第10話 化物


 

「蓮様蓮様…私たちいったいこれからどうすれば……」


 「わからない!!」

「でも今はあいつらをどうにかしないと!」


一緒に逃げていた人達も、1人、また1人と、姿形を変え、俺らに襲いかかってくる。


 「このままじゃしずく達もああなっちゃうんでしょうか」


「大丈夫だよ雫ちゃん……俺達がなんとかするから」

小次郎が雫ちゃんをなだめているが、

 本当は小次郎も怖いはずだ。


「大丈夫よ!今のところ私たちにはなんの影響もないわ!」


 そう、『今のところ』は俺たちにはなんの変化も起きていない。

 だがいつ、あの化け物のようになってもおかしくはない。


「黒乃さんは1人で戦ってるんだ」

 「俺たちもなんとかここを乗り切ろう」

「街まで行けば何かわかるかもしれない!」

「それまでみんな持ち堪えてくれ!」


今俺たちの体にはなんの変化もないが、

尋常じゃない強さの化け物達が俺たちに襲いかかってくる。


「セイヤァアア‼︎」「ドゥーン」「ドガガガガ」


「芽衣ナイス!」


芽衣とジャイアンの連携で化け物の一体が山を転げ落ちていく。


「俺も前に出る」

「芽衣は蓮と雫ちゃんを守りながら戦っててくれ」

「蓮、雫ちゃんを泣かすなよ!!」


「ハァァアア!!」「ズバッッッ」


「小次郎!油断するなよ!」


「わかってる!」


「それにしてもなんで、過去に飛ばされてきたんだ?」


 「しかも、関係のない局員達まで」


雫ちゃんが何かを思い出したのか。

 「この風景、教科書で見たことがありますです」

「確か……モンスターパニック」


それを聞いて俺は、とてつもなく嫌な予感がしていた。


すると突然。


「きゃぁぁあ‼︎ジャイアン‼︎なにするの‼︎」


芽衣が突然叫び出し、ジャイアンが覆い被さってくる。


「芽衣!!!!」


俺はすぐさま足を止め芽衣の元に向かおうとするが。


「行って!!私なら大丈夫だから!!」

「化け物になんて絶対ならないから!!早く……!!」


「泣きそうになってんのわかってんだよ!」

「こんな時に強がんな!!」

俺は、目に涙を浮かべながら必死に芽衣の元へと戻ろうとする。

 しかし、他の化け物達が行くてを阻む。


「くそっ。蓮!!このままじゃ全滅だ!」

「芽衣……待っててくれ絶対見捨てたりなんかしない!」

「俺はお前のことがずっと前から大好きだったからな!!」


 小次郎が芽衣に向かって告白する。


「こんな時に……告白なんてすんじゃないわよ……」

「待ってるから……」


涙を浮かべながら、必死に抵抗する芽衣だが


「も…もうもちそうにないの……蓮!雫ちゃんを連れて行って!」


「クッソ!!後で絶対小次郎の告白の返事聞かせろよ!!」


蓮達の姿が遠くなっていく。


「そ………んなの…YESに……決まってるじゃない……」




    ーーーーーーーーーーーーーーーー



「ハァハァ」


「小次郎……ハァハァ俺ら……ジュルル芽衣を……」

鼻水を垂らしながら涙を堪え、芽衣を置いて行ったことに罪悪感を覚える。


 だが1番悔しいのは小次郎だ。

下唇を噛み締めながら必死に涙を堪えているのが横目でわかる。


「大丈夫だよ…だってあの芽衣だよ?」

「きっとモンスターに姿を変えられても『みてみて〜♪ジャイアンと1つになっちゃった〜』とか言い出しそうだし」


涙を隠しながら、必死に作り笑いをする小次郎をみて


「……それもそうだな」


俺も涙を堪えて、作り笑いを演じてみせる。


「蓮さん……小次郎さん……」

何もできないことが悔しいのか、雫ちゃんも必死に涙を堪える。


「しずくにも…なにかできること…」

 そういうとしずくちゃんは、ピシーと一緒に祈りをし始める。


さっきまで傷だらけだった小次郎の傷がみるみるうちに 

 消えていく。


「ありがとう雫ちゃん……」

しかし、祈りを終えたしずくちゃんにも、変化がおこる。

 ピシーの体が雫ちゃんの体の中に消えていく。


「ハァハァ……うぅうぅ……」


「雫ちゃん!!そんな………‼︎」


雫ちゃんの体がみるみるうちに羽毛な様なものに取り囲まれていく。


 雫ちゃんを抱き抱えていた俺の腕に、痛みが走る。


「イッッ」


咄嗟に雫ちゃんから手を離す。

 腕を見ると刃物の様なもので切られた跡があった。


バスティーもそれに反応して苦痛の表情を浮かべる。


「雫さん!!しっかりしてください!!」

バスティーの問いかけに、反応を示さないどころか

 雫ちゃんは俺らに襲いかかってくる。


「危ないバスティー‼︎」


間一髪のところで躱すが、雫ちゃんの姿はまるで面影がないほどに、化け物の姿をしていた。


「蓮!!雫ちゃんを傷つけたくない!今は逃げるんだ!」


「クソッッ!クソッッ!クソッッ!なんなんだよ!どうすればいんだよ!」


