『性格類語辞典 ポジティブ編』の3つの要点

 この「要点編」では、これまでトピックごとに部分的に引用・紹介してきたフィルムアート社の創作系書籍を一冊ずつ、押さえておきたい「3つの要点」にフォーカスして改めて紹介していきます。


 今回紹介するのはこちら。

書名:性格類語辞典 ポジティブ編


著者:アンジェラ・アッカーマン+ベッカ・パグリッシ

発売日:2016年06月24日|A5判・並製|272頁|ISBN 978-4-8459-1601-6|本体:1,300円+税

本書を読み解くキーワード:キャラクター、質問リスト、欲求

初心者 ★★☆☆☆ 上級者




 物語創作者のための類語辞典として誕生した「類語辞典シリーズ」は、その画期性と利便性が多くの読者に支持され、これまでに累計20万部を超える大ベストセラーシリーズとなっています。

【類語辞典シリーズ】

『感情類語辞典[増補改訂版]』

『性格類語辞典 ポジティブ編』

『性格類語辞典 ネガティブ編』

『場面設定類語辞典』

『トラウマ類語辞典』

『職業設定類語辞典』


 本シリーズは、類語「辞典」というタイトルからも分かるように、小説の書き方を指南する「読み物形式」の本ではありません。つまり基本的には「読む」ことより「使う」ことを主たる目的として作られています。本シリーズがこれほど多くの物語創作者に支持されている理由は、とにかく「使える」ということです。語彙力や表現力に乏しい人が小説を書こうとした場合、どうしても定型的な表現クリシェに陥ってしまいがちです。この類語辞典シリーズを使えば、表現の幅を大きく広げられるだけでなく、これまで自分では思いもつかなかった新しいアイデアや可能性を発見することができます。また本シリーズの「使える」要素をさらに充実させているのが巻末の「付録」です(『感情類語辞典』のみ付録なし)。読者のみなさんから「付録だけでも買う価値がある」と大変好評なこの付録の一部を特設ページ(http://www.filmart.co.jp/ruigojiten/)で無料公開していますので、ぜひご確認ください。

 本シリーズは「辞典パート」の前に、必ず「読み物パート」が収録されています。この読み物パートの内容も非常に充実しており、辞典を使う前段階で身に付けておきたい基礎的な知識や考え方が非常にわかりやすくまとめられています。

 今回は「使ってよし、読んでよし」の類語辞典シリーズの中から『性格類語辞典 ポジティブ編』を3つの要点でご紹介します。


■ポジティブな属性の4つのカテゴリー


 読者の心を掴んで離さない物語を書くためにはどうすればよいのでしょうか? その答えのひとつは「共感」です。読者とキャラクターの間にきずなが生まれるのは、読者が心からそのキャラクターに共感できる場合だけです。そのためには、読者が関心を寄せるだけの価値がある主人公を作りだし、両者のつながりをできるだけ早い段階で築くことが大切になります。

 では、共感を呼ぶことが読者とキャラクターを結ぶコツならば、早いうちにきずなを固定し、そのままブレないように保つにはどうしたらよいのだろう? 答えは簡単。ポジティブな面から見た主人公の性格を明らかにすることで、仕掛けをもう一押ししてやればいいのだ。

 たとえば、ある冷淡な犯罪者が残飯を求めてゴミ箱を漁っている、というのは独特な出だしだ。しかし、読み手は彼が犯罪者だとわかっているので、自らが招いた不幸だと思うかもしれない。共感することもできないため、彼の境遇にたいした注意も払わない。

 だが、彼がもしも、子どもの密輸組織から救いだした3人の孤児を養おうとしているとしたらどうだろう? 性格のポジティブな面を(優しさであれ、責任感であれ、弱い者を守ろうとする思いであれ)ただちにほのめかすことで、彼が一気に興味深い人物となり、読者は信頼に値する主人公の姿を垣間見ることができる。さらに、この新たな情報によって次のような疑問が湧いてくるため、キャラクターがますます興味をそそる人物となる。犯罪者であるならば、なぜ彼は子どもたちを救ったのか? どうして子どもたちのことを気にかけるのだろう? 何が彼に他人を助けようと思わせたのか?

