第7話 1年目 高校1年生 Uー16

プレミアリーグはその後もスタメン・レギュラーとして試合に出場し続けた。

それまでスタメンだった先輩が怪我から復帰したにもかかわらずだ。

当然のことながら育成年代とはいえ結果を出しているからこそ

信頼して使ってもらえている。

もちろん、自分には『スキルボード』という他の人には特殊能力があるからだけど。


だからこそ、

誰にも負けないくらいの努力はしないといけない。

練習から誰よりも声を出して周りにアピールしている。

僕だけが変わればいいわけではない。

サッカーは11人で行うチームスポーツだ。

みんなから認められる存在になりたい。


最近までストライカーに拘っていたんだけど

せっかく『スキルボード』があるんだから

可能性を自ら狭めるのではなくもっとなんでもできる

プレーヤーにもなれるんじゃないかって思うんだ。

その手本として最近よく見ている動画集がある。


J1川崎フロンティアの家中選手だ。

川崎に移籍する前は大宮でもプレーしていたんだけど。

小学生のときにナックルスタジアムで試合観戦していたときから憧れの選手なんだ。

とにかく体幹が強い、相手選手が体をぶつけてきても当たり負けすることがない。

それと手・腕の使い方がうまくてボールロストすることがほとんどない。

そんな家中選手みたいに前線で体をはってボールをキープして周りの味方の時間を稼いだり、プレーの選択肢を増やすことができるようになると思っている。

そんな丁度いいスキルがないか『スキルボード』で確認したら


【キープ】

相手を背負ってボールをキープする能力が高まる


というのがあったのでゲット。


もうひとりはトッテナムのイングランド代表FWハリー・ケン。

ゴールを量産しつつ、前線からのプレスも積極的に行える現代型FW

ゴールだけではなくポストプレーなどで味方を活かすことにも長けていて

ケンが相手マークを引きつけてくれるおかげで、周りの選手が自由にプレーすることができる。ゴールを奪えなくても優れた献身性でチームに貢献、ファーストディフェンダーとして、守備にしっかりと走れる。そんなスキルはないかと探したら


【ハードワーク】

献身的に前線から効果的にスプリントをする能力が高まる


というのもゲット。


とにかく、なんでもできるようになりたい。

『スキルボード』はそれを叶えてくれる。

だから、このチャンスを逃す手はない。誰かに後ろ指さされるとしても。。。




11月

『Jユースカップ Jリーグユース選手権大会』

J1・J2・J3のクラブと一般財団法人日本クラブユースサッカー連盟地域代表チームが参加して行われるノックアウト方式によるトーナメントである。

すでに、10月から大会は行われている。大宮は順調にコマを進めることができていて、僕は準々決勝からの出場することになった。


今にして思えば、この時の僕は手にしたばかりのスキルで何でも出来ると自分に酔いしれていて、全く周りが見えていなかったんだと思う。準々決勝・準決勝と2戦連続でハットトリックしたことも大いに影響したと思う。


決勝戦の相手は、クラブユースサッカー選手権のときと同じG大阪となった。

あの時はベンチで観戦しているだけだったが今回はスタメンとして試合に出ることができた。


あのときよりステータスはアップしているしスキルも増えた。

やれる、2戦連続のハットトリックで警戒されてマークは厳しくなるけど。

でも、今の僕には怖いものなんてない。


キックオフの笛がなった。



前半からお互いに前線からボールの奪い合いとなった。

僕も前線で積極的にハードワークでプレッシャーをかけ続けボール奪取のチャンスを伺いながら走り続けた。大宮の中盤は3年の大島さんとココとジュンの連携が冴え渡っていて、何度も楔のパスや裏のスペースへいいパスが供給されてきた。

何度目かのチャレンジでようやく前を向いて勝負ができるようになってきた。

相手ディフェンダーは年代別代表に選ばれている選手でトップチームに昇格が決まっている、このレベルの相手にも臆することなく挑めているのもスキルボードを手にしたからこそだ。

左にワザとスペースがあるように誘われているのは承知の上であえてドリブルを仕掛けた。

体をガシッとぶつけてきた、でもこっちだってスキルを手に入れて対策してきたんだ、簡単にはやられない。ハズだったんだけど、あっさりとボールロストしてしまったんだ。今回は僕の負けだ。後半は負けない。


ハーフタイム


「大島先輩、ココ、勝負できるスペースが少ないのはわかっているけど、どんどんチャレンジしてワンちゃん決めるんで、スルーパスをお願いします。」


後半が始まってもいっこうに自分の間合いでボールを収められない時間が続いていた。


「なんで、何がいけないんだ!?」


エリア外ではピッタリと張り付かれてパスを受けられず、裏に抜けてスペースで受けてもエリア内で勝負させてもらえない、勢いをもってゴール前に入って行こうとしても、うまくコンタクトされて走るコースを邪魔されて何もさせてもらえない時間が続いて、焦りからくるのかいつもならできていることができないでいた。


そんな時間帯に相手に先制点を与えてしまい、苦しい展開、2点取らなければ勝てない、焦燥感からかいつもならエリア外からシュートを打ったこともないのに、シュートを打った。当然のように大きくハズレていった。


そんなときベンチから交代を告げられた。

その後更に追加点を許し、万事休す。


試合後、ロッカールームで泣き崩れる先輩たちを見つめていた。


「大島先輩、スイマセンでした。

 自分がシュート決めていれば勝てたはずなのに、

 先輩からのいいパスをいくつも受けていたのに。。。」

「ユーキ、お前のせいじゃない。」


「なあ、ユーキ。

 次、俺が最高のパスを出したら決めてくれるだろ?」

「次ですか?」

「上(トップチーム)で待ってるからな。」


トップチームで、って。俺なんかが!?


監督から

「岩田、今日はいつものおまえじゃなかったな。

 今年1年、お前は誰よりも練習をして結果を出し成長してきた。

 でも、今日のお前は練習したこともないプレーにこだわっているようだった。

 それは、俺がお前に期待したプレーではない。」


スキルボードで今まで出来なかったことができるようになって慢心していた。

まるで見透かされたようで恥ずかしくなった。


「練習は嘘をつかない。

 新しいプレースタイルを目指すなら練習しろ。

 周りが納得し、己自身も納得してもっと自信をもってプレーしろ。」


チームメートから、先輩から、監督からも期待を込めた視線を送られて

目頭がアツくなっていた。


「あ、それからな

 黒河、小野、岩田、お前らに

 U16代表候補合宿参加要請が来ているから

 チーム代表して恥ずかしくないプレーをして

 代表に選ばれてAFC U-16選手権に行ってこい。」


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