 苛立ちを見せながらも、必死に堪え

街を目指す。


    ーーーーーーーーーーーーーーーー


「蓮……街がみ…え…て…」

 小次郎が言葉を詰まらせる。


「やっぱり……俺たち…本当にあそこに戻ってきちまったんだ」

様々な化け物達に襲われ、ボロボロになりながら目に映ったのは、あの大惨事が起きた15年前。

 通称モンスターパニックの時代だ。


「なんで俺たち…またここに戻ってきたんだ……」

「目的はなんなんだよ……」

「芽衣も、雫ちゃんも……なんで……なんで……。」


すると、後ろからまた、大量の化物が現れる。


「蓮……今は考えてる時間は無さそうだよ……」

「今は街の人たちを助けよう!」


「小次郎はすごいよ…」

「こんな時でも冷静でいられる」

「お前は化け物にならないでくれよ」


 俺は涙を流しながら小次郎に問いかける。


「蓮、お前もだぞ」

「行こう!」


「ああ!」


涙を拭い、街に向かって走り出す。



 街には様々なモンスターがいた。

空を飛び回り、火を吐くモンスター。

 ビルの3階建てと同じぐらい巨大なモンスター。


街には逃げ惑う人々がいた。


「みんな!山の方は危険だ!」

「山とは違う方向に………」

 小次郎が必死に叫ぶが周りの轟音がうるさすぎて

声が通らないでいる。


「バスティー!お前のテレパシーでみんなに避難を誘導できるか?!」


「任せてください!」


「みなさん……山の方角にも沢山のモンスターたちがいます」

「山とは逆の方角に逃げてください…」


頭の中に流れてくる声に反応を示すが、これが逆に功を奏したのか


「な、なんだ今の声は!!」「頭の中でだれかがぁ!」

「うわぁああ!!」「これは罠だ!逆の方角に逃げるぞ!」


全員が全員山の方角へと逃げようとする。


「違う!今のは俺たちの……!」


「こ、こいつら…モンスターと一緒にいるぞ!!」

「ひぃぃいいい!」


この時代の人たちが、モンスターと共存する事を知らないのを忘れていた。


「そんな!待ってくれみんな!頼む!」

小次郎が必死に止めるも、みんな怯えて山の方角へとにげる。


その瞬間ビルの谷間から白と黒の巨大なモンスターが姿を表した。

 そのモンスターは山へと逃げる人々を足で踏み潰した。


 何かの糸が切れたかの様に小次郎がその巨大なモンスターに近づく。


「うぉおああおおあ!!!」

「芽衣‼︎芽衣‼︎やめてくれ‼︎お前が人を殺すところなんて見たくねぇ!!」

あの穏やかな小次郎が、物凄い形相でそのモンスターに話しかける。


 そいつは芽衣じゃない。芽衣じゃないよ。

確かに芽衣のパートナーのジャイアンに似てるけど。

 そんなにでかくないし………。


あまりの衝撃に言葉をなくす。


「蓮様‼︎危ない‼︎」


すると小さな妖精の様なモンスターが俺の首を切り落とそうとしてきた。


寸前で躱す。


「こいつは雫ちゃんじゃない……こいつは芽衣じゃない……」


必死に自分に言い聞かせ、我を忘れそうな自分に喝を入れる。


「バチンッッッッ‼︎」


自分の両方の頬を思い切り平手打ちする。


「小次郎!!!!冷静に………な……」


さっきまであの、白黒の巨大なモンスターにしがみついていた小次郎の姿が見えない。


すると、黒い影が俺の近くに寄ってくる。


 「シャキンッッ‼︎」


その影から人型の武士のようなモンスターが姿を表し、

 俺の心臓目掛けて刀を突き刺してきた。


それを辛うじて躱すが、


「お前もか……なんで……なんでお前まで!!!」

 「バスティー!!」


「は、はい!」


バスティーの力を解放する。


「お前は化け物になんてならないって言ったじゃねぇか!」


俺はそのモンスターに向かって、全力の拳を突き上げる。


 そのモンスターは、衝撃で白黒のモンスターに衝突し、白黒のモンスターは後ろに倒れる。


 しかし、妖精の様なモンスターが祈りをしているのがわかった。


「雫ちゃんとピシーの力を真似してんじゃねぇぞ!!」


怒りで我を忘れていた俺を


バスティーがそっと後ろから抱きしめる。


「蓮様……まだ貴方には私がいます……」

「今は逃げるのが最優先だと…勝手で申し訳ございませんが……少し眠っててください……」


 「バ…ス…ティー………」


俺はバスティーに、眠らされ、その場を後にする………


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〜future monster〜 俺が召喚したモンスターはロリっ子悪魔のサキュバスだった?!『私の力はすごいんです‼︎』 一条一 @ichijooo7

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