――『性格類語辞典 ポジティブ編』

 ひとくちに「ポジティブな属性」といっても、どのようなものがあるのかなかなか思いつかないのではないでしょうか。本書は、ポジティブな属性を4つのカテゴリーに分類して紹介してくれています。本書で紹介されている4つのカテゴリーとそれに属するポジティブな属性は下記のとおりです。


《道徳的属性》

是非の信念に直結している特徴である。優しい、太っ腹、気高い、健全、公明正大などがこれに当てはまる。その人の信念と結びついている属性は、道徳観と一致するほかの属性を形成する際にも影響を及ぼすことが多い。たとえば、ある女性キャラクターの道徳的属性が「健全」だったとしよう。すると、「誘惑的」のような属性が顔を出すことは考えにくい。なぜなら、異性といちゃつくという行為は、純粋かつ気高くあろうとする彼女の欲求に反するからだ。しかし、礼儀正しい、規律正しい、慎重といった、矛盾のない属性が現れることはあり得る。


《到達的属性》

道徳観と一致するものだが、こちらの主な役割は目標達成を後押しすることだ。あるキャラクターにとって、人生における目標の決め手となるのが責任感という道徳観だとすると、几帳面、臨機応変、きちんとしているといった到達的属性が、目標の追求を支えてくれる。


《相互作用的属性》

環境や周囲の人たちとのかかわりを通して現れる。忍耐強い、礼儀正しい、誘惑的、正義感が強いなどという属性は、自分が他人や周囲の環境とどのように付き合うかを決定づけるものだ。このような属性は、しばしば個人の嗜好に影響される。たとえば、衝突や確執を避けたいキャラクターであれば、それをかわすべく気さくな属性を身につけるかもしれない。あるいはユーモアを楽しむ人であれば、事態が深刻になってしまったときにジョークを言うかもしれないし、わざと大げさにふるまって、みんなの悩みを吹き飛ばそうとするかもしれない。キャラクターというのは、ほとんどが社会的な生き物である。だからこそ、このカテゴリーに属する属性はもっとも多い。


《主体的属性》

個人のアイデンティティーを大きく発展させ、なんらかの自己表現をもたらす。クリエイティブ、奇抜といった属性は、それによってキャラクターが自分というものを表現することができる良い一例だ。また、主体的属性は、その人となりを定義し、人生のあらゆる面に影響を与える性格の根本をなすこともある。こうした理由から、スピリチュアル、愛国心が強い、内向的といった属性は、このカテゴリーに含まれる。


 バランスのよいキャラクターを創造するということは、道徳的、到達的、相互作用的、主体的属性を集めるということを意味します。本書では「キャラクター属性のための同心円チャート」というツールを紹介しています。



 そのキャラクターが持つ道徳観に沿った道徳的属性、目標達成を助ける到達的属性、周りの人たちと健全な関係を築くことができる相互作用的属性、自身のアイデンティティーをはっきりさせる主体的属性といったポジティブな属性を選ぶことで、バランスのよいキャラクターに仕上げることができる。こうした性質は、欲求を満たしたり、あるいは核となる信念と適合したりしながら互いを補い合う。性格がさらに補強され、いったいどういう人物なのかがますますはっきりしてくる。

――『性格類語辞典 ポジティブ編』

 ポジティブな属性を4つのカテゴリーに分け、さらにそれらの重なりを「同心円チャート」に落とし込むことで、バランスのとれた(矛盾のない)キャラクターを生み出すことができるのです。


■キャラクターの性格を行動や態度で示す(言わずに、示せ)


