分析篇

『ソードアート・オンライン1 アインクラッド 』を三幕構成で分析する(ネタバレあり)

 この「分析篇」では主に日本の小説作品を、本連載で解説してきたテクニックやツールを使いながら分析していきます。この連載では「ストーリーには普遍的な『型』がある」ことを繰り返し述べてきましたが、多くの読者を獲得したヒット作品にも果たしてその「型」があるのかどうか、そして読者の心を掴むためにどのようなテクニックが駆使されているのかを確認してみたいと思います。


 分析ポイントは以下の4つです。


①物語の構成

②キャラクター造形

③作品のプレミス

④書き出し


 今回は「①物語の構成」について解説し、②~④については次回とさせていただきます。


 第1回目に分析対象とする作品はこちらです。


川原礫=著『ソードアート・オンライン1 アインクラッド 』(KADOKAWA)


【作品紹介】

「これは、ゲームであっても遊びではない」

クリアするまで脱出不可能、ゲームオーバーは本当の“死”を意味する──。謎の次世代MMO『ソードアート・オンライン(SAO)』の“真実”を知らずログインした約一万人のユーザーと共に、その過酷なデスバトルは幕を開けた。SAOに参加した一人である主人公・キリトは、いち早くこのMMOの“真実”を受け入れる。そして、ゲームの舞台となる巨大浮遊城『アインクラッド』で、パーティを組まないソロプレイヤーとして頭角をあらわしていった。クリア条件である最上階層到達を目指し、熾烈な冒険(クエスト)を単独で続けるキリトだったが、レイピアの名手・女流剣士アスナの強引な誘いによって彼女とコンビを組むことになってしまう。その出会いは、キリトに運命とも呼べる契機をもたらし……。果たして、キリトはこのゲームから抜け出すことができるのか。 第15回電撃小説大賞<大賞>受賞作『アクセル・ワールド』の著者・川原礫!

(出版社HPより)


 なお、以下の分析では作品の結末について直接的に言及することになりますので(いわゆるネタバレ)、その点ご了承ください。


 では、早速「①物語の構成」について見てみましょう。

 


①物語の構成


 本連載の「物語の構成篇」では、ハリウッド式の「三幕構成」理論をベースにした物語構成用のテンプレートを紹介・解説してきました。簡単に振り返っておきます。


 すべてのストーリーには「はじまり」「真ん中」「終わり」があります。それぞれを一幕とすると、ストーリーには「発端(=はじまり)」「中盤(=真ん中)」「結末(=終わり)」の三幕があることになります。シド・フィールドは著書『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術』の中で、各幕の適切なについて次のようにまとめました。


「発端」=第一幕=状況設定=25%

「中盤」=第二幕=葛藤・対立=50%

「結末」=第三幕=解決=25%



 また、ストーリーにはいくつかの重要なポイントや転換点(例:「ミッドポイント」や「プロットポイント」)があります。K.M.ワイランドは、著書『ストラクチャーから書く小説再入門 個性は「型」にはめればより生きる』で、シド・フィールドの理論を発展させ、それらを「10個の要素」にまとめました。

 さきほどの三幕構成の図に重ね合わせると次のようになります。


 このあたりのことは過去の「多すぎず、少なすぎず。覚えるのは全部で10個だけ」回で解説していますので、ざっとおさらいしておくとよいかもしれません。

https://kakuyomu.jp/works/1177354055193794270/episodes/16816452220800021278


 ここからは『ストラクチャーから書く小説再入門』を参考にしながら、上の図を使って作品の構造について分析していきたいと思います。


『ソードアート・オンライン1 アインクラッド 』は、10ページ目から本文がスタートし、348ページで物語が終わります。つまり分量としては339ページの物語ということになります。

 全体は26のパート(プロローグ+25)で構成されています。各パートの分量をカウントし図示すると次のようになります。


 もし、この作品がいわゆるハリウッド的な三幕構成(それぞれの幕の構成比率が1:2:1)になっているのであれば、第1幕と第2幕のつなぎ目(プロットポイント①)は、およそパート5か6あたり、そして第2幕と第3幕のつなぎ目(プロットポイント②)は、およそパート18か19あたりに来るはずです…が、実際はどうなっているのでしょうか?

 ここからは、上で紹介した三幕構成で重要な「10個の要素」が物語のどの地点でやってくるのかに注目しながら、それぞれのパートについて見ていくことにします。


 繰り返しになりますが、以下の分析では物語の結末に直接的に言及している(ネタバレあり)ので、その点につきご了承ください。




[プロローグ p.10-11]

「無限の蒼穹そうきゅうに浮かぶ巨大な石と鉄の城。

それがこの世界のすべてだ。」

 という文章ではじまるプロローグ。この作品の世界観を巧みに表現しています。


[パート1 p.12-17]

・登場人物:キリト

・時間:?

