とにかく先生のキャラクターが強烈で個性的。一度読んでしまえば、心に焼き付いてしまうこと間違いなしです。
「爛れた私生活」そんな表現がピッタリの乱れた日々を過ごす先生と、部屋の片隅からそれを見守り続けるスゥの物語。スゥって一体何者なの? 先生って、いったい何の先生なのさ? この人はなぜここまで壊れちゃったの?
矢継ぎ早に繰り出される謎と、きっちり伏線を回収しきってからの結末は見事でした。
理想の悪役と言えば? そう訊かれたら迷わず「バットマンのジョーカー」と即答する私にとって、壊れて狂気に陥った人間の「原因」が描かれていないのは我慢ならない事なのです。そこには壮絶なドラマと人生の真実があるはずなのに、そこを忌避するとは何事かと。この作品はその真実としっかり向き合って独自の世界観を構築しています。
我々は読者となって他人様の人生を見物させてもらい一喜一憂しているわけですが、そんな理由で振り回される「見られる側」にとってはさぞや辛いことなのでしょう。先生は自分の素顔をスゥだけには見てもらいたかったのかもしれません。
シェイクスピアもまた人生は劇のようなものだと述べています。この企画内では数少ない相思相愛だったことも(勿論ゆがんでいるのですが)好印象でした。
貴方もスゥと同じ観客席に座り、先生の演じる悲喜劇を御覧になってみては?