この小説は夢を追う主人公の成長を非常に高い完成度で書き上げたものになっている。
登場人物同士の会話などのやり取りも小気味良くて面白く、物語の展開も無理が無くて違和感なんかを覚えることもない。
ただひとこと紹介に書いたような面が残念に感じる。
主人公のVtuberとしての活動をメインに置いたものではなく、CGデザイナーを目指す主人公の行動の一つにVtuberとしての活動があるという構成の為、タイトルなどからVtuberとしての活動を中心にした内容を期待して読むと、期待を裏切られた様に感じてしまう。
勢いのある小説から無作為に選んで読む場合はいい小説に出会えたと言うだけだが、Vtuberでキーワード検索して読み始めた場合には読みたかったものと違うものを読んでいるように感じてしまうかもしれない。
全体的に完成度が高く、見所が多い作品だと思いますが、その中でも特に自分の目を奪ったのは、『主人公が自作した3Dモデル、その素材のDL数』という要素ですね。
これが変動するか、しないかが、物語のオチとして物凄く上手く機能しています。
主人公の本音としては、これの数字が一番増えてほしいわけですよ。にもかかわらず……なかなか変動しないのは、あらすじだけでも良く解ると思います。
それ故に、Vtuberとしてどんどん人気を博していく主人公の状況が理想的なサクセスストーリーに見えつつも……このDL数の存在が、「あ、これ、違うやん……」と、絶妙なタイミングでツッコミとして入ってくれるわけです。
その味わい深さが、クセになりますね。
昨今注目の高いVtuberものと思わせて、それだけでは終わらない今作、最後まで追い続けてみたいです。
クリエイト系に従事してなくて単純に読んでいる人は、たぶん成功に向けてどんどん主人公が成長している姿を好ましく、そして楽しく読めるだろう。
一方、クリエイト系に片脚でも突っ込んでいる人には。
まあ……うん、あまりに上手く行きすぎるところに純粋に凹みが入る可能性が。
実際にいるんだよね、まるで金色の戦馬に乗っているようなモノスゲーやつが。
もちろんその人も狂気の一歩手前まで、あるいは狂気にわが身を焼きながら自分を高めているのだけれども。
それでもなんていうのだろう、将棋で例えればかの藤井プロを目の前にして、能力幸運環境その他もろもろひっくるめて自分と見比べているような気持ちになる。
とても面白い作品で、気が付いたら最新話まで一気読みをしていました。
まず、読んでいて退屈しないような物語の構成が上手いです。ここでこう来るのか!とか、やっぱこうか!といった、意外な展開と想像しやすい展開のバランスが上手いと思います。
テンプレ展開だから想像しやすいのではなく、本文中に程よく散りばめられた多少考えれば分かるレベルの伏線があるからこそ想像しやすいのも評価できます。
こうだよな?こう来るよな?と思わせる誘導がよく出来ていました。
また、違うそうじゃないんだと思わず口に出してしまうようなもどかしい展開が来て、そこで溜まりに溜まったフラストレーションを一気に解放するスッキリする展開が来た時のカタルシスと言ったらもう……
早くこのフラストレーションをどうにかさせてくれ!そう思ってどんどん読み進めてしまいました。
そして極め付けはキャラクターの個性。非常に多くのキャラクターが登場しているにも関わらず、キャラ被りが一切と言っていい程ありません。だからといって平凡なのかと言われればそれも違い、全員キャラがとても濃い。たとえ一瞬だけの登場でも、強く記憶に残る個性的なキャラクターがとても魅力的でした。
そんなキャラクター達が織りなす、コメディ調で時々ダーク。まさに現代ドラマと言うべき作品です。是非読んでいただきたいと思いました。
登場キャラクター、その過去設定、家庭環境、シチュエーションなどがとても凝っていて、見てみて飽きるシーンがひとつも、本当にひとつもなかった。
VTuberという不特定多数、人間関係の書き方の難しさが如実に出ると思う作品なのに、自分のような素人にも理解できるくらい、説明などがあり、とても読みやすく、面白かった。
また、職業故の葛藤や、悩みを実際に経験したかのように…経験してるのかもしれないけど、それを曖昧に表現するのではなく、しっかりと一つ一つ書き上げるのはとんでもなくすごいことだと思うし、この作品からたくさんのことを学べました!
これからもこの作品に期待しています!
突然だが、私はVtuberが大好きだ。
Vtuber。つまり、バーチャルで活動する配信者の事を指す。
様々な衣装や姿、人種の方たちが、日々面白いコンテンツを届けてくれる。そんなVtuberが好きで堪らない。
最近では海外でも活動が増えてきて、登場と共にあっという間に登録者百万人を超える方もいる。
さて、そんなVtuberにおいて、大きな特徴ともいえるのが見た目、つまり『ガワ』と呼ばれるものだ。
少し夢を壊すようだが、Vtuberは中に実際の人が存在する。そこに様々な葛藤や逆に魅力となる点があるのだが、今は割愛させていただく。とにかく、中に本物の人がいて、『ガワ』と呼ばれるグラフィックがある。
本作はそんな『ガワ』に焦点があてられた作品だ。
主人公の琥珀は『ガワ』を作るグラフィッカーである。色々な事情のもと、自分の小遣いの為に自信の傑作であるメイドサキュバスを制作、販売しているのだが......かかった費用に対して、売れていないのが現状だ。
そこで彼が辿り着いたのが、自分がその『ガワ』を使って活動をし、グラフィックの宣伝をするという事だった。
そして始まった、琥珀少年もとい、『ショコラ』の配信活動は、思わぬ方向へと発展していく。
本作はグラフィッカーという少し変わった立ち位置の人物に焦点が当たっている分、少しだけ専門的な部分も登場する。が、それを難しく感じさせないかみ砕き加減と、読みやすいテンポで、小説初心者にもVtuber初心者にも勧めやすい一作である。
さらに言えば、ショコラの配信のなかにはVtuberのファンなら思わず『あるある』といってしまう様な小ネタも多く、幅広く楽しまれる作品だ。
まだVtuberの事をあまり知らないんだけど......。
最近、Vtuber界隈でも小説の話が時々出てきて、読んでみたいけどどれから読めばいいのか......。
そんな人には、是非この作品をおすすめしたい。