N.V.0020.01.01 - 王宮西翼街区
レオは全速力で走っていた。
目の前を走る彼の双子の妹、ノアを見失わないように。
しかし問題は。
「人、多すぎだろ…!!」
そう。
怪しい衛士が逃げ込み、それを追って彼らが足を踏み入れたここ、王宮西翼側に広がる
辛うじて、ヴィーネシア人では珍しいと言えるノアの黒髪を見失ってはいないものの、彼の目には疾うに先の衛士は見えなくなっていた。それでもノアが走り続けている以上、彼女はまだ見失ってはいないのだろう。それだけを頼みにレオは走って行く。
やがて。
人の流れが多くなるにつれて速度が落ちてきたノアに漸く追いついたレオは訊いた。
「ノア、さっきの衛士は?」
「ずーっと先の方。だんだん見つけにくくなってきた」
「そりゃ
「もうちょっと近づきたいけど……人、多過ぎて、先に進まないよぉ!!」
「そうなんだよなぁ。街って、こんなに人、多かったんだ」
「どうしよぉ…」涙目のノア。
「さっきの奴の気配は目を瞑ってても判る?ノア」
「たぶん…」じっと目を瞑るノア「大丈夫、判る!!」
「それなら―」周りを見渡したレオは、ある路地で目を留めると、
「一旦、あっちの人が少ない方へ回ろう。僕が先回りできないか道を見ながら進むから、ノアはあいつの気配を追いかけることに集中して」
「わかった!!」ノアの目が輝きを取り戻す。
そこまでは良かったのだが。
「……迷った……」
商店街と市場で出来ているこの
ここから回れば人の少ない道を通って先回り出来ると踏んだ路地は、進めば進むほど思っていたのと違う方向へ向かっているようで、レオには元来た道も既に判らなくなっていた。
傍らのノアを見ると、遠くを見るように目を凝らしている。少なくとも、例の衛士の気配は捉えているようだ。
「ノア」
「ん?」
「あいつの気配、どの方向に感じる?」
「んー……と……ね……」目を瞑って集中すると「あっち!!」と元気に指さす。
「あっち……ということは……」近くに貼られていた
「よし、こっちだ!!」
再び、ノアの手を引いて駆け出す。今度は迷い泣く、力強い足踏みだった。
ヴィーナスの女王 ひとえあきら @HitoeAkira
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