そういえば、行く国のことを何も聞いてねぇ

馬車の中で昼御飯を食べ終わると魔王様と勇者様はまた眠ってしまった。

(赤ちゃんは寝て育つから、たくさん寝るのは良いことだ!うん!、、、寝顔が本当に天使!!魔王様は魔王だけど天使!!)


「そういえば、今から行く国ってどんな国なんだろう?」

「あ、そういやぁ、そこんところ聞いてなかったよな。どうなんですか?サージさん」


オレが魔王様と勇者様の寝顔をニコニコと緩んだだらしない顔をしながら眺めていると瑠璃くんがそう言ってきた。

オレと瑠璃くんは急な招待で準備に忙しく、今から行く国のことをよく知らないのだ。

(獣騎族の国だってのは聞いたんだけどな)


「そういえば、説明していなかったな。まず、今から行く国の国王はライオンの特徴を持った獣騎族だ。あの国に居るライオンの獣騎族のほとんどは王族か上級貴族だと思っていい」

「サバンナの王のライオンは人 (?)になっても王様なんだな」

「つまり、ライオンの特徴を持った人には注意した方が良いってことか」

「そうだな。まぁ、王族にはそんな心配は要らんだろうが、お前達はあまり近づかない方が良い」

「え?瑠璃くん?何でライオンの特徴を持った人には注意した方が良いんだ?」


オレだけ意味が分からなく戸惑って瑠璃くんに理由を聞くと直ぐに答えてくれた。


「連夜、これから行く所に集まるのはどんな人達だと思う?種族のことじゃなく地位とかのことだよ?」

「え?、、、王族とか貴族とかの人達?」

「そう、そんな人達に僕や連夜みたいな異世界の、、この世界の常識がまだそれほど無い奴らがちゃんと出来ると思う?」

「ちゃんと?」

「つまり、王族とか貴族の人に挨拶とか出来る?この世界の社交辞令とか出来る?一般人にやる挨拶とかじゃなく、王様とかの地位の人にだよ?」

「あ、、、出来ねぇ!この世界に土下座がないのは瑠璃くんの時に分かったけど、謝る時ってどうすればいいのかも分からねぇ!」

「しっ、、、連夜、魔王と勇者が起きる」

「あ、、、ごめん」


この世界のことを何も知らないことにビックリして大声を出してしまった。

(瑠璃くんが初めて来た時にサージさんに礼のしかたは一回だけ教えてもらったけど、それ以降はなにも教わってねぇ!魔王様と勇者様の世話で忙しくってそんな事に気を回す余裕がなかったのが敗因か?)


「まぁ、王族の方(かた)はこちらの事情も知っているはずだ。それと、今の王は結構寛容だからそう身構えなくても良いが、、、一応、用心だけはしておけ。上級貴族の方(ほう)は腐った奴らが居るからな」

「腐ったって、ええっと、つまり、ヤバい奴らって事ですか?」

「ああ、かなりな」

「連夜はあんまり喋ったりしない方が良いかもね。パーティーとか始まったら僕と勇者の方は部屋で待機だから誰も来ないだろうから大丈夫だろうけど、魔王はメインの客だろうからその世話役の連夜はパーティーに出ないといけないだろうからね。まぁ、サージが側に居るだろうから大丈夫だと思うけど」

「うわっ!そっか、オレ、パーティーに出ないといけないのか!、、、イヤだけど、、、オレが一緒に行かないと魔王様は、、、」

「確実に泣くだろうね」

「ああ、確実にお泣きになられるだろうな」


つまり、オレがパーティーに出ないという選択肢は無いってことがよく分かった。

(うぉぉ!出たくねぇ!イヤだ!けど、オレが出ねぇと魔王様は、、、泣くよな!確実に泣くだろうな!魔王様を泣かせるくらいならオレの事なんて、、、魔王様のためなら火の中水の中だ!!)


「話を戻すが、まずは王族の説明をしよう。今の王族は全てで6人だ」

「え!?少なくないですか?」

「ああ、他国に比べるとかなり少ない」

「まぁ、魔王とかみたいに特別な事情が無い限りは王族の血筋を残す為に数十人は居るだろうからね」

「ああ、普通はそうだ。王族がこうまで少ないのには理由がある」


あまりの王族の少なさに驚いてしまったが、やはり何か理由があるようだ。




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愛しき魔王様はレベル1 あおい夜 @suzakumon

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