作者さまの作品の中では珍しく恋愛要素が薄く、代わりに人生のドラマに重きを置いた作品です。
こちらの作品、非常に紹介が難しいです。なぜなら、こちらの作品は、何の先入観もなく今の読み手の立ち位置で素直に受け止めて欲しいからです。
極めて簡単にポイントを紹介しますと、何らかの創作をする場合、その価値を決めるのは何か?ということです。その問いかけに、人生の分岐点を上手く重ねて書いてありますので、人によって感想が変わると思います。それこそが、こちらの作品の魅力だと思います。
私自身は、グッとくるドラマに感じました。名もなき写真家の作品は、本当に名もなき作品なのか? その答えは、煩雑な手続きをしてでも引き取りたいと考えた父にあるのかもしれません。
カクヨムで創作する人のみならず、人生でちょっと躓いたり、息抜きしたい人にもオススメです!
普段の生活において、これはエゴだと認識することは少ないと思われる。
エゴとは自己や自我といった意味で、頻繁に使うとすれば利己主義――エゴイズムや利己主義者――エゴイストとして使うくらいだろうか。
本作の主人公と彼女の上司ともいえる亡くなった男は、そういう意味ではエゴイストなのである。
「プロになる」という夢を追いかけ、破れた二人は、主人公の実家で出会うこによって交流が始まる。
そして起こった、彼の突然の死。
何を思い写真を撮っていたのかと、彼が撮り溜めた写真や動画を見て、主人公は思いを馳せる。
写真と歌というそれぞれの夢に違いはあれど、その根底にあったのはエゴ。
人によっては醜く、そして美しく感じるそれは、彼の行動を真似て同じ場所で動画を配信し、その場所で歌うことで彼の内面や交わした言葉の意味に気づいていく。
北海道の雄大な自然と、日々変わる同じものがない景色。画面の向こうにいる人々に訴えかけるのは、彼女のエゴ、あるいは彼のエゴなのだろうか。
エゴが昇華した先にあるもの――それは、自己満足という肯定感なのかもしれない。
それを感じさせる、ある種の感動とほろりとくる作品だった。