第2話 now loading

中学生ともなると、幼少期程にかわいくはない。

小学生の頃までは感じていなかった「他人との差」にすぐに目がいく。

ささいな違いであれば気にもしないが、誰にでもわかる違いは話題の種となる。


よき話題は広まらず、悪しき話題はとどまる。

話題が空気を作り、その空気を吸った者たちが熱を出す。

そうして、熱病者から発せられたうわごとが「うわさ」として力を持つ。


まわりからは「うわさ」されるくらい認めてもらいたいが、

「うわさ」にされ続けるのは嫌だ。


矛盾から生まれるのは、雄弁な実力社会と暗黙の平均化社会。

自分の評価は上げたいが、周りの視線に遠慮を覚える。


そんな自分のない私にとって、主語はいつも「他人」なのだ。

自分の進路だって学費の払い手の親を裏切らないように

自分の趣味だって友達との関わりがなくならないように

自分の理想はいつだって自分ではない誰かの描いた夢だった。

そうして積み上げた「過去」はどこか嘘っぽくて自分のものではないように感じた。


張り付いた「仮面」でしか人と関わりをもたず人生を終える、そう思っていた。

これからもそんな無機質な時間で生きていくしかない、そう思っていた。

「あいつ」はそんな「仮面」にとらわれた私を変えた。

これから話すのは私が歩み始めた人生の物語だ。


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