通信販売

弱腰ペンギン

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「はい、はい。そうです、お客様のお品物ですが、えぇ。こちらあと数日かかります」

 通信販売のカスタマーセンター。ここが俺の職場だ。

「はい。お怒りはごもっともです。商品自体は発送されておりますので、はい」

 現在、3か月待ちの商品がいつ届くんだという問い合わせを受けている。

 人気商品を注文したんですよ、しょうがないです。などとはならない。

 在庫有と表示し、注文し、確定しているのだから、普通はもっと早くに手に入るというものだ。

 実際3か月も配送が遅れるというのはあり得ない。事故がない限り。

「お客様、そのような。はい、お気遣いいただきありがとうございます。はい、えぇ。バイトではありますがそれでも3か月はあり得ません。えぇ。本当に申し訳ございません」

 お客様は怒っている。俺にではなく会社に。直接この件の責任者と話したいけど無理なんでしょ? とか、俺にぶつけるしかないのが申し訳ないとか言ってくれている。

「えぇ、そうです。ここ数日の事件に。はい。巻き込まれる形で商品が。はい。安全なルートを選んでおりますし、警備の人間が巡回しているルートなんですが。えぇ」

 ここ数日、というより数年。運送会社の積み荷が奪われる事件が発生している。

 それにより配達の遅延や商品の欠品などが相次ぎ、こういうカスタマーセンターが設置されることになった。人手が足りなさ過ぎてバイトがほとんどだが。

「そうですねー。本当何考えてるんですかねー。宇宙海賊とか」

 どうやったら三次元空間の宇宙で航路を割り出し、輸送船を襲うことが出来るのか。

 そんな技術があるなら別のことに活かせばいいものを。

「えぇ。そうですね。流行りの寒いギャグを言って強奪していくやつとも。えぇ、襲撃にあったりしたようです」

 おかげで物資の運搬にも一苦労だ。

 会計は確定しているから、輸送費だけでなく再度商品を入手するのもお金がかかる。

 保険に入ってるとかうんぬんはあっても、何度も襲撃を受ければ損害は広がるばかりだ。

 だから。

「えぇ。カスタマーセンターで対応することになっておりますので。えぇ。ちゃんと取り返しましたので、これから近くの星の流通センターまで送りますので。そこから先はおおよそ安心ですので。はい。それではまた」

 俺たちが宇宙海賊どもを逆に襲撃して物資を取り返している。

 海賊どもはご丁寧にこちらのルートを把握してくれているので、そこに武装艦を混ぜておく。で、海賊船の貧弱な装備に対して、軍隊仕様の武装艦が襲撃する。という手はずだ。

 といっても、首魁はどっかの惑星に隠れて指示だけとばしているので、いつまでたっても海賊は消えないんだけど。

 こればっかりはまぁ、警察の仕事だ。下っ端は下っ端同士で小競り合いを続けておくのが精いっぱいだ。

「オラァ! つぶせぇ!」

 隣の火器管制室から野太い声が響いてくる。どうやら海賊船を攻撃しているらしい。

 奪われた物資は基本横流しされるので、大抵手付かず。そのため、出来るだけ轟沈させるのは避けなきゃいけないので。

「潰すなと何度も言ってるだろうがバカたれ!」

 鬼の火器管制官、マリア女史(27歳独身)に叱られている声が響いてくる。

 気が強く美人で、ダイナマイトバディの持ち主と来ている。なので野郎どもからの人気は高い。

 ちなみにブロマイドは2000円もした。水着のやつが欲しかったが抽選で外れた。

「あ、こら、バカ、直撃させるな、あぁ!」

 どうやら船に直撃したらしい。物資の回収は出来なさそうかなぁー。

「あぁぁ! 爆発四散する前に回収急げ!」

 火器管制室からマリア女史以下砲撃主たちが飛び出してくる。

「バイト、お前も手伝え!」

「はい!」

 航行不能になった敵艦から物資を回収し、正しい流通ルートに物資を流す。

 これが俺たちカスタマーセンターの仕事。時給1400円。

「脱出するぞ野郎どもぉぉぉ!」

「「へい!」」

 とても刺激的な、宇宙のお仕事だ。


                 

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