入院生活

 こうして俺の入院生活が始まった。ご飯は美味しいわけでもなければ美味しくもない微妙な味だ。大体は寝て過ごしている。

 そんな生活でも楽しみなことがある。毎日あの看護師さんが会いに来て話に来てくれたり散歩へ連れて行ってくれることだ。

「実は昨日ペットを飼い始めたんですよ!」「これ見てください!私が作ったんですよ!」

 毎日毎日こんな風に話に来てくれる。こんな他愛もない話だが彼女と話しているととても楽しい。

 入院してから1ヶ月が経ち彼女についても色々知ることが出来た。彼女の名は陽(はる)さんと言うらしい。動物や花が好きでよく自分のペットの話や花壇に連れて行ってくれる。

 日に日に話していくうちに彼女との仲も深くなっていった。

「なにか思い出したことなどありますか?」

 ある日彼女はそんなことを聞いてきた。

「うーん...まだ何も...」

 そういうと彼女はしょんぼりした顔をした。

 だが何もなかったでは無い。たまに彼女を見ていると彼女に似た若い少女が頭をよぎることがある。それが記憶喪失する前の記憶に関係があるかは分からないので言わないことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

記憶の片隅 @Tunimitu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る