 キャラクターの性格を表現する際にぜひ覚えておいていただきたい言葉があります。それは「言わずに、示せ」です。ハリウッドの脚本の世界でよく使われている言葉で、本によっては「語るな、見せろ」と表現する場合もあります。つまり、主人公が「正義感が強い」人物であることを読者に伝えたい場合、主人公に「わたしは正義感が強い」などとセリフで語らせるのではなく、主人公の「行動や態度」で表現するべきだということです。キャラクターの性格を明かすには、セリフで表現するのではなく「行動や態度」で示すのがよい、とされています。

 本書には、ポジティブな性格を表現したい場合に、その人物がどのような「行動や態度」をとるべきなのか、そのサンプルが数多く示されています。つまり、キャラクターのポジティブな面を表現するための行動や態度について具体的な事例を紹介しているのが、この『性格類語辞典 ポジティブ編』なのです。

 また、「行動や態度」以外の項目も充実しています。収録項目を列挙すると下記のとおりです。


・4つの属性(道徳的、到達的、相互作用的、主体的)のどれに該当するか

・似ている属性

・要因

・行動や態度

・セリフ

・感情類語

・ポジティブな面

・ネガティブな面

・衝突するキャラクターの属性

・試されるシナリオ

・作品例


 実際のページ(例「正義感が強い」)をご紹介します。

 もし主人公を「責任感の強い」人物として描きたい場合、本書を開き「行動や態度」の項目を確認してみてください。そこには、サンプルとして「自分の選択によって誰かを失望させた場合、良心の呵責、後悔、罪の意識を感じる」と書かれています。つまり作中にこのようなシーンを挿入することで、主人公の責任感の強さをセリフではなく、行動や態度で表現することができるのです。

 本書には「セリフ」という項目もあります。そこを見てみると「どうやって片付けたらいいのかわからないけど、なんとかやってみよう」とあります。確かにセリフで語ってはいますが、直接的に「わたしは正義感が強い人間だ」と言わせるのではなく、読者に間接的に伝わるような表現になっています。

 また「要因」という項目では、なぜその人物が「責任感の強い」人間になったのか、の原因が列挙されています。「要因」は、キャラクターのバックストーリーにも絡めることができ(例えば「過去に、自分で自分の面倒を見なければ生き延びられない状況に直面した」から)、奥行きのあるキャラクターを描きたい場合に重宝します。

 そして見逃せないのが「衝突するキャラクターの属性」という項目です。あらゆる物語には「対立・葛藤」が不可欠です。主人公が誰か(何か)と対立し、それを乗り越えることで主人公は成長します。そして読者はその主人公の葛藤に共感し、物語にのめり込んでいくのです。本書では、責任感の強いキャラクターと衝突する属性として、「自己中心的」などが挙げられています。キャラクターの面白いところは、実際の人々と同じように、あるひとつの状況にみんなを放り込んでみても、全員が異なる反応を示すという点です。例えば、主人公のライバルの性格を自己中心的にする、あるいは味方(脇役)に自己中心的な人物を配置することで、主人公とその人物の反応の違いが際立ちます。

 キャラクターの性格をどのように描けばよいのかが分かるだけでなく、バックストーリーや周辺のキャラクター(ライバルや脇役)の性格の設計についてもヒントを与えてくれるのが本書です。

 頭に入れておいていただきたいのが、本書はブレインストーミングのためのガイドブックであるということだ。各項目には、その属性に関連する行動、感情、要因といった具体的な情報が記載されているが、キャラクターは個々に違う存在である。よって、自分が持つさまざまな属性の組み合わせや、状況の度合い、そのときの感情状態、一緒にいる人、その他いろんな要因に従って反応を示すことになる。そのため、本書の項目は、ある状況におけるキャラクターの反応を決定づける完全版リストというよりも、むしろ出発点として活用してもらいたい。

――『性格類語辞典 ポジティブ編』


■「使える」巻末付録


本書に収録されている巻末付録は下記の3つです。


① キャラクター創作のための質問集

② キャラクター属性のための同心円チャート

③ カテゴリー別ポジティブ属性リスト


いずれも特設ページ(http://www.filmart.co.jp/ruigojiten/)で無料公開中


 このうち②と③については、すでに触れました。

 本書の中心的なテーマは、キャラクターの「性格」をどう描くかなのですが、実際に物語をつくるためには、キャラクターの性格以外の要素についてもいろいろと考えなければなりません。その際のもっともポピュラーな方法の一つとして「キャラクターに関するあれこれを質問形式で穴埋めしていく」方法があります。「①キャラクター創作のための質問集」は、まさにそのための質問集となっています。まずは実際の質問をご覧ください。


