N.V.0020.01.01 - 女王執務室
「……左様で御座いますか。お騒がせ致しまして……」
恰幅の良い身体をぜいぜいと喘がせてカリス女官長は詫びた。
「毎朝のこととは言え、
気遣わしげな顔で彼女の対面に座すアフロディナ女王が返すと、
「いえいえいえ!!とんでも御座いません!!
もう精根尽き果てたといった体でへたり込む女官長。
「それにしても今朝はちょっと手間取っているのかしら……いつもなら……」
「そういえば若様は―」
「あら、レオンは一緒ではなかったのですか」
「は、はい。私がこちらに向かったときには王宮の外へ向かっておられましたので……お庭でしょうか?」
「そうでしょうね。あの子なら心配は無いでしょう。ノアールがすばしこいので手を焼いているのかも知れませんね」
くすっ、と少女のようにあどけなく微笑んだ女王は女官長に向き直り、
「じきにレオンが連れ帰るとは思いますが、一応、彼女にも頼んでおきましょう」
「衛士長殿に、ですか?」
「ええ。ヴァージニアなら安心でしょう?」
委細承知、という顔で頷いた女官長が退がろうと立ち上がると、室外を駆け回る足音が聞こえた。
おや?と眉を顰めて彼女が扉をそっと開けると、衛士たちが走り回っている。その一人をとっ捕まえて二言三言話していた女官長は再び室内に戻ると女王の隣に立ち耳元に顔を寄せた。
次第に女王の顔が険しくなり、暫く逡巡した後、女官長に口を開こうとした刹那―
「至急のこととて失礼致します、陛下。御在室でしょうか」
凜とした美声が響いた。女王と女官長は目を見合わせて互いに頷くと、
「お入り下さい、衛士長殿」
女官長が扉に向かって応える。その扉が静かに、しかし手早く開かれ、衛士服を着けた女性が入って来た。抜き身の剣を思わせる引き締まった体格と目の光が印象的だ。
「陛下、申し訳御座いません。至急の件につき報告だけでもと。女官長殿も居られたなら丁度良い」
「ヴァージニア。今ちょうど
「は!? それはまた何か…」
「いえ、その件は後で宜しい。それで、報告とは?」
「は。実は今朝方、宝物庫より何かを盗み出した不届者が居たようで、現在、被害状況と犯人特定を急いでおります」
「宝物庫から…あそこのセキュリティは簡単に破れる物では無いと聞いていますが…」
「はい。かなり以前から周到に計画したうえでの犯行と思われます。あまり考えたくは無いのですが、内通者の可能性も含めて捜索させています」
「そうですね。お願いします」
「……あの、それで」躊躇うように衛士長が口籠もる。
「あ、私の件ですね。いえ、たいしたことでは無いのです。レオンとノアールがまたどこかへ行っているので、見かけたら連れ戻して下さい。あくまでも、今の宝物庫の件を優先で」
「は、はぁ」一瞬、毒気を抜かれたような顔になった衛士長は、表情を引き締めると、
「では、殿下がたの件については直接、私が。捜索は副長が現場で指揮を執っておりますので」
「こんな時に済みませんが、お願いします」
では、と礼をしてヴァージニア衛士長が退室すると、女王と女官長はまた目を見合わせた。
「こんなことが重なるなんて……
「それは
「いえいえ、そんな。ただの年寄りの勘で御座いますよ」
「それにしても確かに、タイミングが良すぎますね…ただの偶然なのか…」
アフロディナ女王は、未だ少女の面影を見せるその
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