1ー4
「ちょっと狭いけどごめんね」
「は、はい!」
ボクたちは今、クローゼットの中に入っていた。
何かに気づいた様子のみゆきお姉さんはパンツをテーブルに置き「こっちに来て」とボクの手を取りクローゼットへ二人で入った。
クローゼットの中はみゆきお姉さんの服がハンガーで掛けられていて人が二人も入るには狭かった。
だから自然とボクたちは密着するような形になり、身長差もあってボクの目の前にはみゆきお姉さんの・・・・・・・その・・・・・・胸が・・・・あった。
「ぐぐぐ・・・・・・・・!」
ボクはみゆきお姉さんの胸に顔を当てないために、精一杯に首をそらせる。
しばらくするとクローゼットのすき間から部屋の中を見ていたみゆきお姉さんが「あ、来た!」と言った。
それにつられてボクもすき間を除くと、そこにはーーーー
「ニャァァァン」
ーーーーみゆきお姉さんの飼い猫のもずくがいた。
「・・・・・・もずくを見ててね」
小声で言ったみゆきお姉さんの言葉にうながされるように、部屋に入ってきたもずくを見続ける。
ボクたちに気づいてないもずくは、ピョン!とテーブルに飛び乗り、ジュースが入っていたコップの匂いを嗅いだりしている。
するともずくがーーーー
「あっ!」
ーーーーテーブルに置かれたパンツを咥えた。
そして、テーブルから降りたもずくは、床に置いてあったみゆきお姉さんの学生カバンのすき間に、パンツを押し込んだ。
「・・・・・・・・・・」
この事件の犯人を見つめて、ボクは唖然とした。
するとみゆきお姉さんが教えてくれた。
「もずくがさ、よくハンカチとかタオルとかをカバンやすき間に押し込むイタズラをしてたのを思い出したんだ。だからもしかしたらと思って」
「でも、いつやったのかな?」
「あれじゃない?昨日さ家に来たときに、途中でショウタくんはトイレに、わたしは紅茶のおかわりを取りに行ったでしょ、たぶんその時だよ」
そう言われて、昨日、
事件の真相が分かったボクたちがクローゼットから出ると、もずくはチラリとこちらを見たあと、ボクの足にすり寄ってきた。
「・・・・・もずく、お前のせいでボクは大変だったんだぞ」
そんな言葉を知ってか知らずか、もずくは小さく「ニャン!」とだけ鳴いた。
「ショウタくんごめんね、もずくが迷惑かけて」
「いえいえ!疑いが晴れてよかったです!」
するとみゆきお姉さんはキョトンとした顔になって「ん?ショウタくんの事、疑ってなんかなかったよ?」と言った。
「ーーーーえ?」
「だって、ショウタくんはパンツを取るようなことをしない男の子だってお姉ちゃんは知ってるもん!」
「・・・・・・・・・・っ!」
みゆきお姉さんからの信頼の言葉に、ボクはとても嬉しくなった。
「あっ、それとーーーー」みゆきお姉さんは続ける。
「ーーーーあのパンツは友達から誕生日に冗談でもらったやつで、あんな・・・・スケスケのやつは履いたりしてないから」
みゆきお姉さんがわざわざそんなことを言ったばかりに、ボクは頭の中で「じゃあ、どんなの履いてるんだろう?」と邪な事を考えてしまった。
「ニャン」
そんな二人のやり取りを足元で見ていたもずくは、ヒラヒラと動くみゆきお姉さんのスカートが気になったのか、かわいい鳴き声と共に飛び上がり、スカートにしがみつく。
すると、もずくの重さに耐えられなかったスカートが、ずり落ちた。
「キャッ!!」
「っ!?」
ボクの目に、全体が黄緑色で猫の肉球がプリントされたパンツが飛び込んできた。
「こ、こら!もずく!!」
みゆきお姉さんはパンツを手で隠しながら、慌ててスカートを上げようとする。
図らずもボクは、昨日の夜に妄想した、パンツ姿のみゆきお姉さんを見てしまった。
「こら、ショウタくん!見ちゃダメ!」
「ご、ごめんなさい!!」
突然の事にぼーっとしてたボクは、みゆきお姉さんの声で我を取り戻し、すぐに背中を向けた。
後ろからは「もずく!スカート離して!」「ニャン!ニャン!」とみゆきお姉さんの声ともずくのじゃれる鳴き声だけが聞こえてきた。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
なにはともあれ、パンツ泥棒の犯人にされなくてよかった。
~~~終わり~~~
ボクのランドセルにお隣おねえさんのパンツが入っているんだけど… あかべこ @kozuyu
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