第10話
10話・・とうとう最終回だな。
OPは無しで闘いのシーン
から始まる。
ここまでの闘いで力を
使い果たしたヒロイン達。
目の前には虚ろな目をした
クィーンがヒロイン達を
見下ろしていた。
最後の闘いだ、なんとか
立ち上がるヒロイン達。
そこへ女神が現れ
最後の力をヒロイン達に
託す。
そして・・
「ふぇ?!」
改変の内容を女神に話終わると。
女神は「アホです」みたいな
顔をして遠くを見て、俺を見た。
「ふぇ?!」
「これは俺の願いだぜ?
聞き入れてもらえないのか?」
女神は必死に設定資料をめくる。
クィーンのページなんて
立ち絵が一点あるだけだ。
「ふぇ?」
「いいから!改変行って来い!
あ、その前に・・・」
俺は手を差し出す。
「何かよくわからないけど
冒険もファンタジーもエルフも
居ない・・・強いていうなら
世界を改変できるチート持ち
異世界主人公にしてくれて
ありがとよ。
意外と楽しかったし
色々考える事も出来た。」
「・・原田様・・」
「最終話の改変、頼んだぞ
女神!」
女神は俺の手を取り
俺たちは握手を交わす。
「かしこまりました・・・
原田様渾身の最終回
見事改変して参りますわ!」
微笑む女神
・・そして光が溢れる。
「皆!行くよ!」アカリの言葉に
スノウ・プリンセス達が頷く。
全員で渾身の力を込めた技
「スノウ・プリンセス・ファイナル
アターーック!!!」
光の帯が虹色になってクィーンを
襲う・・・が。
その光はクィーンに届く前に
消えてしまった。
そしてヒロイン達の変身が解ける。
「・・ここまで来たのに」
「こんなの・・悔しいよ・・」
「こうなったらピュエルも頑張る
ぴゅる~!!」
「ピュエル!!」アカリが止めるのも
聞かずにクィーンに突進する
ピュエルだが、クィーンの周りに
張り巡らされた結界によって
大きなダメージを受ける。
「ピ・・ピュエル・・・だって・・・
もっと・・頑張れる・・ぴゅる・・」
起き上がろうとするが、そのまま
倒れてしまうピュエル。
絶望に暮れるヒロイン達を見下ろし
手を上げるクィーン。
「お待ちください!」
そこへ、女神が現れる。
「女神様!」
「いけません女神様!」
マインとラーマが手を伸ばすが
女神は「良いのです」と
優しく声をかけた。
「女神様は我々に力を分け与えて」
「もうその力は殆ど残っていないはず」
「え?!!」
ヒロイン達の前に凛として立つ女神。
「もう、こんな事・・
おやめください・・お姉さま・・・」
「!!」ヒロイン達に衝撃が走る。
Aパート終了。
Bパートは引き続き、女神の告白
シーンから入る。
「クィーン・・それはわたくしの姉なのです。
いつも一緒に居た・・居て下さった
優しいお姉さま・・・どうかわたくしの事を
思いだしてください・・」
「・・何・・を・・」
クィーンが苦しそうに言葉を吐く。
「明るくて優しくて聡明なお姉さまは
人間界で繰り返し起こる災害や争いに
いつも心を痛めておいででした・・
そして何も出来ない私たちの存在を
自分自身の存在を・・・次第に憎むように
なっていったのです。
そうして・・一人きりになり・・
誰とも接しようとしなくなりました。
わたくし達が気づいた時にはもう
お姉さまの姿はどこにもありませんでした。
わたくしは必死でお姉さまの行方を捜し・・
そして・・やっと・・」
女神がヒロイン達の上に手をかざす。
敵に受けた傷が癒えてゆく・・。
ヒロイン達を回復させた女神は
よろめきながらもクィーンの元に
向かう。
「この結界は、わたくしが最後の力で
破戒します・・、あとはお願い・・・
あなたたちの力なら・・」
アカリはこぼれそうになる涙をこらえて
誰より先に立ち上がる。
「皆!変身するよ!!」
アカリの言葉に全員が頷く。
『みんなで、せーの!