・場所:薄暗い迷宮の通路

・アクション:《リザードマンロード》の戦闘→勝利


■解説

 主人公キリトが「トカゲの頭と尻尾を持った半人半獣の怪物」《リザードマンロード》と戦っているシーンが描かれます。読者は「HPバー」「AIプログラム」「ソードスキル」などのワードに触れることで、この作品の舞台がゲームの世界であることを理解します。

 このパート1は、三幕構成で重要な「10個の要素」のうちひとつ目の「掴み(フック)」に該当すると考えられます。

 よいフックの条件として『ストラクチャーから書く小説再入門』には下記のポイントが挙げられています。


・物語の始まりより前から書き始めていない。

・オープニングで人物が登場する。それが主人公なら、なおよい。

・対立、摩擦、ぶつかり合いで幕が開く。

・動きのある描写で始める。

・舞台設定を伝える。

・「場面設定」の映像イメージに読者をいざなう。

・作品全体のトーンが伝わる。


 本作では、冒頭から主人公が登場し、しかもアクション(戦闘)シーンからスタートします。同時に、ゲームの中の世界という舞台設定を巧みに描写しています。読者は、パート1を読むだけでこの作品世界に夢中になるはずです。


[パート2 p.18-38]

・登場人物:キリト、クライン

・時間:夕暮れ(2年前)

・場所:草原

・アクション:キリトがクラインを引率レクチャーする/ゲーム世界からログアウトしようとするができない


■解説

 2年前=「全てが終わり、そして始まった、あの瞬間」が描かれます。ここがVRMMORPG仮想大規模オンラインロールプレイングゲームの《ソートアート・オンライン》の作品世界の中であること、そしてゲームの中に「完全フルダイブ」するためには「ナーヴギア」というハード(ヘッドギア)を装着する必要があることが説明されます。

 そして、クラインという脇役が登場し、キリトからゲーム内世界のあれこれについてレクチャーを受けます。この描写からキリトはある程度ゲームをやり込んでいること、クラインは初心者であることが分かります。

 クラインから「他のゲームで知り合いだった奴ら」とフレンド登録しないか、と誘われたキリトは「え……うーん」と歯切れの悪い返事をします。この態度からキリトは一人ソロでの活動を希望していることが分かります。

 その後、現実世界へ戻るためにクラインがゲームからログアウトしようとしたところ、ログアウトボタンがなくなっていることが判明します。


 このパート2は、「10個の要素」の「インサイティング・イベント」に該当します。

 インサイティング・イベントとは「物語を誘発する事件」という意味で、第一幕で必ず発生させるべき(=第二幕までに発生させる)とされています。本作では「ゲーム世界からログアウトできないこと」が「事件」に相当します。このインサイティング・イベントによってストーリーが本格的に動き出します。『ソードアート・オンライン1 アインクラッド 』では、早々にインサイティング・イベントが発生していることが分かります。


[パート3 p.39-66]

・登場人物:キリト、クライン、茅場晶彦

・時間:夕暮れ(2年前)

・場所:はじまりの街

・アクション:キリトとクラインは、突然「はじまりの街」に転移テレポートさせられる/茅場晶彦が登場し、ゲームをクリアしない限り、現実世界に戻ることができないことをプレイヤーたちに伝える。


■解説

 ゲームプレーヤー全員(1万人)がテレポートによって「はじまりの街」に集められると、上空に《ソートアート・オンライン》をつくった天才ゲームデザイナー茅場晶彦が現れます。そしてプレーヤーにログアウトボタンを消去したこと、現実世界で「ナーヴギア」を無理やり取り外すと、高出力マイクロウェーブが脳を破壊し、死んでしまうこと、浮遊城「アインクラッド」最上部の第百層までたどり着き、最終ボスを倒す=ゲームをクリアすれば生き残ったプレーヤー全員が無事にログアウトできること、などが伝えられます。

 キリトを含む全員がゲームの中に閉じ込められてしまいました――。


 パート3は「10個の要素」の「キー・イベント」に該当します。キー・イベントとは、主人公を事件に巻き込む出来事で、インサイティング・イベントの後に発生します。インサイティング・イベントとキー・イベントの違いを理解するのは、なかなか難しいと思うのですが、次の例をイメージするとわかりやすいかもしれません。


例えば、探偵モノのストーリーの場合(主人公は探偵)

・インサイティング・イベント…どこかで殺人事件が発生する

・キー・イベント…探偵に事件解決の依頼がくる(主人公がその事件に巻き込まれる)


『ソードアート・オンライン1 アインクラッド 』の場合、キリトがログアウトできない状況(=ゲーム世界から抜け出すことができない状況)に巻き込まれたことが確定的になったのがこのパート3といえます。


[パート4 p.67-76]

