第3話 もしもし警察ですか今家に変質者が
「ねえ蒼井、サイズ合わないと思うけど、このシャツ着てくれる?」
「え、なんでだよ」
「パンティーいっちょうじゃ、流石にキモくてさ」
「キモい言うな!」
「いいね! そのノリ好きだよ!」
神谷は超ご満悦だった。
めちゃくちゃだ。
まあ、もともとめちゃくちゃなのは俺だが……。
「あはははははは! ウケる! なにそのピチピチ!」
神谷はベッドに座り足をバタバタさせて笑っていた。
「つーか、お前が着ろっていったんじゃん!」
「そうだったね、ごめんごめん」
目尻に涙が溜まっている。
涙が出るほど、笑いやがったのか……まあいいけど。
「なあ、そろそろ話の続きしてくれねーか」
「どこまで話したっけ?」
「もう最初からでいいよ」
「そうだね、キリが悪くなっちゃったもんね」
ガチャッ……ちょうどそのタイミングで玄関の鍵が開く音が……、
まさかのまさか、こんな格好をしているってのに、
「ただいま〜」
神谷のお姉さんが帰宅した。
この格好でお姉さんとご対面って、普通にやばいよね?
「なあ……神谷これ」
「ああ……やばいね、きっと通報されちゃうね」
ノォォォォォォォォォォォォォッ!
なんてこった!
こんなの完全に想定外なんですけど!
「あれ? 由梨ちゃん……この靴、彼氏でも来てるの? 紹介してよ」
そして……、
「あ……はじめまして神谷のお姉さん。俺は神谷の同級生で蒼井と言います」
普通に挨拶してみたけど、
「もしもし! 警察ですか! 今うちに変質者が!」
普通に通報された。
「つか、神谷! 止めてくれ! お姉さんを止めてくれ!」
神谷は腹を抱えて大爆笑していた。
可愛いよ! お前本当に可愛いよ! 笑顔が眩しすぎるよ神谷!
でも、今は止めてくれ!
神谷は、少ししてからお姉さんを止めてくれた。
そして、めっちゃ適当に俺のことをお姉さんに紹介した。
今日の告白の件、込みで……。
普通……言っちゃう?
——神谷のお姉さんは神谷に負けないぐらいの美人さんだった。でも……その話を聞いた、神谷のお姉さんは、般若のような形相に変わった。
「え……もう一回言ってもらえる? 君……なんていって由梨ちゃんに告白したの?」
「え……いやその……俺と付き合ってエッチな」
パチーン!
「もう一回言ってもらえるかな?」
そして、さっきからこの
「だからその……俺と付き合って」
パチーン!
話せば話すほど、お姉さんの機嫌は悪くなった。
「ねえ由梨ちゃん。なんでこんなクズ野郎を連れて来たの? なんでシャワー使わせたの? 別に顔面スプラッタのままでも問題ないぐらい酷い事してね? こいつ」
「いや……仰るとおりです」
パチ——————ン
「オメーに聞いてないんだよ!」
強烈な一撃をもらった。
俺の両頬は既にヒリヒリが止まらない。
まあ、妹の体を目的に告白した男が目の前にいたらそうもなるだろう。
……しかもこんな変態チックな格好で。
「いや、もういいんよ、お姉ちゃん。こいつにもなんか事情ありそうだし」
「よくない! なんで、こんな変態に同情してるのよ由梨ちゃん、優しすぎよ!」
分かった……この人シスコンだったんだ。
……しかも重度の。
「お姉ちゃん……私達、大切な話があるの……話が進まないから、そろそろ向こう行ってくれる?」
「うぅぅ、分かった。何かあったらお姉ちゃんをすぐに呼んでね」
「うん、ありがとう」
神谷に諭され、お姉さんはようやく自室に戻ってくれた。
「神谷……重ね重ねすまん」
「別にいいよ、めっちゃ笑えたし」
俺は笑えなかった。
この体験は、俺の短い人生の中でもトップ3に入る恐怖だった。
お姉さん……目が真剣だったし、ビンタも全然手加減してくれなかった。
「じゃぁそろそろ、本題に入る?」
「ああ……そうだな」
神谷は事の真相を語ってくれた。
まあ、予想通り……色恋のもつれだった。
鉄仮面が好きだった人が、神谷を好きになった。
そして、神谷はその男を振った。
そこから、鉄仮面のグループと疎遠になり。
神谷にあの噂が流れた。
胸糞の悪い話だ。
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