【キャラクター創作のための質問集】


▼基本スペック

キャラクターの年齢、性別、民族性(国籍)は? 身体的特徴を説明してみよう(髪や目の色、体型、肌の色、身長と体重。メガネをかけている、傷がある、えくぼがあるなど)。服装は? 服装からどういう人物だとわかるだろう? 肌身離さず持ち歩いているものをひとつ挙げると? なくてはならないアイテムと、その理由は?


▼声

キャラクターは早口? それともゆっくり話す? 「ええと」「うーん」「あの…」といった、意味のない言葉を多用するだろうか? 短く途切れ途切れに話すか、それともとりとめなく話す? 声のトーンはどうだろう? さらに質や大きさは?高い調子で話すか、低い調子で話すか? 怒ったり、緊張したり、幸せだったりするとき、声から感情がどのように伝わってくるだろう? 受けてきた教育レベル、あるいは外での経験が話し方にどう影響しているだろうか? もし、そのキャラクターを含めたくさんの人がいる部屋に目隠しをされて入ったら、どういう特徴からその人物の声を聞き分けられるだろう? そのキャラクターの声を耳にしたとき、とくに引きつけられる点、あるいはいらだつ点があるだろうか?


▼教育と経済事情

このキャラクターは、どれくらいの教養の持ち主だろう? もともと知的、機転が利く、ウィットに富んでいる、勘が鋭い、といった人物なのだろうか? 学識があるのか、独学なのか、それとも特定の分野において幅広い経験があるのか?自分が持っている知識のおかげで、何か栄誉や高い評価を得たことは?

その教養レベルのために、生活は厳しいだろうか? それとも快適なライフスタイルを送っているのだろうか? 就いている職は複数? 個人的に満足のいく仕事をしているのか、それともただ目的のための手段として仕事をしているのだろうか?


▼特技と才能

キャラクターが日々の生活において頼りにしている特技は何だろう? パソコンの天才なのか、植物栽培に長けているのか、もしくは機械の仕組みがわかる能力をもともと備えているのだろうか? また、どんな特別な才能を持っているだろう? 誰にも知られていないユニークな才能をひとつ、それから、誰もが知っているこの人物の才能をひとつ挙げてみよう。こうした才能やスキルの中に、プライドや恥を抱く原因になっているものはあるだろうか? もしあるなら、いったい何なのか? またその理由は?


▼家族

キャラクターの家族構成はどうだろう? 独身か既婚か? 子どもはいるだろうか? あるいは、この人物が子どもか青年の場合、両親や兄弟姉妹はどのような人々だろう? 彼らとは近しい関係だろうか、それとも疎遠だろうか? このキャラクターが抱いている家族の価値観や信念は何だろう? 子どもの頃じかに経験し、自分が家族を持つときには絶対に繰り返すまいと心に決めた親の「失敗」は何か? より良い人間になることを後押ししてくれた親の教えとは?


▼関心

この人物の関心ごとや趣味は何だろう? また、周りの人々はこうした趣味を把握しているのだろうか、それとも人には隠しているのだろうか? もし、このキャラクターが誰にも知られずにできることがひとつだけあるとしたら、それは何か? こうした趣味などはみんなと楽しむのか、それともひとりで楽しむことを好むのか? またその理由は? キャラクターの「ストレス発散」方法は何だろう? 面白く感じている活動とは? クリエイティブな一面はどんなやり方で発揮しているだろうか? 手を出してみたいが、自分にはそんな資格がないと思っている関心ごとや趣味は?


