第6話 1年目 高校1年生 Uー16

9月

夏休みはサッカー漬けの毎日だった。

3年生のフォワードの選手が怪我をしたため急遽Aチームに合流となった。

どうやらフォワード内での評価が上がっていたらしい。

ただ、実力ではないのと怪我はやはり怖いのでポイントをためて

【頑丈】【鉄人】を取得して怪我発生率を9割防止まで引き上げた。

同じタイミングで小野くんもAチーム入をはたした。はっきり言って自分のこれまでのゴールのうち9割が小野くんのアシストだったのでありがたい。小野くん無しで得点できないというフラグがたっていなければいいのだけど。


今年立てた目標のうち

・試合に出る

・両足のキックの精度、ゴールを決める➝【両利き】スキル発現

・怪我をしない(車にはねられない)➝9割防止までスキルで引き上げ

・クラブユース選手権に出る

・U−16埼玉県リーグにスタメン

はクリアできた、あと実現可能な目標は

・プレミアリーグ、Jユースカップに出る

に目標を定めた、もちろん出るからには得点も取りたいしスタメンとしても出たい。


プレミアリーグ

出場20チームをEAST/WESTで10チームずつに分かれ、それぞれホーム&アウェイ方式の総当たり戦(18試合)を実施する。EAST/WESTそれぞれの優勝チームは、ファイナル出場権を獲得する。 また、EAST/WESTそれぞれの下位2チームは、次年度のプリンスリーグへ自動降格することとなる。


8月が終わった段階で12節を消化していて残りが6試合のみとなっている。このタイミングでAチームに上がれたので出来れば1試合くらいは試合に出場したいところではあるのだけれど、現状大宮は10チーム中8位と苦戦をしいられている。やはりフォワードが点をとれていないためなかなか勝利ができない状況が続いている。降格圏ギリギリなので出場のチャンスは限られているだろうからワンチャンスをどうモノにできるかで今後の出場にも関わってくる。


プレミアリーグ 第13節

対青森田中

この日はベンチスタート、スタメンのフォワードは3年生が努めているが今シーズンはここまでゴールを決められていない。ベンチに控える他のフォワード陣も同様だ。

対戦する青森田中は冬の選手権で近年優勝するなどしている強豪だ。ベンチの後ろには応援に駆けつけた親とともにチーム関係者がいるのだけどいつもは見かけない大人もいたりする、噂では来年は監督が変わるという、その関係か。

試合は前半は相手の攻勢に苦しみワンサイドゲームとなっていたが最後の最後で体をはったプレーで失点することなく折り返した。

ただベンチに戻ってきたスタメン選手の疲労・消耗は激しく、後半は厳しい状況になるんじゃないかと思われた。

実際、後半25分を経過するまでに3失点し試合はほぼ決定的な様相を呈している。

コーチから交代を告げる声がかかった。くしくも小野くんと同時交代となるようだった。


「このままワンサイドゲームで終わりたくないよね。」

「点を取ろうよ2人でさ。」

「セットプレイでも流れの中でもどんどん空いてるスペースがあればチャレンジしよぜ。」


後半35分

コーナーキックのチャンス

いつもならキッカーをつとめている3年の大島さんがすでに交代でベンチに下がっているためキッカーは小野くんだ。チーム内では既にエアバトラーとして認知され始めている。キック前の確認でキャプテンの佐藤さんから、


「岩田、お前で決めるぞ。」

「みんな囮となって、このチャンスモノにするぞ。」

「お前はこのチームナンバーワンのエアバトラーだからな。」


ほとんど会話もしたことがなかったチームの先輩たちからの声がけに心がアツくなるのを感じた。この期待に応えるのは結果だけ、結果だけで十分だ。

サインプレーを確認し、フリーでシュートできるスペースに向けてマーカーとの駆け引きに入る、交差するような動きをしたり、行くぞと見せかけてフェイクを入れたり、キックが行われるまでに攻撃側と守備側の様々な駆け引き、相手側はマンツーで守備をしている、ボールが蹴られたと同時に全員が動き出した、ニアに飛び込む先輩、相手ディフェンダーを引き連れながらキーパーと交差する先輩たちのジャンプをすり抜けた、そして僕は、ファーから猛然とゴール中央付近にダイブした。

小野くんのいつものボールを、いつもと同じように、ゴールに決める。

「いつ・どこで・だれが・どうする」練習の中で繰り返し繰り返し練習し形にしてきたサインプレーが今ハマった結果がゴールとして突き刺さった。


「もう1点、いや3点取って逆転するぞ!」


キャプテンの鼓舞にチームが息を吹き替えした。喜んでいる時間がもったいない。

後半残り時間ハードワークでプレッシャーをかけ続けたが結果はうまく行かず敗戦となった。この結果順位を一つ落とし9位となり降格圏になってしまった。


次の試合は2週間後。

その試合にむけてチームで守備の確認が行われている。アップ中に意外なチームメイトから声をかけられた。黒河くんと小野くんだ。


「短い時間だったけど点取ったな。」

「小野くんのアシストがあったからね。」

「ココ(心)もやっと戻ってきたし、

 これで1年がスタメンに3人になるともっと面白いんだけどな。」

「黒河くんと小野くんはそうかもしれないけど、

 僕はまだまだ全然だよ。」

「くん付はやめようぜ。」

「おれは、ジュン(黒河淳也)で

 小野はココ(小野心)ほんとはシンだけどな。」

「じゃあ、ユーキで。」


「ユーキはさ、ホントいい場所にいてくれるからさ

 セットプレイ時のは頭に、流れの中では足元に出したら

 勝手にアシストが量産されてありがたいよ。」

「ほんというとユーキのことしったのってクラブユース選手権のときなんだよな。

 それまでは本当にいる事自体しらなかったんだけどな。

 次からは2人ともスタメンだと思うぜ。」

「来年もプレミアでやりたいよな。」

「プレミアじゃなきゃ意味ねーよ。」

「ユーキがゴール量産すれば間違いないね。」


2人とも勝手に盛り上がっていた、チームの状況はあまりよくはない。

けど、ジュンがいってくれたようにスタメンのチャンスはある。

残り5試合すべての試合で自分がゴールを決めて自分がチームを勝たせるプレーヤーとなることを強く心に誓った。


プレミアリーグ 第14節

 対鹿島A ◯2−0

  スタメン出場:2得点

プレミアリーグ 第15節

 対浦和R ◯3−2

  スタメン出場:2得点

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