第5話
再テスト当日、月曜日。放課後。再テストを受けていた。
(あれ?わかる……。ここも、ここも、ここも!)
佳孝は問題をどんどん解いていった。
そして、用紙を先生に渡す。
採点が終わって解答用紙を渡された。
「小高君、おめでとう。合格です」
数秒間呆然としていたが我に返り、
「よっしゃあああ!」
と叫ぶと一目散に教室を出ていった。
「美嘉!」
「あ、小高君。再テストどうだった?」
「見てくれよ!」
付き出した解答用紙。
『六十七点』の赤い文字が躍っている。
「と、いうことは……?」
「合格だ!ありがとう、本当に。助かった」
「いいよいいよ。私も復習になったから丁度よかったし」
美嘉のおかげで補講を回避出来た佳孝は、美嘉を見直した。
「美嘉ってさ――」
「……なあ、止めようぜ」
「は?どうしたんだよ」
「別に?飽きただけだ」
嫌がらせをしなくなった。
「お前、なんかおかしいぞ?もしかして美嘉のこと好きとか!?」
「え、いやいや、何もないって!」
「ふーん……?」
男友達からは訝られたが、何とか誤魔化した。
◆◆◆
テストの一週間後。つまり、七月。
佳孝はまたベッドの上で暴れていた。バタバタと大きな音を立てているものの、鷹廣はデートでいないの。よって文句を言ってくる人はいない。だがそれは、相談相手もいないということだ。
――お前もしかして美嘉のこと好きとか!?
頭の中で男友達の言葉が思い出される。
もしかすると、いや、もしかしなくても。
(俺、美嘉のこと好きなんだ……)
自覚してしまうとどうしようもない。アピールするために夏祭りに誘おうと思ったのだ。だが経験がないのでどうやって誘っていいかわからない。
「んあ~~~~!!」
と、そのとき。
「ただいま~」
「鷹にいナイスタイミング!」
鷹廣が帰ってきた。すぐさま飛んでいく。
「鷹にい、俺、来週の夏祭りに美嘉のこと誘いたいんだ!」
「いきなりどうした?最初から説明してくれ」
「美嘉に勉強教えてもらって、なんか、優しくて、わかりやすくて、それと……思ってたより可愛くて、えーと」
「要するに、美嘉ちゃんが好きになったってことか?」
眉間にシワを寄せつつなんとかまとめる鷹廣。
「そっ……れは、そうなんだけど」
「だから一緒に夏祭りに行きたいと?」
こくん、と頷く佳孝。
「簡単だろう?『勉強教えてもらったお礼におごる』じゃ駄目なのか?」
「あっ……!ダメじゃない!めちゃくちゃいい!今から電話掛ける!サンキュー!!」
佳孝はバタバタと足音を立てながら自室に戻っていった。
電話を掛ける。しばらく呼び出し音が鳴っていたが
『もしもし?』
と美嘉の声がした。それだけで心拍数が上がる。
「夏祭り行かねぇ?テストのときのお礼だ、奢らせてよ!」
というと、
『夏祭り……?うん、わかった。来週だよね?』
と言ってくれた。
その後待ち合わせの場所を決め、時間を決めた。
不意に佳孝が鏡を見ると頬の緩みきった自分が映っていた。
(だっ、ダメだ、顔が……)
それだけ楽しみだということだ。
狼と猫 雪 ノ 猫 @yukinoneko
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