俺と付き合ってエッチな事をして下さい〜偽りの愛を求めた俺が手に入れた真実の愛で奇跡が起きる〜

逢坂こひる

第1話 偽りの愛を求めた告白

 とある日の放課後、俺は校舎裏に、同じクラスの神谷かみや 由梨ゆりを呼び出した。


 もちろん告白をするためだ。


 男遊びが派手だという、あまりいい噂を聞かない彼女。俺は、そんな彼女だからこそ、告白しをようと決意した。


 ちなみに神谷は圧倒的に可愛い。

 肩口ぐらいのふわっとしたクリンクリンの髪。目鼻立ちは整っていて“この雑誌のモデルだよ”って紹介されても、全く違和感のない美貌の持ち主だ。


「ねー、こんなところに呼びだして、なんなの?

 まさか告白でもするつもりなん?」

 ……のっけから身も蓋もないことをいう神谷。

 まさに俺は今から、そのまさかの告白をするつもりなのだから。

 

 今言ったら完全に間が悪いのは分かってる。だが、俺は言ってやった。


「神谷、俺と付き合って、エッチな事してくれ!」

「え、無理、キモっ」


 秒で断られた。

 コイツ何言ってんだ?

 ぐらいの反応は示すかと思ったが、脊髄反射レベルで断られた。


 まあ、とんでもなく失礼な告白だったのだ。当然といえば当然の結果だ。


「だよな……悪かったよ……時間とらせて」

 俺はその場を立ち去ろうとしたが、神谷に肩を掴まれ、呼び止められた。


「おいおい、ちょっと待て。なんなん、今のふざけた告白。ていうか、好きも嫌いも言ってなかったから告白にもなってなかったよね?」

 確かに神谷の言う通り好きも嫌いも言っていない。

 俺の目的はあくまでも、神谷と付き合ってエッチな事をするだけだったのだから。


「そりゃそうだろ。俺はお前と付き合って、エッチな事をしたかっただけなんだから」

蒼井あおい、あんたそれマジで言ってる?」

「マジだ、マジも大マジだ」

「はあ? もしかして……私のことバカにしてる?」

「いや、バカにはしていない」

「お前とエッチなことがしたかった……ただそれだけだ」

「なんだ、そうだったのか」

「そうなんだよ」

「って、なるわけねーだろ! ざけんなよテメー!」


 ボコされた。

 完膚なきまでボコされた。

 このぐらいのことは覚悟していたから何の問題もない。

 

 だが神谷は、あまりにも無抵抗な俺に違和感を覚えたのか、ボコすのを止めた。

「なんなん、あんた、なんで、やられっぱなしなのさ?」


「いや……だって俺、めっちゃ失礼なこと言ったじゃん? それこそ半殺しにされても仕方のないぐらいのことを」

「……まあ、だから今半殺しにしてんだけど……」

「本当に失礼な事してるって、自覚はあるんだ。だから抵抗なんてできない!」

 キメ顔で言ってやった。


「なんか格好付けてるふうだけど、言ってること最低だからね?」


 ごもっとも!

 しかし、最初は怒り心頭の神谷だったが、俺の言葉に少しずつ態度を軟化させていった。


「なんか事情あるんでしょ? 言ってみ、聞いてあげるよ」


「神谷……」

 神谷は思ったよりも全然いいやつだった。

 あんなにも失礼な事を言った俺に気をかけてくれるだなんて……。


 そう考えると、俺はある疑念が思い浮かんだ。

 神谷が男遊びが派手って噂……嘘じゃね? ってことだ。


「なあ、神谷」

「なによ……」

「お前の噂ってさ……嘘だろ」

 神谷は目を丸くして驚いていた。


「嘘って言ったら、蒼井は信じる?」

 神谷はボコした俺の隣に座り、真っ直ぐに俺の目を見てそういった。


「信じない」


 神谷は、とても悲しそうな表情をした。

 本当のことを言われて、こんなにも悲しそうな顔をする奴なんていない。

 だから言ってやった。 


「俺は、神谷が男遊びが派手なやつだなんて、信じない」


 最初は俺も噂を鵜呑みにしていた。

 だからこそ、神谷に告白したのだが、それは間違いだと気付いた。


 神谷はニコっと俺に微笑みかけ、

「ややこしいんだよ、言い方が!」

 と思いっきり頭を叩いた。


「なんでだ……お前があんな噂立てられたのって、何か原因があるんだろ?」

 神谷は複雑そうな表情でうなずいた。


「あるにはあるんだけどね……あんたに言ったって解決しないよ」

 神谷は半ば諦めたような顔をしていた。


「解決しないよってことは、解決したいのか?」

「そりゃ、そうだよ……あんな噂たてられて平常心でいられるほど、鉄のハートじゃないよ」

「そうだな……第二、第三の俺が現れないとも限らないしな」

 神谷はジト目で俺を見つめ……、

「やっぱ、あの噂があったからあんな告白したんやね」

痛いところをついて来た。


「そうだよ……本当だったら、エッチなことしてもらおうと思ってたし、根も葉もない噂だったら全力で謝ろうと思ってた」

 神谷はさらにジト目で俺を見つめ……、

「そのわりには、すぐにフェードアウトしようとしてたじゃん」

 更に痛いところをついて来た。


 でも俺は、強引に話を続けた。


「話してみろよ神谷……役には立てなくても、楽にはなるかもしれないぞ」

「蒼井……」

 神谷は小さく頷き、真相を語り始めた。


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