裁判で係争中の事案なので、国会で議事録に残る弁明をしていただく訳には行きません

@HasumiChouji

裁判で係争中の事案なので、国会で議事録に残る弁明をしていただく訳には行きません

「議長、待って下さい。私には、これ以上の弁明の機会さえ与えられないまま、私への議員辞職勧告決議を大人しく待っていろ、と言われるのですか?」

 ここは、国会の懲罰委員会。

 委員として居並んでいるのは、各政党の党首経験者クラスの大物達だ。

 もちろん、私が世話になった同じ党の大先輩も含まれる。

 総理経験者も何人も居る。

「君、非常識では無いかね? 君は、この委員会のメンバーから除名された筈だ。そして、我々は、君を証人として呼んだ覚えは無い。君は、如何なる資格で、ここで発言しているのかね? 傍聴者であれば、静粛したまえ。六十いくつにもなって、そんな事も判らないのかね?」

 我が党の先輩議員にして総理経験者の1人は、私にそう言った。

「し……しかし……」

「貴方は、ここ数ヶ月、御自分の汚職疑惑について、国会で弁明を行なわれたが……それは矛盾だらけのモノだった。貴方が重大な記憶違いをしているか、貴方がその場凌ぎの嘘を吐き続けたかのどちらかだ。我々は、貴方の一連の弁明を総合的・俯瞰的に検証した結果、後者である可能性が高いと判断した。仮に汚職の件で、貴方が潔白だとしても、国会の場で嘘八百を並べ続けたのなら……辞職勧告相当では無いですかね?」

 有力野党の党首経験者は冷たくそう言った。

「し……しかし……私の弁明に矛盾が有ったとしても……それは……私の記憶違いである可能性が……」

「こう云う喩えを御存知でしょうか?『お釣りをよく間違えるレジ係が居たとする。ある時は多くお釣りを出し、別の時は少なく出していたなら、そのレジ係は単に無能なだけだ。しかし、常にお釣りを少なく出していたなら……ほぼ間違いなく、意図的にやっている』。貴方の弁明の矛盾が、記憶違いに由来するのであれば、ずいぶん、都合のいい記憶違いも有ったものですな」

「ですが……」

「そもそも、これ以上弁明をして、貴方の秘書の刑事裁判に影響を与えない保証は有るのですか?」

「えっ?」

「だから、貴方はかつて、が似たような汚職疑惑をかけられた際に、国会でこう言われましたよね?『刑事裁判に影響を与える虞れが有るのでお答えは差し控える』と。私の記憶違いでしたかね、?」

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