第33話 菜っ葉②
「それで一袋置いて帰ってきたんですか?鈴木さん。」
昼休み。いつもの屋上で昨日あった野菜売りの少女の話をした。3つ分のお金を持って無いことを竜二という男に話すと散々文句を言われた挙句に1つ返せと言われたので……返した。
竜二はその子の頭を叩いて、そのまま連れ去って行った。
「戸籍上、その竜二って男はその子の父親ではないですね。父親欄は空白の母子家庭なので、ソレは内縁関係なのでしょう。学校から児童相談所に何度か通報が行ってますね。いわゆるDV、虐待と……未成年への強制的な労働、それと……裏で売春の強要も。どちらにしてもクズです。何で始末しなかったんですか?鈴木さん。」
ハニワはわたしを責めているのだろうか?お門違いも甚だしいのだが。
「売春?中学生くらいだよ!?」
「まぁ、小中学生を餌食にした性犯罪は年々増加してますから、さほど珍しくもありません。許されるものではありませんが。」
そ、そーなんだ。いや、そういう経験は無いので内心バクバクしていた!!
「鈴木さんは経験無いんですよね。刺激強かったですか?」
ハニワの奴、エスパーか?悔しいけどその通りだ。
「アンタはヤッたことあるっての?」
「はい。特定の相手ではないですけど。今度パーティーに来ますか?」
何を言っているんだコイツは!?!?
「冗談です。」
「はぁ!?」
見下すような表情を向けるハニワ。本当に理解不能だよ。屋上に弁当をぶちまけてわたしは教室に戻った。
◇◇◇
「ちょっとアンタ!昨日買ったの雑草だったんだけど!!」
わたしは昨日の場所で野菜売りの少女に文句を付けた。昨日帰宅後に野菜2袋を母親に渡すと、中身は雑草ばかりで食べられる草なんて無かった。当然こっぴどく怒られた。
「あの……ちゃんとした菜っ葉です。……その、言いがかりはやめてください。」
純粋な子だと思っていたが、そんな返しが来るとは思わなかった。これもあの竜二ってクズが教えたんだろう。
「アンタ、そんなんでいいの?アイツみたいなクズになりたいの!?」
わたしはその子の両肩を掴んで大きな声で言った。
「うるさい!うるさい!!何にも知らないくせにっ。」
その子はわたしの顔をグーで殴りつける。後ろに仰け反るわたし。
「痛った。そうやって生きていくしかないんだね。」
少女は大声で泣きじゃくり、橋から身を投げた!!わたしはまさか身投げをするとは思わなかった。そこまでやるなんて……思わなかった。
「またテメェか!おい、幸子はどうした?」
そういえば幸子だっけ、名前。どんな気持ちで幸子って名付けたんだろう、母親は。
「いま橋から飛び降りたよ。辛かったんだろうね。」
「んだと!?テメェ助けなかったのかよ?見殺しにしたのか!?責任とれや、コラッ!!!」
わたしにはクズの掃除しかできなかった……。
鈴木の日常は良くないことでいっぱい? 古土師 弥生 @hexafool
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。鈴木の日常は良くないことでいっぱい?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます