1 読む前の印象や予想など(表紙やあらすじなどから想像したこと)
運命共同体とは……運命をともにすることを相互に了解し合った複数の個人または団体。(コトバンク調べ)
相対性とは……反対語は絶対的。簡単に言うと”他と比べたさま”という意味らしい。(web調べ)
あらすじから想像するに、相対性が必要だから運命共同体なのではないか?
と想像する。
2 物語は(どのように始まっていくのか?)
時のない世界で、互いに感情をぶつけるところから始まっていく。この物語で読者に提示されているのは”生きている”とは何かということ。その本質について考えさせられる物語である。あなたは一体どんな答えを出すのだろうか?
3 良かったところ。印象に残ったところ。好きなセリフなど。
・”生きる”と”生きている”は似ているようで違う。その事について考えさせられる。
・人が望む不老不死。それは何かを行うからこそ”意味”は見いだせるが、それは”何かができるから”こそであり”時間が進むから”でもあるように思う。
・人は完全に一人になってしまったら、生きているのか自分で確認する方法がないと思う。
・自分の過ちに気づいても、それは取り返しがつかない。
4 作品の感想
テーマがあり、それを表現し、読者に考えさせる。その為にはめでたしめでたしとならないことがある。例えば子供の向けの童話などでは、間にどんな酷いことがあっても最後はハッピーエンドだ。しかし元は、生易しいものではなかったらしい。なぜならそれは子供に見ず知らずの大人の残忍さや怖さを教えるためのものだからだ。時代と共にゆがめられたものが多く、本来の役目を果たしているか謎だ。そして大人に対しても同じような世の中であると思う。
ご都合主義でハッピーエンド。それでは本来伝えたいことも伝わらないのではないか? と思う。だがこの物語はハッピーエンドとは言えない。犯した過ちはなかったことにはならず、その間違いを正すこともできない。ただ死んだように永遠に生き続けるのだ。恐ろしい結末だと感じるが、メッセージ性は強い。
5 物語のその先を想像して
前述したように、生きているとは言えないまま永遠に生き続けるのだろうと思う。”生きている”とは何かについて深く考えさせられる物語であると感じた。
あなたもお手に取られてみてはいかがでしょうか? お奨めです。
強い思想性というよりも、強い提起性という感じのする作品だった。そして面白い。
本作を読んで私は、死とは何か、生とは何かということ、そしてなぜ我々は「生きている」と思い込めるのか、という問いが浮かび上がった。
この提起、特に後者の提起がとても興味深い。生や死について思索するのはありふれたことだと思うが、その思索の前提にある、「なぜ生きていると思い込めるんだろう」と考えることは少ないのではないか。
そして、アプローチとして本作が取り上げているのは「時間」と「他者」だろう。これはある種王道な二つの要素かもしれないが、それもまた良い。
特に前者。生きているから時間を観測できる、感覚できると思い込みがちかもしれないが、では時間がなかったらどうだろう。生の実感があるから時間を知覚できるのか、それとも時間があるから生の実感を得るのか。これは深掘りするのに良いテーマなのかもしれない。
近代以降、あらゆる価値観が相対化し、その一方で生の価値の絶対化がされたと言われているが、それを疑う第一歩としても本作は面白いと思う。
また、このように述べると、どちらかと言えば思考実験の類として本作を読んでしまいそうだが、小説としても出来が良いと思う。
というのも、字数を出来る限りスマートにし、簡潔にされてはいるが、その分一文一文が洗練されており、ストーリーとしても感性に響くものがある。
何度か読んで考えを深めたい一作。