砂の手触りこそが数万年の記憶を理解した作品

人生では必要なものに必要な時出会うとよく言われるけれど、この砂に触れた彼がまさにそうだったんだろう。表現されたもののなかにも思いを馳せる余白がおおきいが、彼の心を捉えたのが砂というのはいろんな意味で象徴的にも感じられる。
大古の海底が作った砂岩が、さらに崩れてできた赤い砂。主人公は知らずその降り積もった時間のなかにいる自分の命に気付いたのか。
その砂を実際知っている人はもちろん、知らなくても心に力を感じられるようになるひとは多いのではないだろうか。肌で触れた砂に 言葉では表現しきれないこの世界の不思議を感じた瞬間の感動が宿っている気がした。