・登場人物:―

・時間:―

・場所:―

・アクション:―


■解説

 キー・イベント発生(=2年前)から現在までの状況がキリトの口から説明されるパートです。アクションなどはなく、以下のような状況が淡々と語られます。

 ゲーム内に閉じ込められたプレーヤーは、《軍》という巨大集団や《ギルド》という小軍団、ソロプレーヤーなどのいくつかのグループに分かれたこと(キリトはソロで活動)。この2年間で残るフロアは26、生存プレーヤーは6,000人まで減ったこと。


[パート5 p77-96]

・登場人物:キリト、アスナ、エギル

・時間:夕暮れ

・場所:森→アルゲードの街

・アクション:レアモンスターとの遭遇&打倒/アスナとの出会い


■解説

 パート2~4は過去の振り返りでしたが、このパート5はパート1の直後の話です。時間軸が現在に戻りました。《リザードマンロード》との戦闘を終えたキリトは森の中で超レアモンスターに遭遇し、最高級食材ラグー・ラビットの肉を入手します。アルゲードの街にテレポートしたキリトは、馴染みの買い取り屋エギルのところへ行き、入手したばかりのレアアイテムを売ろうとします。

 と、そこへ登場したのが、本作のヒロイン役、アスナです。アスナが美人であること、《血盟騎士団》という最強ギルドの副団長であること、つまり美貌と剣技の両面においてゲーム内で頂点に立つ存在であることが語られます。その後、料理スキルをコンプリートしているアスナが、キリトが入手したレア食材を料理し、一緒に食べるという流れになり、キリトはアスナの家(部屋)へと向かうことになります。


[パート6 p97-111]

・登場人物:キリト、アスナ

・時間:夜

・場所:アスナの部屋(セルムブルグ)

・アクション:アスナの部屋で食事を食べる/アスナとコンビを組むことになる


■解説

 キリトはアスナの部屋に移動し、レアアイテムを使った食事を食べます。その後、キリトは「本当に帰りたいと思っているんだろうか……あの世界に……?」と自問します。いっぽう、アスナは現実世界でやり残したことがあるので帰りたいと口にします。

 また、ギルドに入る気はないか、アスナに聞かれたキリトは集団行動はしたくないと答えます。その答えを受け、アスナと二人だけのコンビを組むのは、どうかと提案されたキリトは葛藤しつつもその提案を受け入れます。

 ここでは、キリトの二つの葛藤が描かれます。ひとつは、本当に現実世界に帰りたいのかどうか、そしてもうひとつはアスナとコンビを組むべきかどうか(ソロでの行動に終止符をうつべきかどうか)。

 このシーン(アスナとコンビを組むシーン)は「10個の要素」の「プロットポイント①」に該当すると考えられます。

『ストラクチャーから書く小説再入門』では、プロットポイント①の特徴として以下の4つを挙げています。


1.物語開始から全体の25%を経過したあたりで起きる。

2.状況を一変する出来事が起き、主人公の転機となる。

3.大抵、物語が後戻りできないほど変わるため、人物を取り巻く環境(設定や脇役の顔ぶれ)も大きく変わる。

4.主人公は大きな影響を受け、強く反応する。


 アスナの「なら、しばらくわたしとコンビ組みなさい」というセリフは108ページで発生します(全体の28.4%地点)。きっちり25%ではありませんが、近い箇所で発生しています。

 この物語は「ゲームからログアウトして現実世界に戻ることができるかどうか」がメインのテーマのようにみえるのですが、実は「キリトと他者との関わりの物語」であるともいえます。現実世界のキリトは人付き合いが得意ではなく、ゲームの世界でもずっとソロ活動を続けています(その理由も後に明らかになります)。その状況がアスナの提案でがらりと変わることになります。そして、キリトはその提案を受け入れ、これ以後、ソロではなく「他者」とかかわりながら生きていくことになります。それほどシリアスなシーンではないのですが、キリトの今後の運命を変えた重要な場面だと考えられます。


[パート7 p112-127]

・登場人物:キリト、アスナ、クラディール

・時間:午前9時

・場所:主街区ゲート広場

・アクション:キリトとグラディールの対決


■解説

 パート7から第二幕に入ります。第二幕では「葛藤・対立」が描かれ、主人公の行く手にさまざまな障害が立ちふさがります。最初の障害となるのが《ギルド血盟騎士団》でアスナの護衛役を勤めているクラディールです。クラディールはアスナが勝手にキリトとコンビを組んだことを快く思っておらず、コンビを組みたければ、自分と戦って勝利してからにするべきだ、と主張します。キリトはクラディールとの決闘を受け入れ、見事に勝利します。


[パート8 p128-138]

・登場人物:キリト、アスナ

・時間:午前

・場所:森の中

・アクション:超巨大ギルド《軍》との遭遇→身を隠す


■解説

 迷宮区へ向かう森の中で、二人は超巨大ギルド《軍》に遭遇します。《軍》は決して敵対的な存在ではない(警察的な活動もしていたりもする)のですが、活動が少し過激であり独善的でもあるということから、一部では恐れられている存在です。二人は厄介に巻き込まれないように身を隠します。これも主人公の前に立ちふさがる障害のひとつと考えられます。


