ハイデッカー卿物語第三幕。スクラップ(帝国)&ビルド(辺境伯領)の巻

すでに前回の二部作を読まれている諸兄には、細かな解説は無意味でしょう。
我々は単なる放浪者に過ぎません。この物語がどこで書かれているか、必死に探し、そしてここに安住の地はあったのだと安堵するのです。
この物語の難しいところは感情移入の拠り所です。
ハイデッカー卿に感情移入すると、この物語世界観との乖離から血も涙もない男になってしまったと嘆く本当の自分を発見できます。
かといって帝国側に感情移入すれば、これは戦記ではなくディザスターパニックです。ハイデッカー卿は単なる敵ではなく災害と同じ立ち位置でしょう。
王国国民として読んでもあるいは同じかもしれません。
辺境伯領の開拓民に感情移入すると、そこに残るのはモヒカンとヒャッハーでしかないかもしれません。
十全に楽しむならば、我々は物語に没入せず、俯瞰者として見下ろす気概を持った方が健全なのではないかと思います。
当初は中世的世界観でしたが、ハイデッカー卿のテコ入れにより、前作から近代戦の雰囲気が強くなり、今作ではむしろ古代のバーバリアンな雰囲気を味わえるのかなと感じています。
今後は悪魔との戦いも気になるところ。
しかとこの物語を見届けましょう。

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