第7話 END.
それから十数年後。
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20××年×月×日(×)××新聞
ついに海洋データベース完成か
けさ 深海探査機○○号 出発
――日本初 深海×××××㎞まで潜れる技術が作る未来とは――
日本海洋研究所の深海生物研究センターの×× ××さんは、今朝出発した深海探査機○○号について、一般向けの詳しい解説を発表した。なお、帰還の日程については探索の進捗度合いに左右されるが、おおむね××/××辺りを予定しているという。この深海探査機によって、近年問題になっている××××といった環境問題解決の糸口になることが期待されており――
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「はいこちら 麦海ふれ です。――はい。それではこちらはメーター確認だけしたら休憩を取っても良いと。――了解いたしました。失礼します」
ガチャリと水上の母船との連絡用通話機である、水中通話機を置いた。
僕は重々しい雰囲気を纏う機械に囲まれたコントロール・コンソールに居た。船外の水温はかなり低く、体温を維持するために着込んでいる服がシャカシャカ音をたてている。船外は予想以上に暗くて何も見えない。
各種メーターは規定値内。塩分・水温・水深・水中酸素濃度も、まあ許容範囲だろう。予定通りだ。今のところ異常は見当たらない。部屋の構造が直方体ではなく、圧迫感を感じる。コードとパイプに囲まれた場所。
あれから幾度も、君がいなくとも季節は過ぎ去っていった。あれからついに海底を採掘する技術が確立されて。海底に、従来じゃ考えられない程の計測装置、…GPSって言ったら分かりやすいかな。を設置して、ついに海の中の正確な地図も作られるんだって。
想太が聞いたらそりゃワクワクして僕の肩を掴んで前後に揺さぶりながら喜んだんじゃないかな。そっちはどうしてるんだろう。一体どれだけ遠くに行ったんだろうね。想太……。
『ねえ、覚えてるかい?僕さ。僕だよ!』
後ろからそう聞こえた気がしてはっとする。手に持っていたトランシーバーがガシャンと落ちた。僕はとっさに振り返ろうとした。君の無邪気な笑顔がぱっと頭に思い浮かぶ。おぼえてる…?うん、覚えてる、覚えてるとも!勿論だとも、いや忘れるわけないじゃないか、ずっと会いたかった。待ってたんだ、君をずっとずっと、声も、癖も、何気に優しい所も、ずっと覚えてた。君をまた一目見たかった。思わず笑みがこぼれてしまう。心臓が高鳴る。
「そうた!久しぶり!!」
振り返っても、そこには誰もいなかった。
END.
深海ブロマンス メメ宮 景斗 @keito_mememiya
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