第14話

 翌朝。

 俺は正午十二時を回った頃に目を覚ました。うむ、平常運転、平常運転。非常に快適な朝である。

 大欠伸をしつつ、ふと枕元を見ると、そこには置いた覚えのない茶封筒があった。

 裏返すと、くせが強く読みにくい字体で『高無君へ 先日のバイト代です Merry Christmas 虎谷』と書かれていた。

 中には諭吉さんが二人ほどいらっしゃった。

 俺は二つの読み方がある・・・・・・・・・名前を見詰めながら


「流石トラヤさん……」


 と呟くのであった。

 ここまで来て名前を間違うとは。俺の名字、『高無』じゃなくて『高梨』なんだよな。どうしてより一般的な方で書かなかったのだろうか。

 まったくもって、不思議な御仁である。


 来年の今頃、トラヤさんは普通のサンタになって、サンタ(悪)の弾丸に脅えるクリスマスを送ることになるだろう。そのことを唯一予測している俺は、なんだかいつになく愉快な気分になってきて、もう一度布団に潜り込んだ。

 多少怠惰な一日を送っても問題はあるまい。なんて言ったって今日はクリスマス。自分にとって最も幸せな一日を過ごすべき日だ。


「めりーくりすます、めりーくりすます。おやすみなさーい」


 俺の夢は叶ったぞ。クリスマスありがとう。





 ☆おしまい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

日雇サンタ 井ノ下功 @inosita-kou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