スノウ・プリンセス!!!!!』
一人一人が変身し、女神の後に
続く。
女神はその姿を見て、結界に手を触れた。
まばゆい光。
まるで女神を、すべてを拒絶するような
分厚い壁を女神が力のすべてを使って
消し去った。
「「今だ!!
スノウ・プリンセス・ファイナル
イリュージョン!!!!」」
全員の心が一つになって
そのまばゆい虹色の光が
クィーンを包み込む。
「あぁあああ!!!」
クィーンの漆黒の髪が、ドレスが・・
何も映さなかった瞳が・・
元の姿へと戻ってゆく。
硝子が弾けるような音がして
クィーンの黒い想いは弾けて消えた。
「・・・おね・・さま・・」
「女神様!」「女神様!!」
マインとラーマに支えられながら
自分を見つめる瞳に
クィーンはやっとすべてを思い出したのか
「わ、わたくし・・何と言う事を・・
街を破壊し、人々を傷つけ・・大切な
妹さえも・・・」
「・・・おね・・さま・・・手を・・・わたくしの
手を・・取って・・・」
「・・できません!そんな事・・わたくしは・・」
クィーンの瞳から涙が零れる。
女神が手を伸ばす・・・・
クィーンは最初は恐る恐る・・
そしてゆっくりと歩きだし・・
最後には走って女神の元に行くと
その手を取り、その体を抱きしめた。
「ああ・・やっと・・みつけましたわ・・
お姉さま・・」
「・・・っ!ごめんなさい!わたくし・・・」
「いいのです・・泣かないで下さい・・・
ああ・・良かった・・またお姉さまと・・・
こうしてお話出来て良かった・・」
女神とクィーンが淡い光に包まれる・・
いつの間にか
ヒロイン達の変身アイテムが二人を
祝福するように円を描き、
そのアイテムから光が注がれる。
「なんて・・あたたかい・・光なのでしょう・・
戦士たちの気持ちを・・強い意志を感じます。」
女神はクィーンに支えられながらゆっくり
立ち上がる。
「女神様!!」「女神様ぁ!!」
ヒロイン達に一斉に抱き着かれて
「あらあら・・」と困ったように笑う女神・・
そしてクィーンも・・
シーンは変わりヒロイン達が暮らす寮へ・・
客人に対応するシンは驚いて・・そして
ふたりに抱き着いた。
シンの両親は、ブラック・スノウに傷つけられた
後。病院で処置を受け一命を取り留めていたのだ。
その光景を笑顔で見守るライ。
女神とクィーンが天界へ戻る光の中には
マイン・ラーマ・ナルミ・ハヅキも一緒にいた。
「え?!帰っちゃうの?
そんな・・」
「私達は天界戦士だから・・・」
「今まで本当にありがとう」
「別れるのは寂しいけど・・・」
「別れの言葉は言わないでおこう・・」
「アカリちゃん・・」カスミがアカリを促す。
サツキとタツキも涙を拭いて、無理に
笑顔を作る。
それでも、止まらない涙・・
ゆっくりと消えてゆく女神たち・・
「っまたね!!」「元気でね!!」
「また遊ぼうね」「またお話きかせて!」
4人の言葉に頷く姿を最後に光は消えた。
ここでOP曲が流れる
シーンは桜並木の通学路へ。
「また同じクラスだといいね!」「うん!」
『私達も!!』
ヒロイン達の後ろにはライとシンも一緒に
登校している。
そして曲がり角を曲がると・・
「私達も同じクラスがいいな」「ええ」
「これからも」「よろしくね!」
天界へ帰ったはずのヒロイン達が
待っていた。
笑顔で再会を喜ぶヒロイン達。
天界でその様子を見守る
女神とクィーン。
青空に桜が舞うシーンで終了・・。
第十話「特訓は続くよどこまでも?!さいごまで無理無理!無理よりの無理だよ~!!」
改変
第十話「さようなら、とよろしくね! 最後はみんなでせーの!スノウ・プリンセス!」
改変終了だ!
