第2話 一つ目の首

 ヤマタノオロチの首を加工し剣を打ち直す事になった武器大工のレナ、八つの各地に眠るヤマタの首を素材とし依頼人の懇願を叶えるべく進む。


「..って、何で着いて来てんのよ!」

「なんか楽しそうだろう?」

「..暇だし、あそこ...。」

なんで仕事しないのに外出てんのよ、どっちかっていうとインドアでしょ?


「ワタシ知識担当。」

「わたしは..和み...」

「和みって何よ和みって。

..まぁいいわ、どうせもう帰れないし文句ないわよね、剣士さん?」


「構わん、寧ろ心強い」

「…はぁ。」

カタブツなのかバカなのかわからないわね。..いや、バカか。


「全体が燃えているようだけど、これもヤマタの仕業な訳か?」

森が真紅に焼けている。元々は鬱蒼とした緑が広がっていた筈だけど、今じゃ見る影も無い。

「イチマタは〝炎上〟を司ると云われている。この森は既に、ヤツの寝床になったという事だろう。」

森を燃やしてベッドになんて贅沢だね

初めから火山口にでも寝泊まりすればいいのに。


「..熱い。

人が歩くには温度が高過ぎる..」


「歩けてるじゃん。」

「..だって当てずっぽうだもん..」

やはり寝床というだけあって何も無い基地でも家でも無いので罠も張らない待ち構える兵士もいない。


「さっさと首持って帰ろうよ、こんなトコずっといたらむせ返るわ」


「ああ、手間は取らせないつもりだ。

見つけ次第、狩って帰る」


「頼むわ」

鎧の戦士を盾に唯の大工と怠け者二人は燃え盛る森の奥へ奥へと進んでいく


「……。」

「何?」

「見ろ、ここだけ綺麗に緑が残ってるこの向こうにイチマタはいる。」

燃え滾る木々を壁のように連ね作られた一本の道に、一枚のカーテンのように樹木が掛けられている。

「丁寧に扉を取り付けたのかい、優しい事するねバケモノの癖に。」


「..ぶった斬れ兵士..」

「相分かった!」

鶴の一声でカーテンを両断、傷んだ剣でも斬れるところを見ると脆いというよりは〝斬らせる扉〟を敢えて拵えたように見える。


「疑いも無く斬るか、フツー..。」


首いらない、終わり!

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