エッセイです
山脇正太郎
第1話 ハンバーガーの思い出
幼い頃、ハンバーガーは贅沢品だった。食べたいと、母にねだってもなかなか買ってもらえず、テレビのコマーシャルを見ては羨ましがっていた。
家族でドライブに出かけたとき、マクドナルドを見つけ、私は例のごとく母に頼み込んでみた。しかし、母はいつものとおり、「ダメ」の一点張りであった。私には、妹と弟がいるのだが、彼らも私につられて「食べたい」とねだった。しかし、母は「ダメ」だと頑なに態度を崩さない。私は目頭が熱くなるのを感じた。私の家は決して裕福ではない。私が食べたいと言うと、妹や弟にも買い与えなくてはいけない。だから、兄として我慢をしなくてはいけない。分かっている。分かっているが、早く生まれてきたばかりに、「お兄ちゃんだから、我慢しなさい」と言われる。今日だって、そうだ。もし一人ならハンバーガーを食べさせてもらえるはずだ。涙が出そうになったが、私はぐっと我慢をして、口をつぐんだ。
どこにドライブに行ったのか、覚えていないが帰路のことだ。幼い妹と弟はすやすやと眠っている。私も少しばかりうとうとしていた。すると、母が突然、ハンバーガーを買ってあげるからと言った。今は、妹も弟も寝ている。「内緒にしてね」と母は笑った。
私が買ってもらったのは、ビッグマック。紙パックに入っていて、ずいぶん高級品に見えた。この時ばかりは、苦手なピクルスも、その日ばかりは美味しく感じた。「お兄ちゃん」であるのも、たまにはいいなと思った。
大人になった今、時々マクドナルドに行くと、無性にビッグマックを食べたくなることがある。食べていると、ドライブの思い出が蘇る。今の私にとって、ハンバーガーは決して高級品ではない。だが、特別な食べ物であることには変わりはない。
エッセイです 山脇正太郎 @moso1059
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