「どうだ?女神」
「どうもこうも・・あのプ女が姉だなんて!!
しかも元に戻った姿がわたくしより美人とは!」
「当たり前じゃないの!」
金ぴか神殿には、いつの間にか内部も描かれて
いて・・花が咲き乱れ、鳥の声もする庭園の
中央にはコテージもあり、紅茶も菓子もあった。
やっと椅子に座れるな・・と思ったけど
一枚絵なので椅子には座れなかった。
庭園で技を競い合う姉妹を見ながら
俺は紅茶を飲もうとしたが・・
一枚絵だったので無理だった。
「何よ急に姉妹とか、実はいい人でしたとか」
今は金髪碧眼のクィーンが少し照れたように
もごもご言っていた。
「シンの両親も実は生きてました、とか。
お約束展開だよな、でも俺
「実は生きてました」設定の方が好きなんだよ。
そこで萎えるっていう意見も多いけどな。」
「ま、いいんじゃないの?あんたがやりたかった
事でしょ?
どう?もう気は済んだ?
こんな事したって」
「何も変わらないかもなぁ・・
でも何か変わるかも」
庭園ではまだ姉妹対決が行われいて・・・
俺はその姿を見ながら目を閉じた。
少し・・眠い・・。
いつもの目覚ましの音。
俺は飛び起きて辺りを伺う。
自分の部屋だ・・・・
「ふっ・・」
別れの言葉もなく、姉妹プロレスを
見ながらの現実帰還か。
女神らしいな。笑うしかない。
しかも俺のスウェットのスボンには
パック酒。
「体に気をつけろよ!
買い物依存アル中腐駄女神!!」
俺は酒をベットに投げ出して
出勤の準備を始めた。
それから暫くは何もない毎日で。
明日は土曜、動画も作らないとな・・
そんな事を考えつつ寝た日に夢を見た。
「あの・・あなたがアニメを改変して下さった・・
方ですか?」
場所は金ぴか神殿の床・・・
俺の前には誰かが座っていて・・
でも顔は見えない。
「そうですわ!この方が、この世界を
救ってくださった方です!」
俺の隣には女神が・・
女神の顔もよく・・見えないな・・・
「あの・・これって・・夢ですよね?」
相手が恐る恐る言ってくるから
「ああ!そうです!夢ですこれ!」
と、自分の意見を肯定する為にも
力強く「これは夢」を強調する。
相手は・・原作者・・・だよな・・。
「はは・・そうですよね・・・
あのアニメ・・、あれから本当に
色々あって、脚本家さんが
監督さんと仲直りしたり、
原画さんとかアニメーターさん
とかも余裕ができて
その事務所が手掛けてる
作品も没になって。
それで僕の作品の改変をして
下さったようなんです。」
現実世界ではそうなってんのか。
「OPも最初はアレンジバージョンの
方が使われる予定だったのに
本編では間に合わなくて。
円盤ではアレンジバージョンに差し替え
られたり、歌も撮り直ししたそうですよ!