▼人や地域社会

このキャラクターは、周りの人たちとどれくらい近しいだろう? 近所の人たちと知り合いで、家の前で言葉を交わしたり、一緒に食事をすることがあるのか、それとも名前すら知らない関係なのか? 奉仕活動はしている? もし、地域に影響が及ぶような火事、洪水、災害が起きた場合、留まってみんなを助けるだろうか、それとも逃げだすだろうか? また、何か助けを必要としている場合、誰かに頼むだろうか? もしそうなら、その相手は誰?


▼道徳観や倫理観

この人物は、白黒はっきりさせるタイプか、それとも両者が混ざった灰色で見るタイプか? 支持している理念はあるか? どんな事柄に対する思い入れが強いだろう? そうした信念が疑われるとき、どんな反応を示すだろうか? また、なぜこのような事柄が自分にとって重要なのか? この重要な事柄についての信念を抱くようになった、大きなきっかけとなる人物や出来事があるだろうか? 人に隠している信念、意見、理想は何だろう? またその理由は? 何があっても絶対に手放さないであろう道徳的信念とは?


▼アイデンティティー対ペルソナ

5つの言葉で説明するとしたら、このキャラクターはどんな言葉で言い表せるだろう? また、この人物の親友はどんな5つの言葉で説明するだろうか? さらに、同僚、知人、見知らぬ人の場合はどうだろう? キャラクター自身が見る自分の姿と、周りの人から見たこの人物の姿はどのように異なるだろうか? この人物を説明する言葉として挙げられた中で、本当に当てはまるものはどれで、そうでないものはどれだろう? 人々は、この人物の見た目や行動をもとに憶測を立てているのだろうか? またそれは、キャラクターの思惑通りなのだろうか、それとも自分では気づかないで、こうした印象を与えているのだろうか? 人から見た自分の姿を表した言葉の中で、キャラクター自身が驚いたものをひとつ挙げるならば? また、その言葉にキャラクター自身はがっかりしたのだろうか、それとも嬉しく思っただろうか?


▼人間関係

このキャラクターと一番近しい人物は誰で、その理由はなぜだろう? この人がもっと親しくなりたいと思っている相手は? 自分から動いて挨拶しに行くタイプだろうか、それとも相手からそうされるのを待つタイプだろうか? 人に信頼を寄せるようになるまでに時間がかかる? それとも人のことを判断するのがうまいので、すぐに打ち解ける? どういうタイプの人間に引かれるだろう? 現在の人間関係に満足しているのか、それとも何か足りないと感じている部分があるのか? 自分が傷つきやすい相手はどういう人物だろう? あるいは、自分が弱みを見せることのできる相手はいるだろうか? 避けている人はいる? またその理由は? どんな人物に嫌悪感を抱くだろう? もし、過去にかかわった人がもう一度目の前に現われるとしたら、誰を一番に希望するだろう? それはどうして? 反対に、一番現われてほしくない人は?


▼秘密

この人物の最大の秘密は何か? また、それをもっとも知られたくない相手とは? なぜこの秘密がそれほど重要なのだろう? その秘密について頻繁に考えるのか、それとも滅多に考えないのか? その秘密は、心の痛み、屈辱、喜び、あるいはその狭間にある何かの原因になっているものだろうか? 他人の秘密は口外しないタイプ? 知っていながらも胸に秘めている、周りの人の秘密は何だろう? 秘密を知られている人物はそのことを知っている? それとも最初に自らこのキャラクターに打ち明けた? 周りの人たちは、このキャラクターを信頼して個人的な考えを打ち明けるのか、それともこの人物は情報を漏らさずにはいられないタイプなのか? もし秘密が守れないのなら、どうして人に教えてしまうのだろう?


▼恐怖

この人物の性格からすると妙だったり意外だったりする、恐れていることは何だろう? 自分がきまり悪くなる恐怖なのか、それともまったく説明のつかない恐怖なのか? この恐怖は、キャラクター自身が克服しようとしているものだろうか? 過去の出来事に関連は? さらに深い恐怖(このキャラクターが人に明かしたくない類いのもの)について見ていこう。その中でもどれが一番この人物に影響を与えているだろう? この恐怖をどうやって人に隠しているのか? たとえば、自分にとって問題ないというふりをして偽っている? この恐怖を悟られないよう、周りの人との距離を保つために、どんなペルソナで本当の姿を覆っているのだろう?


▼背景や心の傷

このキャラクターが考えたくない、あるいは打ち明けたくないと思っている、先ほどの深い恐怖について考えていこう。過去のどんな出来事のせいで、この恐怖が生じることになったのだろうか? この出来事をきっかけに、人生はどのように新たな進路に突入していったのだろう? また結果として、このキャラクターが人生から切り捨てた人や事柄は何か? 失ったものや、諦めた喜びは? この恐怖によって、自分がどのように価値がなく欠点のある人間だと感じているのだろう? この心の傷は、キャラクターの現在の話にどのように組み込むことができるか? この人物を、再び同じような状況や心の傷と対峙させ、今度はそれを克服させるにはどうしたらよいだろう?


▼望み、欲求、欲望

物語の冒頭において、このキャラクターが表面上求めていることは何だろう。新たな仕事なのか、努力を認めてもらうことなのか、妻のためにサプライズパーティーを開くことなのか? この人物が思う、自分を幸せにしてくれる物事とは? 次に、もう少し掘り下げてみよう。このキャラクターの人生で不足しているものは何か? 満たされていない欲求は? 希望や夢、自分があえて望むまいと思っているもの、大きすぎたり難しすぎたりして追い求めていないものとは? もし、この人物が魔法の杖でひとつだけ望みを叶えられるとしたら、自分のために何を選ぶだろう? 何がこのキャラクターの自尊心を築き、自分を完全だと感じさせ、人生が投げかけてくる困難や試練に立ち向かわせているのか? この人物の、人生における目標とは?


▼欠点

キャラクターが抱く望みや欲求、そして一番の願いや欲望について考えてみよう。この目標を達成するのに害を及ぼす欠点は何だろう? 自分の不安を覆ってくれながらも、同時に目標の達成を難しくしている欠点は? 人間関係の邪魔をし、対立を引き起こす欠点は? 自分は変わる必要などない、あるいは変わることなど大変なだけだから変わらなくていいんだ、というキャラクターの信念を後押ししているのはどんな欠点だろう? 失敗や挫折に直面しているとき、もしくはストレスを感じたり動揺したりしているとき、浮かび上がってくる欠点とは?


▼美点

満たされた気持ちや自信、幸せをキャラクターにもたらしてくれる、一番根底にある欲求や目標について再び考えてみよう。達成を可能にしてくれるのは、どんな美点だろう? また、欠点に打ち勝つためには、どんな美点を形成していかなければならないのか? そして、弱点のように見える美点(望ましくないもの)ながら、実は目標を達成するためのカギとなるものはどれだろう?


▼ストレスやプレッシャー

試練に対し、このキャラクターはどのように取り組むだろう? 試練を利用しようとするのか、それとも避けようとするのか? もし切迫した状況にあるなら、それでも力を発揮できるだろうか、あるいは過ちを犯してまずい判断を下し、くじけてしまうだろうか? 緊張しているときは、人につっかかったり、怒りや不満をあらわにしたりするだろうか? ストレス下ではどうだろう。人に噛みつくのか、それとも深呼吸してやるべきことをこなすのか? このキャラクターの限界点は? どんな失敗に対して敏感なのだろう? この人物の感情的な反応を引き起こすには、どういった「期限つき」のシナリオが考えられるだろうか?


▼感情の幅

このキャラクターは、どれくらい表現豊かだろうか? 気持ちを示すために、大きな身ぶり手ぶりを利用するのか、それともボディランゲージや動作に微妙な変化が生じるのか? 感情を表に出す方だろうか、あるいは内に秘めておく方だろうか? 平然とした人物であれば、隠そうと頑張っている感情はどのようにして表に出てきてしまうだろうか? この人物を怒らせるものとは? 欲望をかきたてるものは? 幸せにするもの、不安にするものとは? また、嘘をつくときや動揺しているとき、本心が明らかになってしまうような、何か変わったふるまいをするだろうか?


▼まとめ

自分が描く主人公について奥深くまで詳しく知っておけば、キャラクター創作の成功につながる。いくつかの質問に対する答えをブレインストーミングしておくことで、キャラクターの扱いがますますうまくなり、人物が性格に応じた行動をとれるようになる。ここでわかったことをすべて物語に組み込む必要はないが、自分が把握しておけば、説得力のある現実的な手法でキャラクターを描くことに自信がつくだろう。


 この手の質問集(質問リスト)は、『〈穴埋め式〉アウトラインから書く小説執筆ワークブック』(K.M.ワイランド=著、フィルムアート社)にも「人物インタビュー」というリストが収録されていますし、ネット上にもたくさん転がっています。質問の量や種類によって数多くのバリエーションが存在していますが、本書収録の「キャラクター創作のための質問集」は、物語創作に必要なキャラクターの要素を過不足なく網羅しているだけでなく、質問の数も多すぎず少な過ぎず、初学者が取り組むにはうってつけのツールとなっています。自分の頭の中だけでキャラクターを作り上げていくのは大変な作業ですが、このようなツールを使うことで、これまで自分でも気づかなかったキャラクターの新たな一面を発見・創造できるはずです。


 今回は『性格類語辞典 ポジティブ編』をご紹介しました。ぜひ他の類語辞典シリーズとあわせてご活用ください。


【目次】


序文:ジーニー・キャンベル(セラピスト)

1. 究極の仕掛け:読者が応援したくなるようなキャラクターを生みだす

2. ポジティブ/ニュートラル/ネガティブな属性

3. 欲求と道徳観:キャラクターの属性に影響するもの

4. ポジティブな属性の4つのカテゴリー

5. ポジティブな属性はこうして形成される

6. キャラクターの心の成長:致命的欠点を克服する

7. ゼロからのキャラクター創作:ふさわしい属性を選ぼう

8. ポジティブな属性と悪役

9. キャラクターのポジティブな属性について知っておくべきこと

10. キャラクターの属性を表現する

11. ありがちな落とし穴:読者が距離を置くキャラクターとは

本書について


【ポジティブ項目】

適応力が高い/冒険好き/愛情深い/用心深い/野心的/分析力が高い/感謝の心がある/大胆/おだやか/慎重/芯が強い/魅力的/自信家/協調性が高い/勇敢/礼儀正しい/クリエイティブ/好奇心旺盛/決断力がある/如才ない/規律正しい/控えめ/のんびり屋/効率的/共感力が高い/熱血/外向的/派手/誘惑的/集中力が高い/フレンドリー/ひょうきん/おおらか/温和/幸せ/正直/気高い/もてなしの心がある/謙虚/理想家/想像力に富む/独立心が強い/勤勉/純真/影響力が強い/知的/内向的/正義感が強い/優しい/誠実/大人っぽい/情が深い/几帳面/自然志向/面倒見がいい/従順/客観的/注意深い/楽観的/きちんとしている/情熱的/忍耐強い/愛国心が強い/思慮深い/勘が鋭い/粘り強い/説得上手/哲学的/陽気/口が堅い/積極的/プロ意識が強い/上品/世話好き/奇抜/機転が利く/責任感が強い/分別がある/官能的/感傷的/素朴/社会意識が高い/洗練された/スピリチュアル/天真爛漫/活発/勉強家/協力的/天才的/倹約家/懐が深い/古風/お人好し/奔放/利他的/型破り/健全/賢い/ウィットに富む


■キャラクター創作のための質問集

■キャラクター属性のための同心円チャート

■カテゴリー別ポジティブ属性リスト


索引

『性格類語辞典 ネガティブ編』に掲載されているネガティブ属性リスト


【お知らせ】

物語やキャラクター創作に役立つ本

https://www.filmart.co.jp/pickup/25107/


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