは種の保存に反する」などというとんでもない発言をした政治家がいました。

 筆者の意見としては「むしろLGBTの存在を受け入れることで繁栄する」と思っています。


 作中では直接書いていませんが、現在日本の法律ではトランスジェンダーの人が法律上の性別と心の性別を一致させるには、性別適合手術というものを受ける必要があります。

 これは身体に備わった性器をごっそりと作り変えるというものですが、あいにく現在の技術では子供を作る能力は失われてしまいます。(ショウが去勢することが約束されたネコのカラフに心を重ねているのはこのためです)

 ですが、それによって法律で認められた結婚も自由にできるようになります。


 そして、作中では触れていませんが、実は、トランスジェンダーの親でも子供をさずかる方法、というのも存在するのです。

 まず、代理出産や精子・卵子の提供といった方法があります。

 他にも、特別養子縁組制度というものがあります。

(どちらも実際に行っている性別適合をなさったの方の夫婦が存在します)


 特別養子縁組制度というのは、

「何らかの事情で生みの親のもとで育つことが出来ない子を、幸福な家庭で育てる」

 という目的のもので、親子関係は最終的に「戸籍上の実子」になります。

 ……簡単にいいますと、「性教育で習う方法」ではなく、よく言う「コウノトリが赤ちゃんをつれてきた」という言い回しを現実でやっている家族だと考えてください。

 (じゃあコウノトリはどこから赤ちゃんをつれてくるか……それは、特別養子縁組制度について、各自お調べください。)


 これは「法律婚をしている夫婦であること」が前提条件になりますし、実際に子供を授かるには子育てのための訓練や講習をたくさん受けなければなりません。

 そして何より、直接血の繋がりがない子供を「戸籍上の実の子として育てる」という他の普通の家とは少し違う家庭環境になります。

 それでも、身体的な都合などで子供を持つことのできない多くの夫婦がこの制度を利用して「自分たちの子供」としての家族を迎え入れています。


 「そういう『コウノトリに子供を連れてきてもらう』家庭を築くかもしれない人達」という目で見たとき、

 私は身体的な都合で子供を作れないシスジェンダーの夫婦と、トランスジェンダーの夫婦は何も違いはないと思っています。(まだ法律では認められていない同性婚も同様です)

 違いがあるとすれば、若いときに人とは違う苦労をしたことくらいであってほしい。(そして、人生というものは全員が全員、それぞれ違う苦労をして生きるものです)


 だからその分だけ、「認めた数だけ種は保存され、繁栄」するのです。


 ――余計な話に行を割いてしまいました。

 この小説のことに戻りましょう。

 本作は広い価値観や個人差の中で、いろんなことに悩み苦しむ人が、せめて身近な人の助けで、

 『ただ素直に生きる』ことができる世界ができたら、という願いの上で書いた小説です。


 千鶴をいじめた子達や、ショウが前の学校でどのように過ごしていたかを直接描写しなかったのは、『苦しかった過去』として『心の中の動かないもの』でいてほしかったからです。

 千鶴の人生の苦労であり、ショウの人生の苦労です。

 きっと、この後も様々な苦労をしていくことでしょう。

 その苦労をこらえながら、それでもただ素直に生きることに、身近な人が肯定できる世界を――

 本作は、そういう願いを込めた作品でした。


 ショウと千鶴の物語については、カクヨムコンの落選をもちまして未定、という形になります。

 応援いただきました星、ハートにつきましては心から感謝しております。

 今後もカクヨム界隈の作品の多様性の一助になれば、と思い、本作を残させていただきます。


 最後にもう一度、ここまで(あとがきだけだったとしても)お読みいただきましたこと、

 本当にありがとうございました。


 追伸:初稿を書き上げるまで生きていてくれたエルマー、ありがとう。

    愛してるよ。

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しーちゃんのスカート たけすみ @takesmithkaku

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