第3話 脱獄

「……脱獄?」


その言葉があまりに意外だったのか、ロザリアは少し目を見開いて俺の顔を見てくる。


「ああ、要するにここを抜けるんだ。ほんとはもっとこの世界のことを知ってから脱獄しようと考えたんだが……あんたが処刑されるとなりゃ、そうも言ってらんねえよ」

「でも……なんで」

「なんで…ねえ。強いて言うなら…目の前で殺されるだろうという女子を助けないで……「俺TUEEEEEE」なんて誇れるわけないだろ?」


俺は、倫理観のあるクズなんだ。

女性をここで助けないほど、俺は冷酷じゃない。

その話を聞いて、ロザリアは目を見開いた後に少し俯いた。


「で?どうする?ロザリアが行きたくないって言うなら話は別だけど……お前は–––––––––」

「……あなたも」

「…はい?」

「あなたも、結局それなんだ!!!!」


彼女は初めて幼い声を張り上げて叫び、俺はすぐにまずいと考える。これだけ大きな声、最悪兵士に聞こえててもおかしくはない。

注意しようと彼女の方を見ると、上げられた顔は見たこともないくらい怒りに満ちていた。


「ちょ、なんだよ!?ロザリア––––––」

「私の前の仲間もそうだ……所詮強さしか見てない!!私を利用できるだけしておいて、私がお荷物になったらすぐに捨てる!!!あの人はこんな呪いがかかった私を「邪魔だ」って言ってすぐに捨てた!!頑張って役に立ってたのに!!!あなたも所詮「俺つえー」なんて強さしか見てないんだ、結局はそれ目当てなんだ!!!」

「落ち着けって!ロザリア」

「なんの騒ぎだ!!!」


兵士達が足音を立てて近づいて来る。

やべえ、このままだとロザリアが…!!


「騒ぎの原因はお前か…!!よほど早く処刑されたいらしいな、いいだろう…なら3時間後、すぐに処刑してやる!!!」


その言葉に、目を見開く。

ロザリアは兵に連れていかれ、しばらくして俺は拳を握りしめた。

もちろんあの兵士たちにもそうだが、怒りの矛先はもっと別の方向へと向いた。


「あんないたいけな少女を、利用した……だって?」


許せない、許せるわけもない。ロザリアがそのことに対して怒りを覚えるのも最もだ。

俺がクズなのは自覚済みだが、俺以上のクズがここにいるなんて思いもしていなかった。怒りを通り越して呆れてくる。


「……3時間後、か」


ポツリと呟く。

時間はあまり残されていないことははっきりとわかる。


「……上等だ。絶対こっから抜けてやる」


もちろん、ロザリアも連れてな。

漏れ出た声は、誰にも聞こえることなく消えた。

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俺が想像してた俺TUEEEEEと違うんだけど!? お布団 @banirarisu

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