第53話コトの終わり
「今回の件はやたらと長かったわね……」
ポッキーを摘みつつ、リカコさんが珍しく愚痴ってる。
「ほぼ1か月潰されたからね」
「結局、東田は何がしたかったのかなぁ?」
コーヒーミルクをひたすら積み上げながら答えるジュニアを見ながら、気になっていた事を聞いてみる。
コトコトコトコト。
……ぽちゃん。
「うわっ。ジュニアっ!」
相当な高さまで頑張ったミルクタワーが崩れて、そのいくつかがカイリの飲むコーラの中に沈んでいった。
「何だろうな?
動きからみたら、上を失脚させて自分を押し上げたかったのかもな」
イチの意見にリカコさんも絡む。
「私達を襲ったのも、死体が出る事で〈おじいさま〉のやっている事を表沙汰にして、失脚を狙ったんだろうし」
「総監が失脚したって、そのまま
のし上がれる自信か、ネタがあったのかね」
ジュニアが散らばったミルクの容器を回収しながら疑問を口にする。
「謎~」
悲しい顔でコーラからミルクの容器を救出するカイリに、ボックスティッシュを差し出してあげた。
あれから8日。
今日はもう7月2日土曜日。
バンの中に残っていたタバコの吸い殻は、廃工場に落ちていたものと照合した結果、工藤の物で間違い無いと巽さんからお墨付きが出た。
でもね。〈おじいさま〉の方に回した物証諸々については、相変わらず音沙汰なし。
どうなったんだろうなぁ。
一応の終結を見たって事で、今日は寮でお昼兼打ち上げ。
いや。しっかし、今回は本当に長かった。
「んーっ。
さてと、テーブル片付けたら午後からは勉強会よ」
大きく伸びをしたリカコさんが、ピザやらお惣菜やらの空皿がごった返してるテーブルを見下ろし、やれやれとばかりに空皿を重ね始める。
「やだぁぁぁ」
「月曜から?」
わかってる。わかってるよ。
「期末テストです」
あたしとリカコさんのやり取りを正面から見ていたイチとジュニアが視線を合わせる。
「明後日の月曜は第一か」
「週明けはリカコ当番?」
ニコニコと質問するジュニアをリカコさんが睨みつける。
「2人共っ! いつか絶っっ対に後悔させるからね!」
第一月曜日。再び(笑)
「あんまりリカコを怒らせるなよ」
こちらもポッキーに手を伸ばして、カイリが忠告するけど……。
そもそもそんな事聞く2人じゃないし。
「こわーい。
じゃ。1年生限定。期末テストのヤマ1教科500円」
ジュニアが手書きのチラシをあたしとイチに配ってくる。
「おや。カラフル。
って5教科でも2,500円もするじゃないのっ!」
「カエ。マジ当たる」
クレーム付けるあたしにイチが静かに
「ぐわっっ。それを言われると……」
「中間は教科担当のクセがまだわからなかったから見送ったけどね。
今回は思ったよりお仕事が長引いたから、チラシとヤマの問題集作成に時間がかかっちゃった。
あとは誰にチラシを配ろうかなぁ」
にこにことチラシを
って言うか、その時間を作り出せたことに乾杯。
「中学の時は300円だったけど、相当荒稼ぎしただろ」
そっか、イチとジュニアは中学一緒だった。
「ええっ。なんで値上がり?」
「中学生のなけなしのお小遣いを
あ。分割払い可だよ。
新しいハンダゴテと基盤が欲しいんだ。
プラスチック爆弾も残り少ないし、テイザーのリールも追加しておかないと。
イエローボールはまだ在庫があったはず」
「なんか充分悪徳商法……。
っていうか資金調達なの?」
「だいぶ趣味に走ってるわね」
呆れたようなリカコさんの声。
何気なく視線を上げると、いつもの顔ぶれに胸が優しい安堵感に包まれる。
うん。やっぱり好きだな。ここ。
【捜査終了】
警視庁の特別な事情1〜JKカエの場合〜 綾乃 蕾夢 @ayano-raimu
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