第7話 コタロウとヒロシ

「成程…しかし、新魔王チルマも抜けた戦力を埋めるためにすぐには活動できないでしょうね」


 女神はそうは言ったものの問題は深刻であるため、頭を抱え悩んでいる。


「うーん、俺とヒロシ達で何とかしますよ!」

 

 正直困った人、女神かな? を放ってはおけない。


「た、助かるわー。じゃ早速だけどヒロシさん貴方の望むスキルを教えてね?」


 俺は前両足を女神にガッチリとつかまれた。女神はとても嬉しそうだ。


「へへー実はもう決めてるんだ」


 ヒロシは俺と顔を合わせて笑顔で答えた。


「えっ? 何?」

「『魔王から貰った魔法スクロールを覚える能力』」


 ヒロシは例のリュックから魔王から貰ったスクロールを一つ取り出した。


「ええっ? そんなの聞いたことない!」


 目を丸くして驚く女神。


「えっ無理?」


 落ち込むヒロシ。


 コラ! 女神っヒロシがしょげてるだろ! 何とかしろ!

 女神に向かって抗議する俺。


「ワン、ワンっ!」

「あっ…甘噛みはやめっ、少々お待ちを…あ、できますね。いいんだ…」


 女神は上司と上手く交渉出来たようだ。よしよし。


「ヤッター! 『飛行魔法トベルーン』が使える」


 ピョンピョン元気に飛び跳ねるヒロシ。うんうん、気に入ってたからな。


「えいっと…ヒロシさん、これで『魔王から貰った魔法スクロールを覚える能力』が使えます!」


「ありがとうー早速使ってみよ、じゃ女神のお姉さんまたねー」


 ヒロシは俺を両手で抱え『飛行魔法トベルーン』を詠唱し、フワリと空中に浮遊する。


「あっ待って、ヒロシさん装備とかは…」


 慌てて俺達を引き止めようとする女神。


「自分達で手に入れるからそんなのいらないー、魔法が使えるし、武術とかは自分達で鍛えて覚えたいんだ」

「…あ、ハイ」


 女神はヒロシの言葉に唖然あぜんとしていた。そう、これがヒロシの器のでかさだ。

 女神も驚く程の…。


「じゃ、ヒロシ行こうぜ。あ、俺人間にもなれるから。というか元々こちらでは人間の姿が通常だったんだ」

「おお、じゃ最強のタッグできんじゃん」


 俺とヒロシは顔を合わせ笑いあう。


「うんうん。とりあえず、この『地震ナマズ』って召喚魔法覚えて見て」

「OK覚えた。…あ、山が真っ二つに割れた。これ地形が変わるヤバイ奴だ。これより大人しい魔法を覚えようか」


「じゃ次はな…」


 こんなやり取りをしながら俺達は近くの町に向かって飛んで行った。


 そう俺達の新しい冒険は今ここから始まる。


 ヒロシといれば正直なんだってできそうだし、怖いもんなんてないよ。


 女神様もそうだが、困ったら周りにいる人達や魔族も話せばわかってくれる人達がいる。


 ルベード達がそうだったように。協力すればどんな武器や魔法よりも強力なのはもうわかってるんだ。

 

   ♢


数か月後ヒロシとコタロウがいた現代のヒロシの家


 すっかり現代になじんだルベード達は両親が留守の間、調べものをしていた。


「このパソコンというものは便利よなコンヤニ」

「ですね、素晴らしい機械です」

「コンヤニ…お前、動物園の虎をまた見ているのか…」


 元魔王のルベードはジト目でコンヤニを見る。


「へっへっへ、この毛並みたまりませんなあ…」

「…お前、コタロウ達と交わした目的を忘れるなよ?」


 ルベードはため息をつく。


「勿論ですよー、っとんん?」

「どおした?」

「へっへビンゴですぜ」


 ルベードはコンヤニが使っているパソコンの画面をのぞき込む。


「何々…毛並みのいい白トラの動画?」


 コンヤニは親指を立て笑顔で頷く。


バキィ…

 ルベードの渾身の一撃。裏拳がコンヤニの顔面に炸裂した。


「痛いっ…嘘ですっホントはこれです…」

「…次はないと思え?」


「はいいっとこれです」

「異世界転生計画? 何々…?」


「何でもこの計画の夫婦博士が姿を消したらしいんです」

「ほお、面白いな…追うぞ」










 



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なんとワンダフル! コタロウの異世界ライフ こんろんかずお @hiisan0624

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