[パート9 p139-146]

・登場人物:キリト、アスナ

・時間:午前~正午あたり

・場所:第74層迷宮区最上部

・アクション:デモニッシュ・サーバントとの戦闘/ボスとの遭遇→逃亡


■解説

 迷宮区最上部での戦闘シーンが描かれます。キリトとアスナは《スイッチ》という高度な連携テクニックを駆使して敵をやっつけます。キリトはソロでの戦闘とはまた違った充実感を感じます。迷宮区をさらに奥に進んでいき、この層のボスモンスターの部屋へとたどり着きます。そこで見たボスモンスターのあまりの恐ろしさに二人は「長い回廊を疾風のごとく駆け抜け、遁走」することになります。

 クラディール、《軍》、ザコモンスター、ボスモンスター、と主人公の前に次々に障害が立ちふさがる典型的な第二幕前半となっています。


[パート10 p147-160]

・登場人物:キリト、アスナ、クライン

・時間:3時

・場所:第74層迷宮区安全エリア

・アクション:安全エリアにたどり着き昼食/クラインとの再会/《軍》からの要請


■解説

 ボスモンスターから逃亡した二人は安全エリアになんとかたどり着き、遅めの昼食を食べることになり、アスナが用意した絶品料理がふるまわれます。そこに冒頭で登場したクラインが現れ、再会を喜びます。クラインはソロ活動にこだわっていたキリトがアスナとコンビを組んでいることに驚きます。アスナが用意した料理に喜び、クラインと軽妙なやりとりをするキリトの様子から、他人に対してキリトが次第に心を開いていく様子がうかがえます。

 そこに、《軍》のメンバーが現れ、迷宮のマッピングデータを提供するよう要求されます。ダンジョンをマッピングするのは大変な作業です。にもかかわらず、それを無償で提供しろというのは、ずいぶんと勝手な言い分なのですが、キリトは不要な争いを避けるべくデータを提供します。《軍》はそのマッピングデータを頼りにボスを討伐しに行くことになります。ボスモンスターの凶暴さを知っているキリトは《軍》がボスを討伐できるはずはないと判断し、手助けのために後を追うことにします。

 ソロ活動にこだわって、他人とのかかわりを避けてきたキリトが《軍》を助けに行くという決断をしたことで、キリトの態度が少しずつ変わってきていることが分かります。


[パート11 p161-170]

・登場人物:キリト、アスナ、クライン

・時間:?

・場所:第74層迷宮区ボスモンスターの部屋

・アクション:《軍》の後を追ってボスの部屋に行く/ボスとの戦闘→危機的な状況をエクストラスキルを発動して切り抜ける


■解説

 そして《軍》に遅れて、ボスの部屋に到着したキリトたちは「地獄絵図」を見ることになります。《軍》が壊滅的な状況になっており、このままではメンバー全滅という事態になりかねません。キリト、アスナ、クラインらは、協力してボスモンスターを倒そうとするのですが、あまりの強さにまったく歯が立ちません。もはやこれまでか、というタイミングでキリトが隠し技(=エクストラスキル)を発動して、辛くも戦闘に勝利します。キリトはそのまま意識を失います。

 このパートは「10個の要素」の「ピンチポイント①」に該当すると考えられます。

 第二幕前半の終わり頃、主人公は「ピンチポイント①」に遭遇します。敵対者が腕を振りかざし、強大な力を見せつけてくるところです(主人公も負けじと対抗するでしょう)。

――『ストラクチャーから書く小説再入門 個性は「型」にはめればより生きる』

 このシーンで、キリトは圧倒的な敵対者の力を見せつけられることになります。いまキリトたちがいるのは浮遊城「アインクラッド」の第74層ですが、この層のボスモンスターでさえも多くの犠牲者を出しながら何とか倒せるような状況です。最上層になればなるほど敵が強くなるこのゲームをクリアすることがいかに難しいかをキリトたちは痛感することになります。


[パート12 p171-190]

・登場人物:キリト、アスナ、ヒースクリフ

・時間:ボス戦→翌日

・場所:ボスの部屋→第55層主街区グランザム市

・アクション:アスナとのパーティー継続を受け入れる/ヒースクリフとの対決を受け入れる/キリトがアスナといられればそれでいい、と発言する


■解説

 ボス戦を終え、気を失っていたキリトが意識を取り戻します。クラインは「その……、キリトよ。おめぇがよ、軍の連中を助けに飛び込んでいった時な……」「オレぁ……なんつうか、嬉しかったよ」と発言。また、アスナはギルドを一時脱退してキリトとのパーティを継続すると告げます。

 それを聞いたキリトは「俺は――ソロプレイヤーのキリトは、この世界で生き残るために、他のプレイヤー全員を切り捨てた人間だ。二年前、すべてが始まったあの日に、たった一人の友人に背を向け、見捨てて立ち去った卑怯者だ。そんな俺に、仲間を――ましてやそれ以上の存在を求める資格などない」と考えますが、アスナの言葉を受け入れることにします。なぜキリトがソロ活動にこだわっているのか、徐々に明らかになってきました。

