第27話『13日目③』友よ



「と。私があの子について申し上げられるのは、ここまでです」


サエデのお母さんは、おしとやかな笑顔で、そう告げた。

静かに、部屋の時間は過ぎていく。

『竜の巫女』。そして、存在しない属性。

サエデはがんじがらめに縛られてしまっている。


「外部へ、助けを求めなかったんですか?」


疑問が、口をついて出てくる。

が、サエデのお母さんは、首を横に振る。


「過去、一度だけ。昔の村人が、名のある強者に、討伐を依頼したそうです。

しかし、手も足も出ずに亡くなってしまったそうで……」


「「!」」


「………それ以来、村の人たちは、外部からの干渉を恐れているそうです。

………幸いにも、その時には、なんの報復も無かったそうですが………」


部屋の中は、無音に包まれる。

………私達の手では、どうしようもないのかな。

そんなことも考えてしまう。


でも、あの笑い声を思い出す。

私の寒いギャグに、笑って転げていたあの姿。

あんな子を、このまま死なせてしまっていいのだろうか。


「「ねえ!アル(リア)!」」


「私は、サエデを助けたい!このまま、何もしないでほったらかしにしておいたら、絶対に後悔する!」


「あぁ。俺も思ってた。そんな死の運命なんて、どうにでもなる!俺はそう信じている!」


私とアルは、立ち上がる。

アルの目には、火がついている。

きっと、私の目も同じだろう。


「「サエデを、助けよう!」」


私達は、サエデのお母さんの方へと向き直る。


「サエデのお母さん!どうか、その竜について教えてください!」


「え、でも………これ以上、あなた達に迷惑をかけるわけには………」


「大丈夫ですよ!もしもの時は、俺の命に代えてでも、サエデを守ります」


その一言で、ちょっと考える事があった私は、思わず突っ込む。


「………いや、もしもの時は、私が盾になるから。お願いだから、命大事に………」


「ハハっ。分かってるよ。もしもの時は、だ」


ジトーっとアルを見つめる。


「もしもの時は、だからね。

………私だけ生き残ったら、国王様からなんて言われるか………」


「あの………何かありましたか?」


「「いえっ!何もありません!」」


夜はふけていく。

どんな事にも、明るい未来は来るのだと。

そんな主張をしているかのように。


「では。私達はこれで去ります。

………必ずサエデさんは助けますので」


「はい。どうか、ご安心を」


サエデのお母さんにそう告げ、防音魔法を解いて、透明マントをかぶって、

静かに家から出て行った。


「………サエデ………良かったわね………」


サエデのお母さんが、一人静かに呟いた。




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嫌がらせ王子と私の100日日記 青猫 @aoneko-d

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