古参の意地

古参の意地

「昨夜（さくや）某県（ぼうけん）某市（ぼうし）の駐車場（ちゅうしゃじょう）で女性が何者かに刃物（はもの）で刺され現金を奪われました。女性は軽傷（けいしょう）です」

　ＴＶから流れたあるニュース。

「子供もいますし怖（こわ）い。早く犯人を捕（つか）まえてほしいです」

　今のはその中で街頭（がいとう）インタビューを受けた人の声。

「犯人を見た。しっかり特徴（とくちょう）もおぼえている」

　だが長年（ながねん）この場所を見続けてきた儂（わし）の声は無視（むし）され現場には再犯（さいはん）防止（ぼうし）の為防犯カメラが設置（せっち）された。

　儂よりもこんなものを信用するというのならこちらにも考えがある。

「昨日（さくじつ）某県某市の駐車場の電柱（でんちゅう）が倒れ車一台を巻き込み付近が一時（いちじ）停電（ていでん）しました。男性が閉じ込められましたが、車内からは同じ場所で先日の強盗事件（ごうとうじけん）に使われたと思われる刃物が見つかり、男はその場で緊急逮捕（きんきゅうたいほ）されました」

　すごい偶然（ぐうぜん）だとネットなどでも話題になった。

　こちらは関係者の話。

「電柱に異常（いじょう）はなく、倒れるような状態ではありませんでした。取り付けたカメラは壊（こわ）れていましたが、犯人は車とこの電柱に足を挟（はさ）まれ動けなくなっていたのです」

　そして……

　犯人を押さえつけている電柱がなぜか満足そうに見えた。との事。

　ふふん。