第3話 予兆

交際を初めて半年が過ぎた頃の事だった。

今思えばあれは予兆だったのかもしれない、今なら思う…あの時気付いていればと…


2人は夜遅くまでデートして帰り、楽しくLINEをしていた。

ォレが寝落ちしてしまい翌朝LINEをチェックする。

有紗からLINEが来ている。

明るい話題が続く文章の1番したに一言



なんか朝から憂鬱なんょね。。


憂鬱?どしたんだろ。なんかあったの?


特になんもないんゃけど…とにかく憂鬱なんょ。。


人間誰しも気分の浮き沈みはある訳で、その時はあまり気にせずに居た。


まぁ、そんな時もあるょね!今度どっか遠出でもしよか!


明るい話題へ持っていこうとそう返事をした。


それからだった、彼女の憂鬱な気分は日を追う事に強く、そして自制の効かないものへとなって行った。


なんか、何もしたくない。憂鬱でいかんのょ。。


なんで生きとるんやろか。


こういったネガティブな発言が多くなっていった。

ォレはその都度、明るくなる様に色々声をかけた。

そして、次に変化が訪れたのは翌月の交際7ヶ月の時だった。

その頃丁度有紗は務めていた老人ホームを退職し別の施設へ転職していた。


なんか分からんけど、不安でいかんのょ。

しょーちゃんが居なくなりそうとか、他にも色々。自分は馬鹿やしアホやし、先がない。不安でいっぱいなんょ。




不安




彼女の口から不安の文字がよく出るようになっていった、それと同時に明るい話題も少なくなって行った。



大丈夫ょ!ちゃんとおるょ!どこにもいかんけん。


そう何度も説得した。


分かっとる、でも不安なんょ。最近不安過ぎて何が不安なんかも分からんぐらいなんょ。。


彼女を得体の知れない不安が毎日襲っていた。

目に見えない恐怖と不安にさいなまれていたのだ。


翌月。

ここで大きな変化が訪れる。






死にたい。





彼女はそう口走った。



なんで??死ぬことなんかないやん。なんで死なないかんのよ。


心配もあるし、何より本当に死んだらどうしよう。と言う思いから何度も死ぬ必要ない!と繰り返し声をかけた。



もう生きとる価値ないし、生きとったってなんもいい事なんかないし、しんどい事ばっかりょ。死なないかん。。


ゥチは馬鹿やしアホやし、死んだ方がいぃ。他のみんなも思っとるんよ。。


死ぬ以外方法ないのに。。



何度も声をかけたが、彼女の耳には届かないようなもどかしさからか、有紗が死にたいと言ってから、止めるが分かって貰えず喧嘩になっていく事が多くなった。


そんな日々が続いたある日、翔一は同僚のナースに相談する事にした。

翔一の同僚のナースは元々精神病院で勤務していて精神科については博識だった。


最近さ、彼女が死にたいって言うんよ。でも、死んだらいかん!て言うしか出来んくてね。。どうしたらいぃんか分からん。


困った翔一をみてナースは確信に充ちた表情で答える。


それ、絶対うつ病やけん!



うつ病?


そのままほっといたら自殺とかにもなりかねんよ!早めに病院いき!!


翔一はすぐ病院を探した。ちょうど良い距離にあった心療内科を見つけ予約した。


もともと病院嫌いで、しかも説明したりするのが苦手な有紗を説得するのは大変だった。


嫌よ!そんなとこ行ったら本当に頭がおかしなってしまう!


大丈夫ゃけん。ちゃんと一緒に診察室入るし、ォレが説明するから!


翔一が病状をドクターに説明すると言う条件で渋々OKした有紗を連れて病院へ向かった。


蝉が鳴く真夏だった。

うだるような暑さの中クーラーのかかった待ち合い室で順番を待つ。

有紗は緊張からか翔一の手を握って離さずにいた。


呼び出しがかかり、診察室へ入る。


憂鬱だ。と言い始めてから死にたいに至るまでの経緯を説明した。


うーん、症状を聞く限りでは間違いなくうつ病ですね。

抗うつ薬と不安を和らげるとんぷくをお出ししておきますので続けてみて下さい。


薬を処方してもらい、2人は帰路に着いた。


ゥチこんな薬飲みたくない。。


道中の車内で有紗がグズる


でも、これ飲んだらまた明るくなって毎日が楽になるよ!絶対飲んだ方がいぃけん。


ぅーん。しょーちゃんが飲ませてくれたらいいょ!


はいはい。


その日の夕方、服薬した。


えへへー、噛んでやった!笑


その日は少し調子が良く、薬を口に入れる翔一の手を噛むなど冗談もできるぐらいだ。


しかし、この服薬が次なる恐怖を招くことになるとは思いもしなかった。

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