-196℃ ストロングゼロ 〈ダブルレモン〉

「酒の大沢」

のお兄さんの予定をこの手に掴むため、私(中町たまき)はお店に顔を出している。

この前行けるはずだったお祭りを、お兄さんにドタキャンされた。

急に仕事が入ったのなら仕方ないと、自分に言い聞かせてきた。

でも、無理! 行きたかったんだもん! 折角、おめかしもしたのにさ…

ていうかさ、仕事だから仕方ないって言うお兄さん、将来社畜になりそうだね…

ならないように縄でもつけておいたほうがいいかな~

 溜まりに溜まったフラストレーションを爆発させて、変わりになってくれそうなものを色々調べているとあるお祭りを見つけた。『〇×市民花火大会』というお祭りだ。

 だいぶ季節外れな気もするが、そういえば今年は一度も花火を見れてないしちょうどいい。電車とバスを使えば割とすぐ着くみたいだし、これは行くしかない。

 そうとなったら、まずは外堀を埋めることにしよう!

そう思い立って、天音さんが暇そうな時間を見計らって尋ねた。

予想通り、配達が終わったのか店の奥で休憩している。

「天音さん~ ちょっといいですか?」

 お兄さんは、レジの奥にある包装台のところで角瓶? とかいう茶色のカメの甲羅みたいな瓶を包装して忙しいそうにしているし、二人で話すのには絶好の機会だ。

「おお、たまき来たのか。それで、何か用か?」

 私から、話しかけるのが珍しいせいか、少し戸惑い気味に聞いてくる。

「今度の週末、午後からお兄さんを私に貸してください!」

「うん? まぁ、別に構いやしないけど…どうして私に言うんだ?」

「だって、また仕事入れられてドタキャンしてきそうだから」

私の嫌味たらしい言葉に、彼女は顔を引きつらせる。その顔に、ニコッと微笑んで見せると苦笑いを返してきた。

「悪かったよ、本当に。分かったよ。あの時の、詫びを兼ねて週末は朝からあいつを貸してやるよ」

「ありがとうございます!」

 申し訳ないと思ってくれているなら…もう少しいいようにしてやろう。

なんて、軽いいたずら心が芽生えてくる。

「お詫びのついでに、お兄さんにおこずかい少し多めにあげてくださいね! 私はそのお金で色々食べますから~」

「はぁ……分かったよ」

苦笑してはいるが、とりあえずは了承してもらえたことだし、お祭りで何を食べるか考えておこうかな。たません、りんご飴、人形焼、たこ焼き、焼きそば、う~ん色々楽しみだなぁ。


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下戸な女店主と不登校の酒屋生活 ひでたか @hidetaka1213

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