わたしに小説を書かせろ!
naka-motoo
ありとあらゆる文章を書くわたしに本当に書きたいものを書かせるんだ!
文章書きだろうわたしは。
本業、というか収入の大半を稼ぐ会社勤めにおいてわたしは様々な場面で書く。
起案文書。
取引先への仕様書のメール。
社内勉強会のレジュメ。
交渉記録。
業務日誌。
会社を出れば。
ローカルなフリーペーパーのエッセイを書いたり、中学来の友達がやってるインディーバンドのライナーノーツを書いたり販促用のシナリオを書いたりしている。
家に帰れば家計簿兼日記を書き寝る前にはSNSにアップする文章を書いている。
一日の相当の時間を文字と文章を書き記すことに使用していながら、やっぱりわたしには書く時間が確保できていない。
小説を。
「おはよう、
「おはようございます」
「キミほど一日あたりに書く文字数が多い人は小説家でもいないだろうねえ」
「(あたり前だ!プロの小説家だって一日数万字しか書けないだろうに、わたしは一日で最低10万字は書いてるぞ!・・・小説じゃないけど・・・)はは」
「ところで奏音ちゃんは作文が上手だねえ」
「(舐めてるのか!『作文』だと?わたしの書く交渉記録や業務に関する文章は極めて客観的に事実を押さえた上で社内判断に必要な基礎資料として尊敬を受けるべきじゃないか)うふふ。部長ぉー。わたし小学生じゃないですよー」
「いやいや奏音ちゃん。深いSNSに侵食されてる小学生は深い文章書くよ」
事実として10代どころか一桁の年齢の人格が神として崇められてる。
じゃあわたしの出る幕はもうないんだろう。
読者に読ませる展開を構成する小説がいい小説だとしたら、五欲にストレートに訴えかける小説がいい小説なんだろう。
お腹が空いたら食べて眠たくなったら寝るのがいい小説なんだろう。
「なら俺の曲の解説、奏音の好きなように小説書いていいよ」
「えっ。だって、キミの音楽なのに」
「別に。だって聴いてくれる人が触れたいのは俺の曲じゃあなくて奏音の小説かもしれない。ラノベだってイラストがなかったら売れないのはみんな小説よりもイラストが好きなのかもしれない」
インディーだけど、世に出るわたしの処女作になった。
『ガトリング・コミッティー・ストライクス・アゲイン』
バスドラとスネアとベースがシンクロする音をガトリング砲に例えている、と全員思うだろうけど、わたしが書いたこのライナーノーツ代わりの小説は戊辰戦争で洋装の武装で
そういう小説のブックレットなんだよ。
「奏音。書きなよ。小説を」
「でも、仕事もあるし、時間が・・・」
「キミは小説家」
「えっ」
「小説家であり、会社の勤め人。奏音の本質は、小説家。小説家が、副業として会社で仕事をしてるんだ」
「わたしは・・・・・・・小説家」
「書きなよ。いいや。こう、叫べよ」
ふたりして同時に叫んだ。
「「わたしに/俺に、小説を書かせろ!/ギターを弾かせろ!」」
わたしに小説を書かせろ! naka-motoo @naka-motoo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます