第7話
先生は、亡くなりました。
先生の最後の“作品”は、先生の最後の血が飛び散った“キャンパス”と、奥様への“遺言書”となりました。
あの綺麗なブートニエールは、恐らく奥様が亡くなるまでの働かなくてもいい位の価値のある、奥様へ遺した物だったそうです。
女好きの気が狂った“英雄”は、本妻を愛していた“英雄”となりました。
この国では、埋葬が主流なのですが、あのスーツの男性とリザベラにも伝えていた通り、火葬をする事となりました。
僕も……先生とともに焼かれます。
先生が僕と共に焼かれるのを望んでいたから。
ーーーーーー
先生が棺に入れられました。
すると、皆が僕に近付いてきました。
そして、奥様が僕に話しかけました。
「スゥ。貴方はどうしたい?“先生”と共に焼かれたい?遺言書にはね、“一緒に焼かれたいかは、スゥに決めさせてくれ”と、書いてあるのよ。」
……先生?どういう事?
話せない、動けない“僕”に答えを委ねるの?
僕は……思い出しました。
ーーーーーー
戦争で家族が目の前で殺され、生き残ってしまった僕は……あの日、山の中で這いつくばっていた先生と出逢いました。
そして、僕は、冒険家と出会い、先生を助けました。
僕は、家族が目の前で、殺された事で、“感情”や“感覚”を自分で殺していました。
そして、言葉を知らない“僕”は、先生から語りかけられる事で“言葉”を覚えていました。
……先生?
“僕”……じゃなくて、“私”は……“人間”なのですか?生きているのですか?生きていていいのですか?生きていけるのですか?
ーーーーーーー
そして生還された先生は、冒険家に私を「引き取りたい」と、言いました。
先生と奥様は、子供が授かりませんでした。奥様は新聞記者でご多忙だったのと、スーツの男性と不倫をしていて、スーツの男性の家に泊まっていました。それも全て先生は、知っていました。
奥様が、私に話しかけました。
「スゥ?貴方は本当に人形なの?教えて?お人形さんなら……このままあの人と焼かれてしまうのよ?スゥ……。あの人は、もしかしたら貴方を“娘”だと思って大切にしていたんじゃないかしら、と私は思うの。」
……先生。
でも、このままだと先生はまたひとりになってしまうんですよね?誰よりも私を愛してくれていた先生。
先生……。先生は、もうひとりじゃないです。
先生……。私も、先生の事を愛しています。
ーーーFinーーー
愛しのスゥ あやえる @ayael
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