歌手の方が、散々叩かれて
猛特訓したらしいです。
脚本も大幅に変わったので声優さんもまた
作品に関わって下さって・・。
放送する大分前に前回のアニメの吹き替えは
終わってたんですが、今まで経験を積んできて
最初よりは随分違和感なくって、僕が偉そうに
言える事じゃないんですけど・・・。
まぁ・・脚本がほとんどオリジナルなのは
変わらないんですけどね・・はは・・・」
そうかそうか・・
台詞に感情がこもっていたのは
聞き間違いじゃなかったんだな・・。
「僕・・小説家デビュー出来てうれしくて・・
すぐにアニメ化も決まって本当に嬉しくて・・
でも結果は散々で・・
クソだの駄作だの言われて・・・
僕自身も最初は何がどうしてこうなったのか
怒りしかなくて・・。
でも、やっぱり僕の作品だから・・
アニメの設定に寄せて行こうって
思っていて・・本当は嫌なんですけど・・。
僕の力でアニメの設定がひっくり返るくらい
面白いものを書こうって思って・・。
次の巻が出版してもらえるかはわからない
んですが・・・・
とにかく今は、もうここまで叩かれたら
逆にもう「やるしかない」って開き直っ
ちゃって。」
強いなぁ・・・
俺が君の立場だったら
失敗は全部アニメのせいにして
もう全て諦めてると思うよ・・・。
「そんな時に円盤の改変のお話頂いて
・・・、プロットを見せて頂いたんですけど
王道パターンですけど・・、熱くて、
僕の好きな内容でした!」
それは良かった!
「なので今は・・アニメはアニメの方に
お任せして、僕は自分の原作
を大事にしようと思い直しました。
馬鹿にされた事への逆恨みに
僕の作品やキャラを使っちゃ駄目だな
って・・
とにかく僕は、僕の作品の次巻を刊行
して頂く事を目標に頑張ります!」
「応援してます!原作も買います!
円盤も」
「本当ですか?!!」
相手が本当に嬉しそうに笑う。
満面な笑顔・・な気がした。
たった1冊・・たった一人でも
認めてもらえるのは嬉しい事
なんだよね。
君のような作家さんでも
そうなんだね。
「本当に嬉しいです!!
ありがとうございます!!
そして
この世界を守って下さって・・
僕の考え方を変えるきっかけを
下さって・・・本当にありがとう
ございました。」
声が遠のいていく・・
隣で笑う女神の姿も・・・
あぁ、これは夢だものな。
目が覚めたら忙しいぞ。
円盤が出る度比較動画作らなきゃ
いけないしな・・
原作も読み込んで、アニメとの
相違点を突っ込んで・・・
「少し・・は変わったみたいね、
良かったじゃない」
遠くでクィーンの声がした。
「私の力思い知ったか!」
女神の声もしたがすぐに悲鳴
に変わった。
技・・かけられたんだろうな・・
あの世界は、もう大丈夫だろう。
そして頑張る原作者君も
本当にささやかだけど応援してるよ。
そして勿論、次のアニメもクソだったら!
思い切り意見させてもらう!
・・・ま、それはないだろうけど。
そして朝。
俺のいつもの時間が始まる。
駅中にある本屋。
原作小説は数ある新作に押され、
角にひっそりと積まれていた。
電子書籍版も買ったけど、やっぱり
紙媒体もね、一応。
円盤の2巻は少しだけ世間を騒がせた。
放送内容とまるで違うので当然と言えば
当然。世間では「円盤が本体」とか
「円盤で本気出す」とか話題になった。
俺の動画も再生数が伸びるかも?
と思ったけどそれ程でも無く・・・
元々あまり視聴率の無いアニメだったので
大した話題にも上がらなかったのも事実だ。
まぁ、そんなもんだろう。
それでも君は物語を書き続けるし
俺は動画を作り続ける。
今期のアニメも香ばしい作品が・・・
「・・だ、様」
「え?」
「・・す・・け・・」
何だ?どこから声が・・
・・・パソコン?
「原田じゃまぁ~!!おだずげぐださい~」
「はぁ?!おま・・めが」
辺りが光に包まれる。
嘘だろ?!マジかよ!
またあの折角の異世界なのに
冒険もファンタジーも無い世界に・・
「嫌だ!離せ!!駄女神!!」
「離しませぬ!絶対に離しませぬぅ!」
どうせ・・どうせ連れていくなら
神アニメにしてくれーーー!!!!
俺が散々「クソ」呼ばわりしたアニメの世界に実際連れて行かれました。 四拾 六 @yosoji
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