荒廃した世界で生きる彼らが求める答えとは

『人間は常に迷っている。
迷っている間は常に何かを求めている。』
これはゲーテの残した言葉の一つである。
なぜこれを挙げたかというと、この小説にはまさにこの言葉がぴったりと当てはまるからだ。
核兵器で荒廃した世界で生きるジョゼフ。人間兵器として彷徨うマリー。病弱な体に苦悩しながら生きる兵士アレン。
彼らはそれぞれ目的を探し物語の中で成長していく。
絶望的な世界の中で彼らは悩み、葛藤し、それでも前に進んでゆく。
当たり前のように整った環境に住まう我々現代人に生きることの残酷さをこの小説はナイフのように突きつけてくる。
生々しいほど生に執着するアレンと死を渇望するジョゼフ。
この小説に出てくる登場人物達は皆人間離れしているようで非常に人間臭い。 
気が付けば彼らに共感し、応援している自分がいるのだ。
またこの話の魅力はシリアスな面だけではない。
合間に見せるギャグシーンは実にはっちゃけていてユーモラスなのだ。
凄まじいネガティヴっぷりを発揮するジョゼフにオタクという驚きの一面を見せるアレン、こんな子だった?と思う言動をするマリー、何よりも1番のギャップを見せるのは……
いや、ここは全てを語らず読者に委ねて驚く感覚を味わってもらおう。
つまるところこの小説はシリアスを軸にしたギャグ小説なのかもしれない。
ロールキャベツ小説とでも名付けようか、ぶっ飛んだギャグが展開するがストーリーの芯にはきちんとしたテーマがある。
重いテーマとギャグを両立させているバランス感覚は流石と言ったところか。
この小説を読み、荒廃した未来の世界に生きる彼らを覗いてみてはどうだろうか。
苦境で助け合い、希望を追う彼らの顛末を見守らずにはいられなくなるだろう。

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