第6話 トレード
それから数時間後、ヒロシの家の部屋
「じゃ、行ってくる。ヒロシ行くぞ!」
「慌てるなよコタロウ。ルベードそっちは頼んだからな!」
俺達はルベードから貰った『何でも入るリュック』に色々持っていく物を詰め込んでいた。
「ああ、お前の変わりはまかせろ。こちらはこちらで探してみるから」
ルベードは深く頷く。
「コンヤニも俺の代わり頼んだぞ!」
俺はコンヤニに再三のお願いする。
「やれやれ、魔王様の頼みだ、断れまい。俺がペット代理とは皮肉なもんだ…」
コンヤニは大きくため息をついている。
まあね…でも俺のペットの立ち位置視点で見させてもらうと、元々立ち位置はそんなもんじゃね?
「ヒロシ、コタロウをしっかり抱いてろよ」
ルベードはヒロシの額に『真理の瞳』をはめると何やら小声で呪文を唱えた。
「ありがとうルベード」
礼を言う俺達。
ルベードはそんな俺達にフッと優しく笑う。
俺にはその優しい表情が完全に険がとれた一人の人間として見てとれた。
ブウウンッ…
鈍い振動音と共に『真理の瞳』が起動し、ヒロシの額の宝石は金色に淡く光り輝きだした。
「帰還の魔法の言葉は唱えてある…後は……」
ウウンッ…
そして、ルベードの声が遠くなっていく…。
ドサッ…
「いつつ…」
俺達は意識を取り戻す。
周りはうっそうと茂る雑草と生温かい緑の香りがする…。
この見慣れた、ただっ広い感じは…。
「ヒロシ!」
「コタロウ!」
成功だ!
俺達は抱き合って喜んだ。
そう俺達はルマニアのヤコ草原に飛ばされたのだ。
俺はコンヤニと、ヒロシは魔王と住む世界を変えたのだ。
これが『真理の瞳』の代償交換の条件のクリアだったのだ。
俺がヒロシと一緒に生活するため。魔王が異世界である俺達の住んでた世界に移住するためにはこれしかなかったのだ。
現実世界にはヒロシに変身した魔王が、俺の代わりにはコンヤニが変身して代理となっている。
魔王達はあちらで異世界の扉を探してくれる約束をした。
魔王は癒しに飢えていたんだろう。そしてそれはヒロシの両親と暮らせばそれは満たされていくことだろう。
「もしもし? コタロウさん? なんか私とコンタクトが取れない場所にいませんでした?」
とか考えていると丁度いいタイミングで女神様からのコンタクト!
「あ、女神様お久しぶりです。丁度良かった、ヒロシ連れてきましたよ?」
「う、うおお? 不思議、頭に直接声が聞こえる? 俺ヒロシですー」
ヒロシは周辺を見回し、声の主を探そうとしている。
俺はヒロシに説明してその行動を止める。
まあね、テレパシーが使える人間はいないからね…。
「ええっ? 何っど、どうやって?」
「実は…」
俺は女神に手短に説明した。
「ええっ? す、すごい。じ、じゃ魔王を討伐したようなもんじゃないですか…しかも幹部一人もおまけ付きで…勇者まで連れてきて」
「あっ結果そうなるのかな…でも、魔王ルベードは魔王の座をヴァンパイアの宰相チルマに継承していったんですよね。新魔王は旧魔王と違い好戦的だから甘くはないと思いますよ?」
俺がルベードから聞いた話であるが、実はチルマは何代か前の魔王の一族であった。先祖が昔、派遣争いで敗れ、今の地位になっていただけで魔王としての資質と実力は兼ね揃えているのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます