第3話アフターストーリーと言う名の蛇足
レンズ アフターストーリー。
レンズその後の世界。
†
俺とアスが結婚して15年が経っていた。娘も大きくなっている。娘の名前は『レン』。初恋の子から付けた名前。レンを見てるとまるで生き写しの様だ。3月に15歳になったレンは初恋のレンちゃんに雰囲気も何処となく似てきて、父親の俺がドキッとする程の美人さんになっている。
今日は写真を近所の公園に取りにレンと二人で出掛ける。アスは写真に余り良い感情を持てて無いが、まあ元から俺の趣味だから許してくれた。外に取りに行くときはレンと一緒だ。
「アス行って来る」
「キョウ行ってらっしゃい。レンも車に気をつけてね」
「はーい」
娘のレンちゃんと写真を撮る様になる日々が続く。季節は6月。レンちゃんのお気に入りのスポットは紫陽花の咲いてる公園だ。まるで昔の初恋相手を思い出す。今日の紫陽花は雨上がりの雫が滴り落ちていて少し赤くなってた。あの頃には幽霊のレンちゃんと此処で写真撮ったな。
はあ、しかし良く似てる・・・似て来たな。あーでもこの写真紫陽花が青い以外は本当にそっくりだ。黒髪のロングストレートにしてるのも一緒だな。高校では茶髪OKで染めてる子も多いのにな真面目だな誰に似たのかな?ってあの頃のレンちゃんに似てるんだよなぁ。はあ、レンちゃんが生まれ変わったみたいだ。
「キョウちゃんどうしたのー?」
「いや、レンも大きくなったなって思って」
レンは胸に手を当てて、不思議そうな顔してる。
「んー?前と変わらないよ?キョウちゃんのスケベ!」
って何だろうこのリアクション?まるで初恋相手のレンちゃんを思い出す・・・まさかな?・・・いかんいかん父親としての威厳だ、注意しなければ!
「パパに対してスケベは無しだろう?レン」
父親としての威厳が俺を突き動かす。だけど、このウルウルした目そっくりだな・・・怒るに怒れない。でも怒ってみる。
「キョウちゃんの馬鹿!昔見たいに。ちゃん付けで呼んでよ!」
そう言えばレンの15歳の誕生日から俺の事をキョウちゃんって呼ぶな。何でだろ?それに昔ってまさかな?
「レン?もう子供じゃ無いんだしさ?そろそろ父離れする時期かなって思ってさ?解るかな?」
レンに優しく諭す。だけど予想外の反応が来る。
「キョウちゃん?永遠に想い続けるって言った約束破ったよね?忘れてもいいよって言った事もあったけどさ?酷い、最低だよ!?」
!!
何故?娘のレンが初恋の幽霊のレンちゃんとの約束を知っているんだ?馬鹿な・・・有り得ないだろ!?
戸惑ってるとレンが、いやもう信じてしまいそうな位に真実が、すぐそこに更なる追い打ちをかけてくる。
「あーあ、嘘つき!酷いんだからね!罰なんだよコレはさ?レンちゃんだけって言ってたのに他の女と結婚するってさ?あーあ残念!」
!?
公園に一陣の風が吹き。まるでこれが運命の羅針盤だと言う様に、強風が強く俺の頬を叩き付けた。
酷いな。運命って残酷だな・・・いや俺が悪いんだ。俺が嘘ついたからレンちゃんはこんな形で現れたんだ。慌てて言葉を添削する間も無かった。
「ごめん!俺が悪かった!・・・って本当にレンちゃんなのか?」
しまった。また傷付ける事言ってしまった。レンちゃんに決まってるじゃないか。。。
娘だった存在が、あの頃の悪戯っぽい笑顔と共に崩れ去る。あの頃のままの悪戯っぽい笑顔での再会。
「忘れたの?キョウちゃん悪い子!め!」
その存在は神々しく昔の面影のままに見える。まるで世界の全てを・・・俺が一目惚れして、自分の世界を眩く塗り替えた。甘酸っぱい初恋の彼女・・・
周りの風景も雨露に濡れた紫陽花の花々も、祝福してるのか?断罪してるのか?色味が変わって見える。これが昨日降ったであろう酸性雨による影響で紫陽花の花弁が変色する現象が、スローモーションで、でも時折に早送りで見える。まるで俺の罪が、許されたのか?許されざるモノか?を天秤に、否。まるで裁判の傍聴人の様な。検事の様な。弁護人の様な・・・不思議な空間に包まれる俺とレンちゃん。
「レンちゃん。俺さ忘れられ無くって、娘が生まれた時に、アスに内緒でレンって付けたんだ。忘れたくなかった」
辺り一面の紫陽花が真っ赤に染まった。死刑宣告が下る様な気がした。盛大に昨日の雨だったのか20年前の雨だったのか、俺には昔の想い出が走馬灯の様に、遊園地のメリーゴーランドの赤青のランプの点滅の様に、頭の中を逆再生された気がする。赤と青がチカチカする。まるで今の現実と過去の想い出とが交差した様だった。
ああ、あの時この場所に咲いてた紫陽花は青かったんだったな。きっとレンちゃんの心も変わってしまったんだ。
「そっか、でもそれは言い訳だよ?私の事さ?好きじゃ無くなったから出来た事だよ?」
ああ、もうあの頃のままじゃ無いんだ。。。レンちゃんは俺の事恨んでるんだ。残酷過ぎるよ。。。初恋だったのに。。。
紫陽花の花達は猛火の様に真紅の色になり、まるでレンちゃんの怒りを、あの頃とは違うって決別を代弁されてるかの様だ。
「ごめん、レンちゃんが消えてから寂しかった気持ちもあったんだ」
「私の所為?」
もうダメだ。耐えられない。けど俺には逃げ出す権利は無い。逃げ場も無い。
「・・・」
強風が吹き荒れる、嵐の前兆。台風の接近を意味するこの風は、もう20年前とは違うと教えてくれる。20年前のあの夏には台風は来なかった。
あの頃の僕を好きでいてくれたレンちゃんとはもう違うんだ。何を言われても仕方ない。
「んー?泣かないで。キョウちゃんを試しただけだよ?」
え?俺涙流してたんだ。。。我ながら情けない。でも試すって?俺は涙を拭って顔を上げた。
「私の事今でも忘れられないでくれたの?」
日の光が差し込んだ様だ。いや徐々に太陽の光が紫陽花に差し込んでいる。強く吹き荒れた風も穏やかになっている。俺の事を許してくれると言っている様な。嵐の前の静けさの様な。暖かいけど生温い陽だまり、そんな感じがする。
「うん。ずっと忘れないでいたよ?今でもずっと」
「良かった!大好きキョウちゃん!」
!!
抱き付かれて、いや、抱き付かれてるのに、抱かれているよ。心が抱かれている気分だ。
「ずっと覚えてたよ、忘れた日は無かったよ、レンちゃん!」
嵐の前の静けさとは、まさにこの事だろうか?死刑宣告が下る。
「じゃあ娘になった私を抱けるの?抱いてよ?キョウちゃん!」
!?
え?そういえば今のレンちゃんには身体があって、でもそれは俺とアスの娘で?え?え?
「やっぱり無理なの?私の事永遠に好きってのは、もう無しなの?折角生まれ変わったのに?残念過ぎるよ」
そうか、紫陽花もあの頃に咲いてた紫陽花の子供達なんだな。ってぼーっと余計な事が頭を巡る。
「無理じゃ無い・・・かもしれない・・・今の無し!!ごめん!!」
ハッと我に返る俺。情けない。でも仕方ないんだ。
「キョウちゃんの馬鹿!!意気地なし!!」
実らぬ恋の果実は、永遠に届かない。それは自らの因果で生み出した裏切りの果実で、限りなく近い。
「だけど・・・それでも・・・絶対に届かないけど、でも傍に居れるよ」
レンちゃんはボロボロと泣き崩れた。どうする事も出来ない情けない俺。男としても、父親としても最低だな。何て罰ゲームだよコレ?
「ばか・・・」
周囲を豪風が吹き荒れる。台風が来た様だ。さっきまでの異様な空間が捻じれる様に頭に幻覚を見せてるかの様に、景色が変わって行く。紫陽花の色は灰色に変わって枯れてしまった。
もうこの恋心が永遠に届かなくて、でも限りなく近くに居る彼女を、俺はどうする事も出来ない裏切り者だと思い知った。
「帰ろうレンちゃん。昔には戻れないけど」
「娘ごっこはもういい!さよなら・・・」
雨雲から、まるでスコールでも降りつけたかの様な洪水が溢れて、それから俺はレンちゃんを見失った。
俺はトボトボと元気無く歩いてその場から逃げる様に帰路に着いた。着いていた。
†
「ただいま」
「おかえり雨酷かったでしょ?」
色々と酷い事あったよな?
「ああレンちゃんは?帰ってるか?」
「うん?帰って来てないけど?一緒じゃ無かったの?」
まあ、そうだよな、帰って来ないよな。
「いや途中から別行動でさ?」
説明しても、修羅場になるのは目に見えてるからな。俺はまた嘘を付いてるダメな男。
「まあレンも高校生だし、もう大人だからねーそのうち帰ってくるよ」
色々と察したのか、誤認識したのかは解らないが、喧嘩したっぽい雰囲気は伝わったみたいだな。はあ。
「風呂入るわ」
†
湯船に浸かる俺は、レンちゃんのボディータオルとレンちゃん専用の高いボディソープが嫌でも目に入り、意識してしまった。美容室専売の高いシャンプーとセットであるヘアパックの匂いまで思い出す。
「レンちゃん良い匂いだったよな。俺の為に磨きかけてたのかな?ってか、そうだよな、でもダメなんだ」
湯船から上がり自分用のシャンプーで髪をゴシゴシ洗う。今日公園であった事を忘れる為に、想いを流して綺麗さっぱり忘れようって気分を切り替えようといつもより、しつこく洗い方に念をかけてる。
「何がダメなのさ?」
!?
背中から声が聞こえた。レンちゃん何で?
「帰って来ないって思ってた。でもさっき娘ごっこはもういいって・・・」
髪の毛を洗いながら、背中に膨らみを感じる。ダメだ。俺おかしくなりそうだ。
「娘ごっこはもういいんだよー。キョウちゃんー。大好き!」
俺の膨らみにレンちゃんの白い手が回ってくる。ダメだ抵抗出来ない。
「レンちゃん俺ずっと、こうしたかった君を抱きたい・・・」
「キョウちゃん!解ってくれたんだ!やった!いつも一緒だよ・・・ずっとね」
†††
俺はこの時思えば頭に何か虫でも湧いてたのかも知れない。俺は風呂からレンちゃんと一緒に上がり。レンちゃんの部屋までの道のりが遠く感じたのを覚えてる。
†††
「やっと結ばれるのねキョウちゃん」
「ずっと好きだったよ。浮気してごめんねレンちゃん」
俺達が一つになろうとした時だった。
「ーーーーっ!!」
部屋のドアから悲鳴の様な怒号の様な。。。表現のし難い奇声が聞こえた。俺はこれで良かった気がしなくも無かった。全て俺が築き上げたものは、水泡に帰した。いや想い出の写真も何もかもが、音を立てて燃え尽きた。レンちゃんへの想いも、一瞬で氷付いた。
†††
あの時はアスから殺されるって思った。まあ、俺が悪いのは明白であるし、もう世間様にも顔向け出来なくなった。実の娘と・・・ってアスとアスの両親から散々黒い噂を尾ひれを付けられて世間様、ここでは近所の意味ではあるが、猛烈な勢いで広がった。俺の居場所は無くなり、引っ越しをして再就職をしたは良いけど、お先は真っ暗で、会社の窓際だけが自分の存在空間だった。
†††
会社の窓際でボーっと有りもしない仕事をするフリが続く。もうここも長くは居られないな。
「キョウ君だね?いやー取引先の接待で君を連れて行きたいんだが・・・どうかな?」
「はあ、何で俺なんです?」
「いや。ちょっと此処では・・・喫煙室に行こう話も弾むしさ?」
「はあ、」
こうして俺は一つ上の先輩に誘われるままに喫煙室に向かった。後悔したのはこの後だ。
「いやさ?高校の体育祭で君の娘さんと家の娘が同級生って知ってしまってさ?そのなんだ?察してくれるよな」
肩に手を置かれた。何だ?脅しのつもりか?
「は?歯切れ悪いですよ?何言ってるか解る様に言って下さい!」
「いやさ?お前だってあんな可愛い子と・・・解るだろ?大人の事情ってヤツをさ?」
!!
「俺は何もしてない!黙れ豚野郎!」
左ストレートをお見舞いした。豚野郎は豚みたいな声で蹲ってる。
「お、お前、何する!折角お前の首の皮一枚繋ぐ為に接待の席にも同席させてやろうってしたのに!恩知らずが!」
俺は颯爽と踵を返して辞表を午前中に出した。
†††
俺の社会生命の終わりの始まりだった。だけど不思議と後悔はしなかった。
†††
俺は会社近くの公園で宛も無くブラブラしてた。公園のベンチには紅葉の落ち葉がひらりと飛んでいる。哀愁漂う親父だなって我ながら小さくなってるな。風が肌寒い。あーあ家に帰ろうかな?でもレンちゃんは帰って来てないしな。
そう俺はアスと離婚した。アスもレンちゃんが昔俺が写真に残していた幽霊の生まれ変わりだって聞いて、親権を放棄した。それはアスにとっては当然の選択であるが、世間的には許される事では無いのが・・・俺が悪いのに、やるせなさで一杯な気分だ。アスは何も悪く無いのにさ。全部俺が悪いのにさ・・・
「あー!キョウちゃん!何してるのー?」
?
「え?」
一瞬何が起こったか解らなかった。レンちゃんが何で此処に居るのか解らない。更に解らないのが隣に居る男だ。見た目は俺よりは若いレンちゃんよりは上の印象を受ける・・・目測20半ば位の男だ。
「誰?」
俺は思った事を率直に言った。
「レンさんの担任の者ですが?お忘れですか?編入学の手続きで面談しましたよね?」
「あーそうでした。お久し振りです。えーと授業中の筈では?」
何か場違いな自分の事は棚に上げて保護者として質問してみる俺。なんだかな?
「娘さんが不登校なので家まで説得に行きました。今から学校に向かう処です」
「え?」
「あー此処では少し不味いので、明日にでもお時間取れないですか?」
†††
俺は凄く嫌な予感がした。だけど今すぐ時間取れるってのも変な話になりそうだから、明日を待ってみる。
何か胸の中で疼く痛みがある。
レンちゃんだって学校で嫌な思いしてるだろうな。イジメられてるのかな?情けない事に俺が助けると余計な誤解を生むのは明白だし、イジメだとしたらエスカレートするの目に見えてるな。。。
落ち葉が踏まれて黒くなってるのを重ねてみるみたいに惨めな気分だ。
†††
夜になってレンちゃんに話を聞く。予想通りの答えイジメられてるって。何かもう誰が悪者かとかは無いって感じに思ってる甘い考えの俺だが、確実に皆が悪者扱いされてるってのが世間様の認識だって思う。
「キョウちゃんの方が心配だよ?お仕事首になったって、落ち込んでるでしょ?慰める!」
目をウルウルさせて見つめてくるレンちゃん。でも答える訳には行かない。
「これ以上レンちゃんが傷つくのは耐えられないから、一線は超えられないよ・・・」
俺はほぼ毎晩の様にレンちゃんからのアプローチを避けてるけど、今夜は厳しく接する事も出来ない。
「じゃあ浮気しても良いの?キョウちゃんが抱いてくれないなら浮気する!」
「ダメだって!どっちも!」
「キョウちゃんはさ?これからどうしたいの?私達ずっとこのままなの?嫌だよ・・・」
「そ、それは・・・」
俺はどうしたいのだろうか?でもレンちゃんが浮気する筈も無いし。。。はぐらかすかな?
「良いか自分の事は大事にしないとパパ嫌いになるよ」
「もういい!おやすみ!」
レンちゃんはドアをバタっと閉めて出て行った。何か凄い消失感。
†††
俺はこの日の事を一生悔いる事になるとは夢にも思ってなかった。
†††
夕方の喫茶店のテラスで、コーヒーを飲み終わり。学校に行ったであろうレンちゃんの事を考えながら、入れ違いになるタイミングを見計らってレンちゃんの通学する高校に電話を入れる。
「もしもし私そちらでお世話になっている・・・ええそうです」
「あー少々お待ちを・・・今から来れますか?レンさんの事で相談があるのですけれど。。。ええ。はい」
†
こんな簡単なアポイトメントですんななり校舎を抜けて相談室に案内された。校舎のグラウンドからは部活をやってる男女の学生達から白い目で見られてる気がしてならない。
†
相談室にはレンの担任教師が待っていた。何の相談かは想像出来ないが、悪い方向に向かうだろうと直感はある。
木製テーブルの対面に座り。会釈をして腰かける。「娘がお世話になっています」と定型文の挨拶をすると。「今日お世話しましたよ?立派な娘さんですね?」って返答。
??
「え?意味が?良く?」
「いえいえ難しい顔されてますから少し緊張を解す為の呪いですよ」
ん?なんか嫌いなタイプの人間だな。冗談に品が無い。
「は、はあ」
「僕はレンさんの担任をしてて思った事、気づいた事があるのですが?えーと答え難いでしょうが・・・その」
「レンとは何もヤマシイ関係ではありません!誤解です!」
はあ?コイツもか?ウンザリなんだよ!
「そうですよね安心しました。憧れのキョウ先輩に限ってそんな間違いある訳無いですもんね!」
!?
え?憧れの先輩?こんな奴記憶にないし?見た目より老けてるのかコイツ?
「えーとどちら様?後輩に君見たいなの居ないんだけどさ?」
「やだなー三者面談の時に名乗りましたけど?カエデです。それと何代も後の中学の後輩なんですよ僕」
「そうなんだ。でも俺が何代も後に語り継がれる事って何かあったか?」
「写真・・・僕も得意なんですよ?先輩はもうカメラやって無いんですか?」
!!
あの写真の事か確かに、あれはコンクールの後に中学に飾られたな。アスと俺を結ぶ切っ掛けでもあった写真だ。
「そうか、あの写真どうだった?」
「綺麗な夕焼けでしたね。ああ僕のも隣に飾られましたよ?10年に一度の逸材同士ですよ僕達」
話が逸れてる気がする・・・
「話を戻そうか?一体何用なんだ?話が見えないんだけど?」
この男の顔が一瞬ニタリと笑った。
「僕はレンさんの一番の理解者のつもりですよ?ああ、この写真とか見ませんか?」
ん?何だ?コイツ急に訳の解らない態度だな?
手に一枚の写真を渡される。
「これ?何処で手に入れたんだ?」
そこには20年前に写真部の部室で撮ったレンちゃんのパンチラ写真と同一のモノが写ってた。
「僕の兄はご存知ですよね?同級生ですよね?」
質問してるのこっちなんだけどさ?何だコイツ?
「・・・」
「兄の事忘れてますか?空手やってたカコって言ういかつい兄貴なんですけどね?」
!?
「そういう事か?あの時アスに見られたのの中から盗んだヤツだな?」
カエデは指をチチチと鳴らして。いかにも外れだというジェスチャーをした。
「過去の写真ですよコレ?解りますか?」
「20年前に取ったからな」
意味が?
「僕は過去の写真が撮れるんですよ?アンタが幽霊を写せるようにね!」
成程な。10年に一度の人材同士伊達じゃ無いって事か。。。
「俺を脅すつもりか?残念だが帰らせて貰う」
「は?嫌だな勘違いしないで下さいよ?僕のお父様になる人にそんな事する必要あるのですか?」
モーホー乙だな。コイツキモイぞ?危険だ!撤収だ!コイツは俺目当てだ!逃げよう!
「ホモ乙!って言う」
「ははは!ユニークな人ですね!勘違いしないで下さい僕は、レンさんの一番の理解者ですよ?」
!!!
「貴様!レンに何かしたんじゃ無いのか?」
「今日から清い交際を隠れてやってますが?何か?」
矛盾してるぞ?コイツ!
「レンに手を出すな!」
「は?手を出さないから浮気するって聞いた事ありませんか?」
「ーーーーっ!!」
俺は無我夢中で殴りかかった。。。が返り打ちにあったカウンターをもろに喰らった。
「僕は前からレンさんの苦悩をしってて、相談相手になってたんですよ。チャンスをくれたのはアンタの選択ミスですがね」
俺は気を失いかけたが持ちこたえた。ぐうの根も出ない。
「帰り道は送りますよ近所ですからね」
†††
俺は全てを失ってしまった。家に着いてたらしい気付いたら自室のベッドの上だった。
ノック音がして慌てて飛び上がる。
「パパお帰り」
「レンちゃん。もう名前で呼んでくれないのか?」
「レンって呼び捨てで良いよ。もう子供じゃ無いんだし」
俺は「パパ」「呼び捨てで良い」「もう子供じゃない」って聞いて死にたい気分になって家を飛び出した。
†††
あれからの俺は屍の様だった唯一の救いは噂話がぱったり消えて再就職が容易になった位。もうあれから3ヵ月経って12月のクリスマスシーズンだった。俺の人生はなんだったんだろうか?
†††
街のネオンの灯りを見ながら今日も夜遅くに帰ろうって思う。もう顔合わせずらい。いつもレンちゃんが寝てるであろう時間に帰宅する癖が付いてた。
夜の街で、目の前から一組のカップルとすれ違った時だった。
「あ、パパ何してるの?」
カップルの女の方が俺をパパって呼んだ。ああレンちゃんか・・・って事はあの不良教師が男の方か・・・
「あ、ああ散歩」
「変なパパ。パパはほっといて行こう」
†††
俺は雪の中で家に帰らず、寒空の下でクリスマスツリーを地面から見上げていた。
クリスマスツリーは天に届きそうな位長く見えた。。。
俺の身体は力を失い。その場に倒れた。
サイレンが遠くから聞こえてくる。
†††
あれ?ここは何処だ?俺空飛んでないか?周りは白い壁と白い天井と眼下にはベッドに横たわる俺。って俺は死んだらしいな。。。
レンちゃんが泣き崩れてる。
「キョウちゃん!何で死んじゃうの?私の所為なの?私もう浮気しないから!もう余所見しないから!目を開けてよ!!」
俺は自分の愚かさに気付いた。何も失って何か、いや失ったのは自分の過失で、その所為で好きな子をこんなに傷つけて。。。俺は愚かだ。
†††
ー5年後ー
私はキョウちゃんのお墓の前で花を添えて手を合わせた。
「来世では一緒になろうね。キョウちゃん」
帰り道にキョウちゃんと一緒に写真を撮った紫陽花の咲く公園に寄り道した。懐かしい気持ちと、此処に来ればキョウちゃんに会えるって勘違いでも思いたかった。
†
振り返ると、そこにカメラを構えた少年が居た。
願いは想いの強さに呼応したかの様だった。
「ああーそこのお姉さん!綺麗な人だね写真のモデルになってよ!」
「良いよ・・・君名前は?」
ーfinー
ー後書きの魔術師Agー
これはレンズ後編の後のアフターストーリーです。色々生の感情をぶつけてみました。もし初恋相手をずっと忘れられないで、その相手と永遠に結ばれない事が確定した時の心情を拙い文章で綴ってみました。初恋は実らない。その厳しさの中で、初恋に囚われてる人に何か考えて貰える材料になればって想いました。
アナタは初恋相手を忘れられない人ですか?
忘れられないアナタは、純粋な人かも知れません。でも引きずっているなら、今後を考えた方が良いかも知れません。何故なら純粋とは必ずしも美徳では無いからです。。。
純粋さは綺麗な褒め言葉だと思ってるアナタは、愚かかも知れません。子供のままと言う意味合いで使うケースもあるからです。特に成人してて未だに純粋だと周りから言われてる人は、要注意です。
純粋な考えは特に大好きですが、純粋な人は嫌いになれませんが、憎まれっ子世に憚るの諺を考えてみると、嫌われる要素も無いとダメって事です。ライバルを蹴落とすとライバルから憎まれるのは当然です。
純粋ってしか褒められない人は居ないって思いますが、良い人って言われる人は所詮良い人止まりです。
この物語に救いは有りません。結構厳しいのですが、最後に残したギミックも矛盾を孕んだ堂々巡りと言う片想いのロジックの一つであり。最初の爆弾的な家族崩壊も二律背反に揺れる片想いの独特な表現を書いたつもりです。好きな人の幸せを願うのが愛なのか?自分で勝ち取るのが愛なのか?までは言及しませんが・・・
好きな人がフラれて弱ってる処を狙うってのは、恋愛の形として安易だとは思います。二律背反な気分になる方はまだ理解出来ますが、自己中心的に相手が欲しいだけの人は、純粋な肉食系ですね。軽蔑します。
ーーーー
ってかさ?今回のお前相当グロテスクな真っ黒だな?ww
まあたまには黒くならんとな!
ちょwwおまwwいつでも真っ黒かも?ww
おうwwまあいいいじゃん?
ーfinー
レンズ 天獄橋蔵 @hashizho
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