 しかし血盟騎士団の団長ヒースクリフは、アスナがギルドを一時脱退することを認めようとしません。団長はキリトとの対決を提案します。もしキリトが勝利すれば、アスナの一時脱退を認めますが、もし負ければキリトがギルドに加入しなければなりません。ヒースクリフは最強の男、聖騎士などと称され、圧倒的な強さをもつ人物です。キリトはその提案を受けます。

 ボス戦という大きな困難を乗り越えたすぐ直後に、またヒースクリフという巨大な(そして最大の)障害が目の前に現れることになりました。


 パート12のキリトの台詞「その、俺は、あ……アスナといられれば、それでいいんだ」の場面は、「10個の要素」の「ミッドポイント」に該当すると考えられます。

 ミッドポイントの役割は、中盤をぐっと引き締めること。それまで描いてきた人物のリアクションを締めくくり、人物に行動をスタートさせて第三幕に導きます。プロットに大きな影響を与えますから、二度目の大転機と言ってもいいでしょう。

(中略)

 ミッドポイントで、人物は状況に反応するだけの状態から脱却します。この先サバイバル(精神面、または肉体面 ―あるいはその両方)するには、守りから攻めに転じることが必要です。

――『ストラクチャーから書く小説再入門 個性は「型」にはめればより生きる』

 ミッドポイントは物語の中央に置かれます。上のキリトの台詞は189ページ(全体の51.7%地点)で発生しており、ほぼ中央であるといえます。ソロプレイヤーとして生きると決めていたキリトが、アスナと一緒にいたいという自分の気持ちを正直に口にした(そしてそのキリトの決意をアスナも受け入れた)重要な場面です。いままではアスナの提案を受け入れるだけだったキリトですが、このシーンでは自分の意志でアスナと行動を共にすることを決意しました(リアクションからアクションへ)。


[パート13 p191-203]

・登場人物:キリト、アスナ、ヒースクリフ

・時間:

・場所:第75層(巨大コロシアム)

・アクション:ヒースクリフとの戦い→キリトが負ける


■解説

 アスナのギルド脱退をかけて、ヒースクリフとの戦いに挑むキリトですが、圧倒的な強さの前にあえなく敗れてしまいます。戦いのさなか、キリトは「世界がブレた」ような不思議な感覚に気づきます。この気づきがクライマックスに向けての伏線になっています。


[パート14 p204-211]

・登場人物:キリト、アスナ

・時間:ヒースクリフとの戦いの2日後

・場所:ギルド本部

・アクション:約束通りキリトがギルドに加わる/なぜキリトが他人を避けるようになったのかが語られる


■解説

 ヒースクリフとの約束通り、キリトがギルド《血盟騎士団》の一員に加わることになります。そして、アスナからなぜ人を避けるのか、と尋ねられたキリトは、ついにその理由を語ることになります。

 1年前、キリトは自分の本当のレベルを隠したまま(本当は強いのにそれを隠したまま)とあるギルドに所属していました。リーダーはケイタで、キリトを含む合計6人の小さなギルドでした。ある日ケイタを除く5人で迷宮に潜った際に、罠にひっかかってしまったメンバーはパニックになり全滅、キリトだけ無事にケイタのもとに戻ってきます。なぜ一人だけ戻ってくることができたのか、と問われたキリトは自分の本当のレベル(そしてベータテスト出身=プレイ時間が長い熟練者)ことを正直に告白します。ケイタは、その後自殺してしまいました(おそらくはキリトのことを呪ったまま)。ケイタやギルドのメンバーが死んでしまったのは自分のせいだ、という想いを抱えながらこれまでキリトはゲーム世界を生きてきたことが分かります。

 キリトの過去を知ったアスナは「わたしは死なないよ」「だって、わたしは……わたしは、君を守るほうだもん」と言います。その言葉を聞いて、キリトは自分がしてしまった過ちを償うことは永遠にできないかもしれないが、目の前のアスナのことを守ろうと決意します。

 いわゆる「バックストーリー」が語られる場面です。バックストーリーについては「『立体的』なキャラクターのつくり方」回をご参照ください。

https://kakuyomu.jp/works/1177354055193794270/episodes/16816452218583690567

ここでは簡単に言葉の定義だけ紹介しておきます。


バックストーリー … ストーリーが始まる前に本人に起きたすべての出来事。今の人物を形成する過去。


 物語がスタートしてから読者がずっと目にしてきたキリトの態度や行動の背後にあるものがついに明かされました。


[パート15 p212-233]

・登場人物:キリト、アスナ、クラディール

・時間:

・場所:第55層迷宮区

・アクション:ギルド団員4人組で訓練をする/クラディールに毒を盛られる/アスナが助けに来る


■解説

 ギルドに加わったキリトは、訓練のために4人組のパーティを組むことになりますが、その中にクラディールがいることがわかります(アスナはパーティには入っていない)。クラディールは、かつてアスナの護衛をつとめていましたが、キリトとの戦いに敗れてしまい、その役を解かれていました。

 クラディールはすっかり心を入れ替えているように見えたのですが、実は食料に麻痺毒を混入させ、キリト暗殺を目論んでいたのでした。体の自由が利かないキリトにクラディールがとどめを刺そうとしたその瞬間、アスナが救出にきます。形勢逆転となり今度はアスナに仕留められそうなになったクラディールは、土下座して非礼を詫びます。アスナはこれまでゲーム世界で人を殺したことはなく、とどめを刺すことを逡巡してしまいます。その隙を狙ったクラディールはアスナに再び襲い掛かりますが、渾身の力をふりしぼったキリトの反撃にあい、殺されてしまいます。

 ミッドポイントを経たあとの第二幕後半でもこのような障害(=「葛藤・対立」)が描かれます。キリトはアスナを守るために積極的に行動します。「俺の命は君のものだ、アスナ。だから君のために使う。最後の一瞬まで一緒にいる」という言葉から、キリトの覚悟がうかがえます。


[パート16 p234-248]

・登場人物:キリト、アスナ

・時間:夕暮れ→夜

・場所:アスナの部屋

・アクション:二人一緒に現実世界に戻ることをお互い誓いあう/アスナに対して「今夜は、一緒にいたい……」発言/結婚する


■解説

 クラディールの裏切り行為によってギルドへの不信感を募らせたアスナとキリトはギルド脱退を願い、団長にも受け入れられます。キリトはアスナに「今夜は、一緒にいたい……」と告げ、二人はアスナの部屋で一夜を過ごすことになります。

 アスナを守り抜くことを改めて決意したキリトは、アスナに結婚を申し込みます(アスナは承諾)。

 第二幕後半の行動は、前半でのリアクションの写し鏡となるでしょう。よく考えれば、アクションもリアクションも同じようなもの。ただ、前半での人物は、身にふりかかる出来事に反応するばかりだったかもしれません。ミッドポイント以降の第二幕後半では、人物に内面の強さが生まれます。自力で運命を切り開くのは困難でも、その困難に対して何かしようと試みます。

――『ストラクチャーから書く小説再入門 個性は「型」にはめればより生きる』

 第二幕後半では、主人公の変化や成長が描かれます。ミッドポイント以前の主人公とは違う姿を見せる必要があります。ソロのままがよいと思っていたキリトが、ずっとアスナと一緒にいたい(=結婚したい)と明確に口にするシーンを見て、読者はキリトの変化や成長に気づくはずです。


[パート17 p249-252]

・登場人物:キリト、アスナ

・時間:

・場所:第22層

・アクション:新婚生活


■解説

 アインクラッドで最も人口の少ない第22層の森の中のログハウスで新婚生活を送る二人の姿が描かれます。


[パート18 p253-262]

・登場人物:キリト、アスナ、ニシダ

・時間:新婚生活から10日余り経過

・場所:第22層の湖

・アクション:釣り→ニシダとの出会い


■解説

 釣りに興じるキリトの前にニシダという老人が現れます。ヌシと呼ばれる巨大な魚を一緒に釣ろうと、提案されるキリト。ほのぼとした描写が続きます。これまでずっと戦いに明け暮れていたキリトとアスナが、ニシダたちとの出会いを通じ、日々を懸命に生きる普通の人々の存在を実感するシーンです。


[パート19 p263-280]

・登場人物:キリト、アスナ、ニシダ

・時間:ニシダとの出会いから3日経過

・場所:第22層の湖

・アクション:ニシダと「ヌシ」釣り/ヒースクリフからのボスモンスター攻略要請のメッセージが届く


■解説

 ほのぼの日常パートが継続して描かれます。幸せで平和な日常を描くことにより、これから突入する怒涛の第三幕とのギャップを生むことができます。

 パート19の終盤に、キリトとアスナの元にヒースクリフからのボスモンスター攻略要請のメッセージが届きます。幸せな新婚生活は2週間ほどで終わり、二人は再び戦場へと向かうことになります。

 ここで「10個の要素」の「プロットポイント②」が訪れます。日常から戦場へ、つまりヒースクリフからのメッセージを受け取った場面が「プロットポイント②」になると考えられます。

 プロットポイント②は第二幕と第三幕をつなぐ役割を持っています。そして物語全体の75%地点で発生します。ヒースクリフからのメッセージを受け取ったのが、274ページ(全体の76.1%地点)なので、三幕構成のセオリーどおりです。


[パート20 p281-288]

・登場人物:キリト、アスナ

・時間:

・場所:血盟騎士団本部

・アクション:ギルドに戻り「衝撃的な知らせ=偵察隊全滅」を知る/死ぬかもしれないがボス攻略に参加することを決意する


■解説

 2週間ぶりにギルド本部に戻ったキリトとアスナは、第75層の攻略のために派遣された偵察隊20名が全滅したことを知らされます。あまりに危険な攻略になることが予想されるため、キリトはボス戦攻略に加わらないようアスナにお願いをします。また、キリト自身も「死にたくない」と本心を口にします。

 第三幕で描かれるのは「究極の選択」です。

 生か死かの究極の選択が必要です。努力の甲斐なく、愛も希望も壊れていく。なぜかというと、まだ人物が心に蓋をしているからです。恐れの感情や疑念など、これまで見ないようにしてきたものがあったでしょう。最終決戦でそれを乗り越えなければ、未来には進めない。

 人物は、どこまで強くなれるでしょうか? 恐れを乗り越え、捨て身で敵に向かっていけば、物語はいよいよクライマックスです。私はこんなふうに生きたいんだ、こんな人間になりたいんだ――人物の新たな理想を行動で表現したものが、クライマックスでのアクションです。

――『ストラクチャーから書く小説再入門 個性は「型」にはめればより生きる』

 ボス攻略に加われば、死ぬかもしれません。文字通り「生か死か」の決断を迫られるキリトですが「だから……今は戦わなきゃいけないんだな……」と覚悟を決めます。


[パート21 p289-302]

・登場人物:キリト、アスナ、クライン、エギル、ヒースクリフ

・時間:

・場所:第75層迷宮区

・アクション:ギルドメンバー一行でボス討伐に向かう/大苦戦


■解説

 ギルドメンバーにクラインやエギルなども加わり、一行(合計30人)はボスのいる部屋へと向かいます。脇役(クライン、エギル)などが揃って登場するのは、クライマックスならではという感じです。

 いよいよ第75層のボスとの戦いです。ムカデ型のそのモンスターは圧倒的な強さでギルドメンバーを次々に瞬殺します。キリトとアスナは「完璧に同期した動き」でなんとかボスとの戦いを続けます。限界ぎりぎりの死闘ですが、キリトはアスナと「かつてないほどの一体感」を味わいます。


[パート22 p303-302]

・登場人物:キリト、アスナ、クライン、エギル、ヒースクリフ

・時間:ボス戦1時間経過

・場所:第75層迷宮区

・アクション:ボス戦に勝利/ヒースクリフ=茅場晶彦であることを見破る/茅場との対決/アスナが死ぬ


■解説

 戦闘開始から1時間を経て、ようやく勝利することができましたが、14人の犠牲を出してしまいました。激しい戦闘によって全員が疲労困憊し、床に伏す中、毅然と立っているヒースクリフの姿に違和感を覚えます。そして「その刹那、俺の全身を恐ろしいほどの戦慄が貫」き、キリトはヒースクリフこそがこの《ソートアート・オンライン》のゲームデザイナー茅場晶彦だったことを理解します。茅場は正体を見破ったことへの褒美として、1対1の勝負に勝てば全プレイヤーがログアウトできるようにする、と約束します。

 いよいよクライマックスです。ムカデ型のボスモンスターとの戦闘は実はクライマックスではなく(なので描写もかなりあっさりしています)、本当のクライマックスは、キリトVS茅場だったのです。この世界を創った当の本人(システムそのものに介入できる管理者)との戦いという圧倒的不利な状況にも関わらず、キリトはその挑戦を受けることを決意します。「必ず勝つ。勝ってこの世界を終わらせる」

 最後の戦いがスタートしました……が、キリトは劣勢となり、茅場にとどめを刺されそうになります。その瞬間、システム的麻痺状態で動けないはずのアスナが飛び込んできます。そのまま茅場の一撃を受けて、アスナのHPバーはゼロになってしいました……。

 このパート22と次の23は「10個の要素」の「クライマックス」です。

『ストラクチャーから書く小説再入門』には「第三幕は速いペースで展開せねばなりません。終盤のスペースが尽きてしまう前に、必要事項を全て書き切る必要があるからです」とありますが、まさに怒涛の展開です。

 ストーリーが中盤の終わりで転機を迎え、終盤に入るとアクションはどんどん激しくなります。ですから、第三幕全体がクライマックスと言えなくもありません。しかし、厳密には、第三幕の一部分。主人公と敵対者が対決する瞬間が真の「クライマックス」です。

(中略)

 クライマックスの位置は第三幕の終わり頃。全体で言うと、最後の10%ぐらいです。大抵の場合、クライマックスの終わりに来る「クライマックスの瞬間」はラストから二番目のシーン。それが終わったら、あとはラストシーンのみです(前述の例も、全てそうなっています)。語るべきことはクライマックスで出し尽くしてしまいます。ラストシーンは情緒的な余韻を見せるだけの存在です。

――『ストラクチャーから書く小説再入門 個性は「型」にはめればより生きる』

 茅場との対決シーンは318頁(全体の88.8%地点)からスタートしており「最後の10%」にクライマックスがある、というセオリー通りの構成になっています。


[パート23 p325-329]

