第2話 ヒカリに賭けた


「餞別だと?笑わせないでくれ。お前がいなくなることはmustだ。条件としてあげるものではない。グレートリセット後の救済、その選別から暗号資産は漏れたんだ」

サンジェルマン伯爵の語気が荒くなる。


「理由を教えてくれよ。なぜ漏れたか」

サトシはそう尋ねる。


「主に2つだ。1つ。時価総額が低すぎる。そのため、ボランタリー、価格変動が大きく、投機としての動きが強い。

2つ、ETFが承認されていない。市場の歴史が浅く、信認される段階には至っていない。それに、投資の神様 、ウォーレンも否定していた」


「ではなぜ、米国の米ナスダック上場企業が購入しているんだ?」


「イーロンをもBTC購入へと誘いかけたMicroStrategy社のことか?」


「そうだ。あの会社は、2020年、財務資産を部分的にBTCに変え、すでに計40,824BTCを保有している。この夏に同社が購入したBTCの価格上昇による値上がり分は、過去3年半の本業利益を上回っているんだぞ?」


「それは本業が不調なだけだろう」サンジェルマン伯爵は鼻で笑った。


「事の本質は、発行上限だ」サトシはきっぱりと言い切った。


「発行上限だと?それをいうなら貴金属にだって採掘上限があるじゃないか?」


「鉱石は探せば、鉱脈は見つかる。さらにリサイクルの再生地金を加えれば、まだまだ無限に存在するといえるだろう。

だが貴金属はまだマシだ。俺が忌み嫌っている不換紙幣だ!」


「仕方ないだろう、貴金属の数には現状限りがあるんだから」サンジェルマン伯爵は口を尖らせる。


「仕方ない?その考えが、かつてのマルクのハイパーインフレのように、紙幣が紙屑になるもとを生んだんだろう?一度それが起これば、人々の暮らしは破綻する。だからこそ、永遠に増やし続けることが可能な俯瞰紙幣は廃止していくべきなんだ!」


そのとき、極東の代表は誰にも聞こえないような声でこう呟いた。「ドラえもんの秘密どうぐ、バイバインと同じだ...」



「サトシ、君の考えはわかった。では、君が推すBTCは、一体何が強みなんだ?」


「強みをあげればキリがないが、主に二つ。

価値保存の手段と、決済手段だ。


コロナショックの中で、世界の基軸通貨`$`の価値下落リスクが警戒されている。

ビットコインには、2100万枚という発行上限があるため、価値の保存手段として優れているだろう」


「発行枚数に限度があるとはいえ、有効利用できなければ、ただの電子ゴミだ」


「電子ゴミ?ならどうして、PayPalやVisa、決済の大手企業のBTC参入が続いているんだ?

PayPal は2021年から、2800万以上の加盟店で仮想通貨決済を利用できるサービスを展開する予定だ」


サンジェルマン伯爵は眉をひそめた。

「価値保存と、決済手段はいいとして。

BTCは価格の変動が大きすぎるし、現在が価格が上がりすぎている」


「需要と供給は基本的な原則だろう?価格上昇には問題がない」


「問題がない?それは投資家、いや、投機家目線の傲慢だな。

今のBTCのように、史上最高値を超えてなお上がり続けるときは、危険が高まり続けている」


「危険があるからリターンが大きいんだろう!?

1815年のナポレオン戦争だって...」


「もういい」サンジェルマン伯爵は、ヒートアップするサトシを静止した。

「君の意見は正論かもしれん。しかし、ここでは通用せん」


「ここでは正論より、`カミ`の意思が尊重されるものな。

そのことはわかってるし、俺の主張は聞かなくていい。だが、近いうちに、俺の意志を継ぐものがここへやってくる。


「意志を継ぐもの、だと?」


「ああ。目下修行中だがな。

投資スカウターの評価は、

FX:5

株式投資:10

プログラミング:0

暗号資産:30」


「話にならんな」サンジェルマンは鼻で笑った。


「賭ける価値はあると思うぜ」


「何を賭けるんだ?」


「産業革命以来続く、資本主義社会の命運さ」


「お前、一体、何を企んでいる?」


「それは言えないな。

ただ、一縷の`ヒカリ`に賭けただけさ」


-大地の裂け目からやさしい風が吹く-

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カソカゼ~仮想通貨のせいで人生が傾いて、そのおかげで世界を救う風になった~ 喜多ばぐじ ⇒ 逆境を笑いに変える道楽家 @kitabagugi777

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