キャラクター篇
キャラクター造型に必要な5つの質問
最初に取り上げるトピックは「キャラクター」です。
・キャラクター
・プロット
すでに小説を書いたことがある人であれば(あるいは、これから書こうと思っていろいろとリサーチしている人であれば)、「キャラクター」と「プロット」が
たとえば『工学的ストーリー創作入門』という本にはこう書かれています。
ストーリーの本質を表す一語は何だろう。うまく表現するには複数の単語が要るが、最もパワフルで重要なものを一つだけ選んでみてほしい。
多くの人が「人物」を選ぶ。あるいは「プロット」だ。プロットと人物。そういうことだ。
――『工学的ストーリー創作入門 売れる物語を書くために必要な6つの要素』より
「はじめに」で、繰り返し「ストーリーの普遍的な型」についてお話ししてきたので、最初は「型」であることがよりイメージしやすい「プロットや構成」についてお話しようかと思ったのですが、それを本格的に解説しようとすると、かなり長くなりそうなので、それは後回しにし、まずはみなさんも苦労している(はずの)キャラクターのつくり方を最初のトピックとしました。
キャラクター、つまり登場人物。物語を語るということにおいて、それ以上に大事なものは存在しない。キャラクターのないところには、物語もない。受け手にとって大切なのは何が起きているかではなくて、それが誰に起きているかということだ。
――『「感情」から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方』より
みなさんもそう思いませんか。
ちなみにキャラクターや主人公をどのタイミングでつくるべきか、という点については諸説あります。
まず最初につくるという人もいれば、どのようなストーリーになるのかある程度固まってからつくるという人もいますので、みなさんのやりやすい方法を選択していただければと思います。
下に2冊の本からキャラクターをつくるタイミングについての記述を引用しています。これを読むと、人によってそのタイミングは異なるということがわかっていただけると思います。
私がストーリーを考える時は、大抵、人物から始めます。その人が心のドアをノックして、開くとそよ風、時に疾風が吹き込んで――この感じ、ご想像頂けると思います。その人に私は魅了され、その人のことをもっと知りたくなり、虜になってしまいます。恋に落ちるのと似ています。
――『ストラクチャーから書く小説再入門 個性は「型」にはめればより生きる』より
あまり認めたくはないが、私の場合、《主人公》が最初に思い浮かぶことはめったにない。たいていアイデアのほうが先だ。だからたまたま思いついたアイデアのなかに主人公になりそうな人物がすでに存在していたら……それはかなりラッキーである。《主人公》はあくまでも《どんな映画なの?》を補足する一要素であって、けっしてその逆ではないと私は思っている(たぶん異論のある人もいるだろうが)。だからいいアイデアが浮かんで、観客の心を引きつけるつかみもできてから、ストーリーにぴったりの《主人公》を考えていけばいいのだと思う。
――『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』より
さて、ようやく本題です。
真っ白な状態からキャラクターを生み出すにはどうしたらよいのでしょうか。
「キャラクターづくりに必要な〇つのこと」みたいなものがズバリと提示されていれば、とても便利ですよね。
実はあります。
フィルムアート社がこれまで出版してきた本の中にもしっかりと書かれてあります。ただ、「〇つ」の数は本によってまちまちです。
例えば、
・3つ … 『SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く』
・4つ … 『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術』
・7つ …『工学的ストーリー創作入門 売れる物語を書くために必要な6つの要素』
という感じです。
3つ説、4つ説、7つ説とそれぞれの本が違うことを書いているので混乱してしまいそうになりますが、これらの本をじっくりと読み比べてみると、フォーカスの当てかたや表現のしかたは各書それぞれ違いますが、創作における本質的な部分には共通するところが数多くあることが分かります。
そんな中、これからご紹介したいのは、『「感情」から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方』という本で紹介されているキャラクター造形法です。
この本には「キャラクターについて知っておくべきこと」は全部で5つある、と書かれています。
この連載をスタートするにあたって、自社の本をすべて読み比べてみましたが、キャラクター造形については、この本の説明がもっともコンパクトでわかりやすい(かつ誰でもすぐに実践可能な)内容になっていると感じましたので、ここでは本書の方法論を紹介することにします。
ここからはしばらく『「感情」から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方』を参考にし、キャラクターづくりについて解説していきたいと思います(本書の第4章「キャラクター:共感を掴む」は本当に役立つ情報が満載なのでぜひご一読ください)。
さて、キャラクターをつくるにはどうすればいいのでしょうか…?
以下の5つの問いに答えるだけでOK。Q&A形式で穴埋めしていけばよいのですから、とても助かります。
では、肝心の5つの質問とは?
【キャラクター造型に必要な5つの質問】
質問①:この物語の主役は誰か(タイプ、特徴、価値観、欠点)
質問②:何を求めているのか(欲求と目標)
質問③:なぜ求めているのか(動機と必要性)
質問④:失敗したらどうなるか(代償の大きさ)
質問⑤:どのように変わるのか(内面的変化の軌跡)
では、①~⑤をそれぞれ説明していきましょう。
◆質問①:この物語の主役は誰か(タイプ、特徴、価値観、欠点)
▼主人公は誰か
最初のステップは、主役はいったい誰なのかを決めることです。カクヨムで投稿されている小説の多くは、一人称モノが多く、主人公が誰なのかという点で迷っている人は少ないかと思いますが、もしこの時点で主役が決まっていないようであれば、その物語の中で一番大変な目に遭う人が誰なのかを考えてみましょう。一番苦しむ人、一番感情的な人、物語を通して一番変化がある人、それが主人公です。
▼キャラクターの
主人公が決まったら、そのキャラクターの「
《主人公の4つの
1:「英雄」
2:「普通の人」
3:「負け犬」
4:「罪深き者」
こちらもそれぞれを解説しておきます。
1:「英雄」型の主人公
読者に対して優位に立ち、読者に尊敬の念を抱かせる。完璧な人間ではないかもしれないが、自分の能力に自信があり、迷わず行動を起こす。相反する感情に悩んだり、自分を疑ったりもしない。読者は英雄型のキャラクターを見て「私と同じだ」と思うのではなく、あんな風になりたいと憧れる。実はあなたも、こんな風になれるかもしれないというファンタジーを、読者に抱かせることができる。
2:「普通の人」型の主人公
読者と対等の関係を持つ。読者はこの型の主役に自分を映し見るので、共感が発生する。主役の欲求に共感し、主役が必要としているものも理解できる。普通の人型のキャラクターは、自分に対する疑念や、限界、行く手を阻む障害を乗り越えようと苦闘する。主人公を普通の人にするときは、必ずどこかユニークで、複雑さを伴った人格にすることが必要。
3:「負け犬」型の主人公
読者に対して下位に立つ。ヒーローらしからぬヒーローであり、運が悪い。敵対する勢力に対して勝ち目がなく、どうしていいかわからない。だから、読者はそのような主人公を守ってあげなければと思う。物語が展開するにつれ、助け舟を出したり、慰めてやりたいと思う。負け犬型の主人公は、読者に次の「3つの感情」を巻き起こすので、心を掴みやすい。
(1)同情…自己肯定感が低く、身体的、社会的、精神的に恵まれない等、成功に必要な資質に乏しいので、同情を買いやすい。
(2)賞賛…困難や障害にめげずに勝利を手にし、自分の人生を切り拓こうとする姿が、称賛を呼ぶ。
(3)緊迫感…挑戦はしたものの成功する保証はない。失敗する確率の方が高い。大丈夫なのか? どうするつもりだ? と思ってもらいやすい。
4:「罪深き者」型の主人公
アンチ・ヒーローという呼び名でも知られており、読者とは正反対のタイプ。行ってはいけない方向に曲がり、行ってはいけない道を選ぶキャラクター。道徳的に問題があり、人間性の暗い側面を代表するような人物。誰でも暗い部分を垣間見たいと思っているので、このようなキャラクターは魅力的に映る。悪いことでも平気でやり、読者は道徳に反発する勇気に憧れる。だからこそ、俳優たちはこのような欠点のあるキャラクター、特に悪役を演じる喜びを、恥ずかしそうに認めるのだろう。この型のキャラクターは、簡単に好きになれるような相手ではないので、読者が理解できるような人にした方が良い。あるいは、何か尊敬に値する特徴を与えると良い。例えば、知性的のような。
▼キャラクターの特徴
主人公の
読者は平面的な人に感情移入することはできません。人の心は感情的、心理的、知的な層があり、とても立体的なものです。したがって特徴が1つだけということがないようにしましょう。善、または悪だけというキャラクターでは現実味がなく面白くありません。陰、陽、中間を取り混ぜた特徴について考えてみましょう。
▼キャラクターの価値観
登場するキャラクターの全員が同じような話し方をしている、また同じような行動をしている小説に出会ったことはありませんか。そういう小説には、キャラクターに個性を与える必要があります。そのキャラクターなりの物の見方、信条、態度、そして価値観を与える必要があります。そしてその価値観を各キャラクターの言動を通して見せることが大事です。
▼キャラクターの欠点
完璧な人間は存在しません。そして完璧なキャラクターには感情移入しにくいものです。そこで欠点が必要になります。読者は、欠点のあるキャラクターを見て、一体どうやって問題に打ち勝つのだろうと心配します。欠点を乗り越えようと格闘する姿から、感情的に突き動かされるような瞬間が生まれます。
なお、キャラクターの価値観や欠点がなかなか思い浮かばないという方はぜひ「類語辞典シリーズ」の『性格類語辞典ポジティブ編/ネガティブ編』を使ってみてください。キャラクター設定に必要な項目が辞典形式で掲載されており、とても便利です。
『性格類語辞典ポジティブ編』について詳しく解説した回がありますので、ぜひこちらを参照してみてください。
https://kakuyomu.jp/works/1177354055193794270/episodes/16816927862219140973
さて、ここまででようやく5つの質問のうちの1つめ「質問①:この物語の主役は誰か(タイプ、特徴、価値観、欠点)」について解説が終わりました。
ここで残りの質問②~⑤を解説すると、かなりの分量になるので、続きは次回にしたいと思います。
質問①を穴埋めするだけでも結構大変な作業になるかもしれません。しかし魅力的なキャラクターをつくるためには必須の作業となりますので、ぜひチャレンジしてみてください。
あらためて整理すると…、
【キャラクター造型に必要な5つの質問】
質問①:この物語の主役は誰か
→主役が決まったら以下の4項目について考える
・タイプ(4種類:「英雄」「普通の人」「負け犬」「罪深き者」)
・特徴
・価値観
・欠点
質問②:何を求めているのか(欲求と目標)
質問③:なぜ求めているのか(動機と必要性)
質問④:失敗したらどうなるか(代償の大きさ)
質問⑤:どのように変わるのか(内面的変化の軌跡)
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