ひだりポケット…。

宇佐美真里

ひだりポケット…。

暖冬だなんて言われていたけれど、流石に今年も残り一週間ともなれば、やはり寒くて当然…。そう、今日は二十四日。クリスマスイヴ。夜ともなると、更に寒さも強まって来る。


イルミネーション瞬く中、「流石に寒いね」とカレが言う。

「うん。手…入れさせて」とワタシが言うと、「ちょっと待って…」と繋いでいた手を解き、カレはこそこそとコートの左ポケットからナニかを取り出した。そして、やはりこそこそと逆のポケットに仕舞い直すと、もう一度ワタシの手を取り、空になった左ポケットへと入れてくれた。


隠しても…知ってるよ、ワタシ。それが何か。


でも、頑張り過ぎじゃない?イヴにプロポーズ…だなンて!?

もちろん嬉しいけれど、ドラマみたいで、少し恥ずかしい…。


何年か後に思い出しながら、顔を真っ赤にするのはアナタのはず…きっと。

「その話はやめて!」と言うアナタに、「やめない!」とワタシが言う。


そんな未来を思いながら、ポケットの中でワタシは

カレの手をギュッと握った。

「あったかいね」



-了-

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