・登場人物:キリト、ヒースクリフ

・時間:

・場所:第75層迷宮区

・アクション:茅場に勝利する


■解説

 茅場との戦いが終わります。瀕死のキリトはアスナが遺した細剣を茅場の胸に突き刺します。相討ちです。茅場のHPバーが消滅し「ゲームはクリアされました――ゲームはクリアされました――ゲームは……」というシステムの声が響きます。


[パート24 p330-341]

・登場人物:キリト、アスナ、茅場晶彦

・時間:

・場所:不思議な場所(ソードアート・オンライン内部のどこか)

・アクション:世界の消滅(巨城アインクラッドの消滅)


■解説

 気が付くと、キリトは不思議な場所にいます。振り向くとそこにはアスナの姿が。二人は眼下の浮遊城「アインクラッド」が崩壊していく姿を見ています。そして茅場も登場し、ゲーム世界が消滅すること、そして生き残った全プレイヤー6,147人のログアウトが完了したことが告げられます。

「……お別れだな」というキリトに対し、アスナは「ううん、お別れじゃないよ。わたしたちはひとつになって消えていく。だから、いつまでも一緒」と答えます。アスナを生きて現実世界に還すことができなかったキリトの目からは涙が溢れます。


[パート25 p342-348]

・登場人物:桐ケ谷和人(キリト)

・時間:

・場所:病院(現実世界)

・アクション:現実世界に戻ってくる/アスナを探しにいく


■解説

 目を覚ました桐ケ谷和人は、ここがもはやゲームの世界ではなく現実世界であることを認識します。待ち望んでいた現実世界への復帰ですが、戸惑いとわずかな喪失感を感じています。茅場との戦いで死んだはず(茅場と相討ちだったはず)の自分が現実世界に戻ることができたなら、アスナもきっと現実世界に戻ってきているに違いないと思った桐ケ谷和人は《ナーヴギア》を外し、ふらつく体で病室のドアに向かって歩き始めます――。

「アスナをもういちどこの腕に抱くまで俺の戦いは終わらない」


 ということで『ソードアート・オンライン1 アインクラッド 』は幕を閉じます。「10個の要素」のうち「解決」が描かれるのがこのパート25です。

「解決」はできるだけ短い方がよいでしょう。すでにストーリーは完結したも同然ですから、長く引きずると逆効果です。また、人物のその後を細かく説明しても読者をうんざりさせるだけです。サブプロットはできる限りクライマックス前までにオチをつけておきます。そうすれば、最後の「解決」で伝えることがすっきりまとまります。

(中略)

「解決」は登場人物の新たな門出でもあります。ストーリーの幕は閉じるが人物たちは生きていく、と伝えるのが「解決」の役割です。

――『ストラクチャーから書く小説再入門 個性は「型」にはめればより生きる』

 さて、本作の解決パートですべてが本当に解決したのでしょうか。桐ケ谷和人(キリト)自身の言葉にもあるように「アスナをもういちどこの腕に抱くまで俺の戦いは終わらない」のです。まさに「ストーリーの幕は閉じるが人物たちは生きていく」エンディングになっています。


 以上、長文になってしまいましたが、『ソードアート・オンライン1 アインクラッド 』の全体の構成を確認しました。

 三幕構成のテンプレートと今回分析した『ソードアート・オンライン1 アインクラッド 』の構成をまとめると次のようになります。

 さすがにぴったり重なるというわけにはいきませんでしたが、三幕構成で分析することが可能な作品だったのではないでしょうか。

 分析していて気づいたのですが、『ソードアート・オンライン1 アインクラッド 』には「10個の要素」のうち、「ピンチポイント②」が存在しません。

 第二幕後半が半分過ぎると(全体の約八分の五地点)第二のピンチポイントが訪れます。ピンチポイント①と同様、敵対者の力が直接的に、あるいは何らかの方法で表れ、主人公に脅威を与えます。

 ここでは最終決戦の前に、敵がいかに強いかを見せて危機感を盛り上げます。

――『ストラクチャーから書く小説再入門 個性は「型」にはめればより生きる』

 ピンチポイント②が存在しない代わりに、本作では第22層でのほのぼのとした新婚生活が描かれるパートが挿入されています。このパートを見せることで、クライマックス(死闘)とのギャップが生じ、より緊張度の高いクライマックスを描くことに成功しています。


 さて、長文になりましたが、これにて「①物語の構成」の分析を終わります。

 なお、今回の分析ツールとして使用した『ストラクチャーから書く小説再入門 個性は「型」にはめればより生きる』は、三幕構成を理解するためにうってつけの入門書ですので、ぜひみなさんも読んでみてください。


次回は『ソードアート・オンライン1 アインクラッド 』の


②キャラクター造形

③作品のログライン

④書き出し


につて分析してみたいと思います。


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